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【訪問看護の人材育成】スタッフの人数別で見た管理者の役割とマネジメント方法

「訪問看護における管理者の役割は多岐に渡る」ということは、過去の記事でもたくさん触れてきました。

\過去記事はコチラ/


現場の管理はもちろん、売上管理や粗利管理、採用戦略など多くのことが求められる管理者ですが、「なんか私には当てはまらないんだよな…」と、いまいちピンときていない人もいるのではないでしょうか。

おそらく、その原因の一つに、「管理者の役割はマネジメントする人数で変わる」ということが挙げられます。

例えば、少人数(スタッフが1〜3人程度)をマネジメントする管理者であれば現場のウェイトが高くなるため、経営的なことを言われても…と思うのも当然理解はできます。

逆も然りで、大人数(スタッフが10人以上)をマネジメントする管理者に、もっと訪問に出て現場を理解しよう!というのは乖離しているでしょう。

この記事では、訪問看護の管理者として成長していく過程で直面する課題や役割の変化について、スタッフの人数別に詳しく解説し、効果的なマネジメント方法についてお伝えしてまいります。

実際、私は少規模のマネジメントから大規模のマネジメント、そして現在は経営者(えん訪問看護ステーショングループ)のように、規模に応じたマネジメントを一通り経験してきました。

ぜひ、あなたのステーションの状況照らし合わせて参考にしてみてください。

(*本記事は管理者で統一表記していますが、管理職に属する人(所長・主任・リーダーなど)も含んだ内容となっております。)


【スタッフの人数別】管理者の役割とマネジメント方法

では早速、スタッフの人数別で見た、管理者の役割とマネジメント方法をお伝えしてまいります。

スタッフの人数は、大きく下記のように区切りがつけられるかと思います。

  • スタッフ3人まで:プレイングマネジャーとしてのスタート

  • スタッフ5-7人:管理業務の増加とコミュニケーションの複雑化

  • スタッフ10人以上:マネジメントの本格化


スタッフ3人まで:プレイングマネジャーとしてのスタート

【比率=現場8:マネジメント2】

訪問看護の管理者としてのキャリアが始まるとき、最初のステップは少人数のチームをリードするプレイングマネージャーとしての役割です。

通常、スタッフが3人以下の場合、管理者も訪問業務に積極的に参加し、一緒に現場で働くことでチームの一員としての信頼関係を築きます。

この段階では、管理業務は比較的少なく、主な仕事は現場での直接的なケアとスタッフのサポートです。

プレイングマネージャーとしての役割は、スタッフと共に汗を流し、共に成長することです。

この「共に頑張ろう」という姿勢は、少人数のチームにおいては非常に有効で、スタッフのモチベーションを高め、チームワークを強化します。

しかし、この段階での管理業務は限られており、主にスタッフのシフト管理や簡単なトラブルシューティングにとどまります。

 

求められる役割・スキル

  • リーダーシップ: 自らが模範となって行動し、スタッフを鼓舞する。

  • コミュニケーション能力: スタッフとの密な連携を保ち、迅速な情報共有と問題解決を図る。

  • 実務スキル: 現場での実務に精通し、スタッフのサポートができる。

  • 柔軟性: 多様な状況に対応し、臨機応変に行動する能力。

 

スタッフ5-7人:管理業務の増加とコミュニケーションの複雑化

【比率=現場5:マネジメント5】

スタッフの人数が5-7人に増えると管理者の役割は大きく変化します。

スタッフ3人の時と同じ方法をとってたら人が辞める、組織が伸びない、成果が出にくいと言う状況になってしまうため、プレイングマネージャーとしての役割から、より本格的な管理業務へのシフトが求められるようになります。

私は、この段階が訪問看護におけるマネジメントを最も学べる時期だと感じています。

現場とマネジメントウェイトの出し引きを覚えていく重要な段階とも言えます。

この段階では、スタッフとのコミュニケーションが減少し、チームメンバー全員と日常的に顔を合わせる機会が少なくなるため、誤解やミスが発生しやすくなります。

また、利用者の数も倍増し、ToDoリストが急激に増加するため、業務の優先順位をつける能力が重要となります。

この規模のチームを効果的にマネジメントするためには、管理者が日常的にチームの状況を把握し、適切な指導とサポートを行うことが求められます。

現場の業務と管理業務のバランスを保ちながら、チーム全体の効率を最大化するための調整力が必要です。

この段階での課題は、現場での直接的な関与を減らしつつも、スタッフの信頼を維持し、効果的なチーム運営を行うことです。

 

求められる役割・スキル

  • マルチタスキング: 現場業務と管理業務の両立が求められるため、同時に複数の業務をこなす能力。

  • 優先順位設定: 業務の優先順位を正確に判断し、効率的にタスクを遂行するスキル。

  • 問題解決力: 誤解やミスが発生しやすくなるため、迅速な問題解決が求められる。

  • 組織運営: 基本的な人事管理や業務スケジュールの調整など、管理者としての基礎的なスキル。

  

スタッフ10人以上:マネジメントの本格化

【比率=現場2:マネジメント8】

スタッフの人数が10人以上になると、管理者としての役割はさらに進化します。

この段階では、管理業務が現場業務を大きく上回り、日常的にスタッフ全員と顔を合わせることが難しくなります。

したがって、管理者は現場から一歩引いて、全体の状況を俯瞰しながら戦略的に組織を運営する能力が求められます。

つまり、『覚悟を持って手放す、任せる』という作業が必須になるということです。

特にNo2が育たないと言ってる人の多くは、この手放す・任せるが出来てない場合が多い印象です。

確かに、パワーがある管理者はこの段階においても現場8割でやれてしまう人もいますが、それを継続するのは至極困難です。

必ずどこかで疲弊をしていたり、マネジメントから逃げて本来の役割をこなせなくなる人も多いです。

だからこそ、スタッフ5-7人の時の学びが大事になってきます。

この規模の組織では、スタッフが「管理者が自分たちを見てくれていない」と感じたり、「何をしているのかわからない」と不満を抱くことがあるため、透明性のあるコミュニケーションとリーダーシップが不可欠です。

イヤ〜な話や突き上げを聞くことも多くなってくるかもしれません。

管理者は、現場の訪問を最小限に抑えながらも、スタッフからの報告を通じて的確な判断を下し、適切な対処を行う能力を身につける必要があります。

また、新規依頼の調整やリスク管理、経営と現場の橋渡しを行いながら、健全な組織運営を行うスキルも求められます。

正直、この段階はマネジメントのToDoとしては分かりやすい時期になります。

しかし、現場叩き上げのプレイヤー気質の強い医療職においては、気持ち的に一番グラつきやすくなる時期でもあるので注意が必要です。


求められる役割・スキル

  • 戦略的思考: 組織全体を見渡し、長期的な目標達成に向けた計画を立てる能力。

  • 委任力: スタッフに業務を任せることで、効率的な組織運営を図るスキル。

  • リスク管理: リスクを予測し、適切な対策を講じる能力。

  • コミュニケーションの透明性: スタッフと明確かつオープンなコミュニケーションを保ち、信頼を築く。


規模の拡大で必ず通る「管理者の成長痛」

スタッフ3人以下〜10人までの管理者の役割をお伝えしましたが、伸びている事業所だと1年〜2年でこの規模まで成長します。

それと同時に、管理者の役割が急激に変化してスタッフとの関わり方も見え方も変わっていきます。

この時期が管理者にとって一番学びにはなりますが、同時に一番シンドイという期間でもあります。

このシンドイ期間を、私は『管理者の成長痛』と呼んでいます。

そもそも、人は痛みに対して逃避する性質があり、コンフォートゾーンから抜け出して変化が起ころうとすると、ホメオスタシス(恒常性)が働いて現状維持に戻ろうします。

つまり、「今までの自分で良いんだ」という現状維持の力です。

これが変化の邪魔をします。

弊社の管理者も、ほぼほぼ全員がこの中を模索しながら進んでいます。

時にはスタッフとぶつかり、シンドイと悔し涙する場面もあります。

訪問看護の管理者は、1事業所10-15人をまとめていける力を手に入れましょう。

これが安定感のある事業所規模だと私は考えています。

スタッフ人数に合わせて管理者の役割変化は必ず起こります。

変化はシンドイこともありますが、逆に変化を楽しんでいけるようになるといいですね。


プレイングマネージャーとマネージャーの価値

今回、規模の大きさによって管理者の役割の違いをお伝えしてきましたが、ざっくり役割変化の過程をまとめると、プレイングマネージャーからマネージャーに変化をしていると言うことです。

最後に、両者の価値について触れておきたいと思います。

基本、訪問看護における管理者のほとんどは、現場もこなすプレイングマネージャーです。

この点、現場を見たいという志向性の問題もありますが、心持ちや仕事の仕方など大きな壁が存在しているように感じます。

しかし、訪問に行かない管理者の存在価値を提供出来る会社は、伸び代が大きいと考えています。

レイヤーの高い管理者(経営者も含む)が、スタッフでも問題なく行ける訪問に行くということは、組織の未来にとってマイナスの選択をしているとも言い換えられます。


勘違いして欲しくないのは、訪問に価値がないという話ではありません。

しかし、1件当たりの単価は管理者が訪問しても、スタッフが訪問しても同じ売り上げです。 年収800万円の管理者が訪問しても、年収400万円のスタッフが訪問しても同じ売り上げです。

1件当たりにかかる人件費は倍違うのにも関わらずです。

それならば、管理者には管理者にしかできない、より価値の高い役割を与えた方が、組織全体の成果につながるというのが私の考えです。


私が考えている、訪問看護の運営における価値が高い業務を添付しておきます。

上記に加えてクレーム処理やリスク管理などが、組織への貢献度が高い業務だと考えています。

組織の価値を最大化するためには、徐々に訪問という現場から卒業してマネジメントという領域に浸っていく必要があります。

確かに、訪問に出ずともマネージャーとしてだけで組織パフォーマンスを上げ、組織人数を増やし、売上&利益を出していける存在は稀有です。

だからこそ、これが出来る人は重宝されますし、このような人が増えれば業界が更に発展すると思っております。


まとめ

訪問看護における管理者の役割は、組織の規模やスタッフの人数によって大きく変化します。

少人数のチームを率いるプレイングマネージャーから、より多くのスタッフをマネジメントする本格的なマネージャーへと進化する過程で、管理者には様々なスキルと適応力が求められます。

特に、スタッフ5-7人の段階は、管理業務と現場業務のバランスを学び、組織の効率を最大化するための重要な期間です。

管理者として成功するためには、常に変化を恐れず、新しい挑戦に対して柔軟に対応しながら成長を続けることも求められます。

組織の成長とともに自らの役割も進化させ、チーム全体の成果を最大化するためのマネジメントスキルを磨いていきましょう!


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記事編集・監修:和田祥平
理学療法士。作家。Webライター。病院・訪問看護ステーションで勤務をする傍ら、介護・リハビリに関する記事の執筆・監修、書籍の出版等を行なっている。最新著書:介護のお世話にならない リハビリの専門家が教える 足腰の教科書(メディカルパブリッシャー)

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