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【訪問看護の人材育成】管理者(職)を育てるときに押さえておくべき4つのポイント

訪問看護業界は急速に拡大しており、各ステーションの運営において管理者(職)の育成がますます重要な課題となっています。

管理者は、組織を支える柱であり、そのスキルと判断力が事業の成長に直結します。

しかし、優秀な管理者を育てることは容易ではありません。訪問看護においては、採用と並ぶ永遠のキーワードといって良いでしょう。

特に訪問看護業界では、経営者自身が管理者としての経験が浅いケースも多く、育成に試行錯誤が伴うことが多々あります。

本記事では、訪問看護における管理者育成のポイントを、訪問看護の経営者(えん訪問看護ステーショングループ)である私の経験を踏まえつつ解説していきます。

これから訪問看護ステーションの経営やマネジメントに携わる方々、または現在管理者として活躍されている方々は、ぜひ参考にしてみてください。

(*本記事は管理者で統一表記していますが、管理職に属する人(所長・主任・リーダーなど)も含んだ内容となっております。)


管理者(職)を育てるときに押さえておくべき4つのポイント

では早速、管理者を育てるときに押さえておくべきポイントをご紹介します。

私が思う、管理者を育てる時のポイントは以下の4つです。

  • 素人が素人に教えることの難しさを理解する

  • コピーを作るのではなく判断基準と個別性を重視する

  • 一個人に頼るのではなく再現性を保つ

  • 利害関係の薄い第三者の存在を確立する


素人が素人に教えることの難しさを理解する

訪問看護業界では、管理者経験がないまま経営者デビューするケースが多々みられます。

そのため、何か事象が起こった際、管理者がどの範囲まで判断すべきか、経営者としての判断するべきか判断が付かず、その線引きが曖昧になることがあります。

管理者においては、「代表なんだから管理者の判断もできるだろう」という感覚で関わるケースも多いため、マトモな答えが返ってこない状況にモヤモヤし始めます。

この状況が続くと、事業運営が不安定になりやすく、スタッフや他の管理者との意思疎通に齟齬が生じることが多くなります。

まずは、素人が素人に教えることの難しさを理解しましょう。

お互いがやってくれるだろうでは、いづれ空中分解が起きます。


確かに、このようなことを考えなくても成長している(ように見える)会社はあります。

ただ、それは採用した管理者がたまたまセンスが良く、内省化ができるタイプだっただけで、たまたま引き当てたという、いわばくじ引きのような構図です。

その管理者の能力に頼り切っている状況のため、管理者が辞めてしまったらまたゼロからスタートです。

そのため、個人に依存した育成方法では安定した運営は望めないといえます。


【対応策の例】

  • 判断範囲を明確化する: 管理者と経営者の役割分担を明確にし、文書化する。

  • フィードバックを定期化する: 定期的なフィードバックで判断力を向上させる機会を提供する。

  • OJTを導入する: 実践的なトレーニングで管理者の成長を促す。


コピーを作るのではなく判断基準と個別性を重視する

私は経営者であり、私の信念に沿った会社運営をしておりますが、ただ私自身のコピーはいらないと思っています。

同じ信念やビジョンを共有することは重要ですが、スタッフが私と同じになってはまったく面白くありません。

管理者育成で重要なのは、判断基準と個別性(その人らしさ)です。

たとえば弊社でいうと、業務における8割の判断は業務文書やルールに基づいて作成しており、スタッフ誰が見てもわかる不変的な内容にしていますが、残りの2割は管理者の采配で変更できる余白を作っています。

いわば裁量権を持つということであり、管理者の醍醐味の一つかと思っております。

現場の雰囲気を一番感じ取っているのは管理者のため、その裁量権を活かし、そこに独自性を加味してスタッフと関わってもらうようにしています。

このように聞くと「楽しそう!」と感じてくれる人もいるかと思いますが、もちろん大変なことでもあります。

なぜなら「意思決定」を伴うからです。

すべてマニュアル化した中で決められたことをやるのではなく、どうすれば事業所が良くなるんだろう?と、思考を働かせて意思決定をする必要があります。

この意思決定が苦手な管理者もいますが、これも訓練だと思って特別扱いはしていません。

もちろん、『甘さ』だけで判断した場合は、理由次第ではありますが基本的には注意します。

なぜなら、再現性に欠けたり好き嫌いが入りやすいからです。

ただし、しっかりと説明ができて納得感がある、また再現性が高い「一時的な甘い判断」であれば、管理者の人間性や良さが出る場合が多いので承認することもあります。

確かに難しい部分ではありますが、この線引きがその会社らしさ、事業所らしさにつながってくる部分とも思っております。


【対応策の例】

  • 裁量権を与える: 管理者に業務の2割程度は自由裁量で判断させる。

  • 失敗から学ぶ環境を作る: 失敗を恐れずに判断できる風土を作り、成長を促す。

  • フィードバックの機会を増やす: 判断プロセスの定期的なレビューで改善をサポートする。


一個人に頼るのではなく再現性を保つ

先ほども「管理者に頼り切った運営」というワードを出しましたが、管理者の育成においては再現性を保つことが重要です。

管理者が辞めたり異動をした途端、「質が落ちた」「空中分解して崩壊した」は良く聞く話です。

この点、一個人のスーパープレイヤーの管理者に頼る運営をしていれば、遅かれ早かれいずれ起こる問題だと思っています。

管理者は与えられる仕事を全うする人が多数であり、自分の離れた後(辞めた後)の経営や運営を本当の意味で考えている人は少数派です。

「今は売上が上がっているから…利益が出ているから…」と、現実に蓋をしている経営者も見ますが、必ず足元を取られることは理解した方が良いでしょう。

ちなみにですが、これは私も実体験済みの話です(笑)
創業から頑張っていた管理者が辞め、後任も立たない状況が続いていたステーションのマネジメントを突然任されました。30人ほどスタッフがおり、かなり右往左往しましたが、私が初めて経営とマネジメントに向き合う時期であったのは間違いなく、今では感謝するべき時期だと振り返っています。


管理者の再現性で大事なのは、 「役職の難易度を高くし過ぎない」 「ある程度仕組みがある」 「社内で次の候補者を選定しておく」ことだと思っています。

確かに、役職が人を育てるという話があるように、任せてみないと成長が分からないことはたくさんあります。

管理者が出来そうで昇進させたけどダメだったというパターンもあれば、厳しいかなと思って昇進させたら華開いたりするパターンもあります

どのような状況であれ、管理者の育成で大事なことを抑えておくこと、また新任がポジションについても頑張れば回せるレベルにしておくことが大事です。

「信頼」の置ける管理者への成長は少なくとも年単位です。

これに中・長期間、人材投資出来るだけの企業としての在り方が大事だと考えています。


【対応策の例】

  • 複数候補者を育成する: 同時に複数の管理者候補を育て、リーダーシップの再現性を高める。

  • 段階的な責任を与える: 小さな責任から徐々に役職を与え、管理者の成長を促す。

  • 評価基準を明確にする: 管理者育成のために客観的な評価基準を設定する。


利害関係の薄い第三者の存在を確立する

管理者と経営者との間だけでマネジメントを行うことは、場合によってはお互いに負担が大きくなります。

少し悪い言い方をすると、お互い疲れる部分もあるかなと(笑)

感覚値が全く同じであれば良いかもしれませんが、過去の経験や価値観の違う人たちが集まって会社組織を形成しています。

もちろん、管理者一人一人、スタッフ一人一人に対しては、面接や面談を通して信頼出来ると判断をしているので、そこは疑う余地はありません。

しかし、私と管理者の関係で信頼関係のパイプが薄くなってきた時(私の判断が利己的になる、管理者との思いにズレが生じるなど)に、一方向だけで繋がってるとやはり縁が切れやすい(退職)と感じます。

そのため、弊社は第三者の信頼出来る人に、月に1.2回ほど管理者の面談をお願いしています。

そうすることで、私では拾い上げられない事象を把握出来て、尚且つ私と管理者のパイプも残したままマネジメントが出来るようになっています。

私は会社の代表なので、組織のためを思うと管理者に改善して欲しいことはイヤなことでも言わないといけないし、辛い意思決定も出てきます。

だからこそ、第三者でのパイプを活かしてマネジメントすることで、お互いの直接かかるストレスを緩和して事業運営をするようにしています。


現在、まだまだ課題がある部分もありますが、各事業所の中間管理職が育ってきているため、私自身は月に1〜2日顔を出す形でも事業が成長しています。

私は全国展開を考えているため、今くらいの関わりでこなしていかないと身体が持たないと予想しています(笑)


【対応策の例】

  • 第三者面談を実施する: 定期的な面談で問題を把握し、経営者と管理者の関係を補完する。

  • 客観的フィードバックを活用する: 第三者からのフィードバックで管理者の成長を支援する。


訪問看護における管理者のキャリア形成に必要な軸

以上、管理者の育成におけるキーポイントをお伝えしましたが、とはいえマネジメントで結果を出している管理者はまだまだ少ないのが現状です。

肌感ではありますが、全国で1.4万事業所ある中で、マネジメントで結果を出してる管理者は1-2割くらいかなと思っております。

能力や思いがあっても、会社の経営や方向性が悪くて埋もれてしまっている人たちがたくさん居るのも事実です。

管理者としての評価を上げたり、働き方・処遇を上げていくには、組織としての結果(10人以上のスタッフ人数・売上・利益等)がないと当然難しいです。

全体を見ても、利用者100人抱えている事業所は20%くらいなので、妥当と言えば妥当な数字です。

ということは、管理者のキャリア形成に必要な軸は2つです。

  • 管理者としての結果(売上・利益)

  • 会社組織の方向性や評価軸

この2つがあれば、管理者としての評価は必ず上がります。

一店舗であるならば、550-750万円と言ったところでしょうか。


さらに結果を出したい人(650-1,000万円超え)に、もう一つ大切な軸をお伝えするとすれば『組織の圧倒的なスケールアップと組織の課題解決』です。

これは一店舗を担う管理者(10人前後)の次フェーズになりますが、多店舗展開とそれに伴う課題解決(事業戦略、採用、TOP営業、教育)のことです。

管理者自ら組織課題を生み出して解決していける能力とも言えるでしょう。

どの会社でも共通かと思いますが、1,000万円を超えるには最低20人以上はマネジメントしないと難しいです。30〜50人程度であればより現実的かと思います。

このくらいのレイヤーになると、現場に出る出ないは拘らなくても組織を回せる人たちもいます。

子育てや親の介護など、一部リモート環境で時短の働き方でも、それなりの年収が担保出来るでしょう。

これから労働力の減少や若手が減っていく中、若手管理職の育成や変化するライフスタイルの中での定着は非常に重要な要素になります。

訪問看護における管理者のキャリア形成は、これからより多様化して面白くなってくる分野だと確信しています。

日本一面白くしていける会社を目指している弊社としては、是非押さえておきたいポイントでもあります。


まとめ

訪問看護における管理者育成は、組織の成功と成長に不可欠な要素です。

素人が素人を育てる難しさや、個別性を尊重した判断基準の確立、そして利害関係の薄い第三者の関与によるサポート体制の構築は、管理者育成において大きな役割を果たすと考えています。

また、管理者のキャリア形成においては、組織全体の成長に貢献するための具体的な成果を上げることが重要になってきます。

今後、訪問看護業界がさらに発展していく中で、管理者の育成とキャリア形成はますます多様化し、個々のリーダーシップが求められる時代が到来するでしょう。


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記事編集・監修:和田祥平
理学療法士。作家。Webライター。病院・訪問看護ステーションで勤務をする傍ら、介護・リハビリに関する記事の執筆・監修、書籍の出版等を行なっている。最新著書:介護のお世話にならない リハビリの専門家が教える 足腰の教科書(メディカルパブリッシャー)

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