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梨状筋症候群の基礎知識

みなさんこんにちは!
Instagramとnoteで腰痛に関する情報を発信している理学療法士の「まさ」です。
この記事を最後まで読むことで梨状筋症候群について理解し、説明できるようになります!
それでは「梨状筋症候群の基礎」について一緒に学んでいきましょう!

はじめに

梨状筋症候群(Piriformis Syndrome)は、臀部の深部に位置する梨状筋が坐骨神経を圧迫することで生じる症候群です。この疾患は、臀部痛や坐骨神経痛を伴い、日常生活や運動機能に大きな影響を及ぼします。特に新人理学療法士にとっては、診断が難しいケースや他の腰部疾患との鑑別が課題となります。

臨床メモ~坐骨神経痛の乱用~

梨状筋症候群は坐骨神経痛の原因として良く知られています。この坐骨神経痛は、臀部痛や痺れがあると簡単に坐骨神経痛だねと判断されることもあります。それを信じて治療するのもいいですが、一度評価し直すことをお勧めします!


本記事では、最新の研究を基に、梨状筋症候群の解剖学、症状、原因、診断方法、治療法を詳細に解説し、臨床で即活用できる知識を提供します。


梨状筋の解剖学

梨状筋は仙骨の前面から起始し、大腿骨の大転子に停止する外旋筋群の一部です。この筋肉は、以下のような役割を持ちます:

  • 股関節外旋: 股関節伸展位での外旋。

  • 股関節外転: 股関節屈曲時の外転(90度以上)。

  • 股関節内旋: 屈曲位で内旋筋としても機能する(Michel et al., 2013)。


臨床メモ~梨状筋の作用から病態予測~

注目すべきは、股関節外旋が解剖学的には股関節伸展時の外旋であるということです。これを聞いて何か思いませんでしたか?
それは、歩行時の立脚後期での股関節伸展制限患者に多く見られる股関節の外旋です。
つまり、梨状筋が過度に活動してしまう原因の1つは立脚後期にあるので注目してみてください!


梨状筋と坐骨神経の位置関係

  • 正常解剖: 坐骨神経は梨状筋の下部を通過。

  • 異常解剖: 梨状筋が坐骨神経を貫通または神経が筋の上を通過するなどの変異が確認されており、これが症候群のリスク要因となります   (Natsis et al., 2014; Olewnik et al., 2024)。



梨状筋症候群の症状

主な症状

  1. 臀部痛: 主に梨状筋の部位に鋭いまたは鈍い痛みを感じる。

  2. 坐骨神経痛: 痛みが下肢に放散し、脚の裏側や外側にしびれを伴うことがある(Hopayian & Danielyan, 2018)。

  3. 姿勢依存性の痛み: 長時間の座位、股関節の内旋、屈曲で悪化する。

  4. 歩行困難: 痛みを避けるため、代償的な歩容(歩幅の短縮、股関節の過剰な内旋)が見られる(Ismail et al., 2020)。


非典型的な症状

  • 太ももの前面や膝周辺にまで拡がる痛み。

  • 長時間立位での軽度のしびれや疲労感。



梨状筋症候群の原因

1. 筋の過剰な収縮

梨状筋の過剰な緊張やスパズムが、坐骨神経を圧迫することで症状が発生します。特に運動選手や長時間座位を維持する人に多い(Michel et al., 2013)。

2. 解剖学的異常

  • 坐骨神経が梨状筋を貫通するケースは解剖学的に約10%に見られ、この変異が発症のリスクを高めます(Natsis et al., 2014)。

3. 外傷や炎症

臀部への外傷や筋膜の炎症が梨状筋の硬化を引き起こし、神経を圧迫する場合があります(Beauchesne & Schutzer, 1997)。

4. 筋膜の緊張

筋膜の歪みや緊張が坐骨神経の圧迫を助長し、痛みの増悪因子となります(Sayson et al., 1994)。



診断方法

1. 病歴の聴取

  • 座位での痛みの悪化や特定の動作での増悪を確認。

  • 過去の外傷歴や運動習慣を詳細に問診。

2. 身体検査

  • Freibergテスト: 股関節の内旋と屈曲を行い、痛みが再現されるかを確認。

  • Paceサイン: 股関節の外転筋力を評価し、痛みが生じるかを確認。

3. 画像診断

  • MRI: 梨状筋の肥厚や坐骨神経の圧迫を視覚化。

  • 超音波: 非侵襲的に筋肉や神経の状態を評価可能(Rossi et al., 2001)。

4. 電気生理学検査

  • H反射の遅延や坐骨神経の圧迫を電気的に確認(Fishman & Zybert, 1992)。

5.歩行分析

  • 立脚後期の股関節伸展不足による代償動作としての、股関節外旋により過度に梨状筋が活動してしまう。


治療法

保存療法

  1. ストレッチ

    • 梨状筋をターゲットにしたストレッチ。特に、股関節屈曲位での外旋と内旋ストレッチが効果的です。

    • 例: 仰向けで膝を胸に引き寄せ、反対側に倒すストレッチ。

  2. 筋力強化

    • 外旋筋、外転筋、体幹筋(特に腹横筋、多裂筋)の強化。

    • 例: ドローイン、ヒップアブダクション。

  3. 筋膜リリース

    • テニスボールなどを使った梨状筋部位のセルフマッサージ(Sayson et al., 1994)。

  4. 理学療法

    • 運動療法に加え、超音波療法や電気刺激療法を併用することで炎症軽減を図る。


侵襲的治療

  1. ボツリヌス毒素注射
    梨状筋の緊張を抑制し、坐骨神経の圧迫を緩和(Choi et al., 2020)。

  2. 手術
    保存療法で効果が見られない場合、梨状筋の部分切除や筋膜リリースが行われます(Benzon et al., 2003)。



再発予防とセルフケア

  1. 姿勢の改善
    長時間座る場合は、股関節を適切な位置に保つためのクッションやサポートを活用。

  2. 運動の習慣化
    適切なストレッチと筋力トレーニングを日常に取り入れる。

  3. 荷重管理
    荷重動作や急激な股関節動作を避ける。

  4. 早期介入
    痛みが発生した場合、すぐに理学療法士に相談することが重要です。



まとめ

梨状筋症候群は、多くの原因が絡み合う複雑な疾患です。その診断と治療には解剖学的な知識、的確な身体検査、患者ごとの個別化されたアプローチが必要です。理学療法士は、以下のポイントを重視すると良いでしょう:

  • 解剖学と病態の深い理解。

  • 保存療法の徹底と再発予防の指導。

  • 必要に応じて他職種との連携。

臨床での経験を積む中で、適切な治療法を選択し、患者のQOL向上を目指しましょう。


参考文献

  • Michel et al., 2013. Piriformis muscle syndrome: A clinical review.

  • Olewnik et al., 2024. Morphological variations of the piriformis muscle and clinical implications.

  • Fishman & Zybert, 1992. Electrophysiological evidence in piriformis syndrome.

  • Ismail et al., 2020. Gait analysis in patients with piriformis syndrome.

  • Beauchesne & Schutzer, 1997. Myositis ossificans of the piriformis muscle.

  • Rossi et al., 2001. MRI findings in piriformis syndrome.

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