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可動域制限のひとつ膝蓋上包とは?膝関節筋との関係性も解説

膝関節屈曲の可動域制限の原因として膝蓋上包という滑液包があります。


膝蓋上包は比較的癒着が生じやすい組織であると同時に、いったん癒着を作ってしまうと運動療法により剥離することは非常に困難であるため、癒着を起こさないよう予防が重要になります。


今回は、膝関節術後の方などを中心としてアプローチすることが多い組織の1つ「膝蓋上包」に焦点を当てて書いていきます。


膝蓋上包の特徴

第7回ナイト研鑽会-コピー-1

膝蓋上包は大腿骨顆部前面と膝蓋骨を繋ぐ滑液包であり、膝関節における膝蓋骨の長軸運動(上下運動)を円滑化する役割があります。


膝関節伸展位では膝蓋上包は近位で折れ曲がり、二重膜構造を呈しますが、屈曲に伴い膝蓋骨の下方への滑りを許しつつ、キャタピラのように動きながら徐々に単膜構造に変化していきます。


また、膝関節術後など長期的に膝関節伸展位で固定されれば膝蓋上包内に癒着を生じてしまいます。


さらに、膝関節内に炎症が生じ関節水腫の貯留が持続すると膝蓋上包の柔軟性が低下します。


これにより膝蓋上包の滑走が阻害されると、屈曲に伴う膝蓋骨の上方移動が制限され屈曲の可動域制限となってしまいます。


膝蓋骨が滑動できなければ、膝関節は70°以上の屈曲が行えないといわれています。


そのため術後早期より膝蓋骨のモビライゼーションに加えて、膝蓋上包へのアプローチが必要になってくるのです。


膝蓋上包の癒着とExtension lagとの関係

Extension lagの要因として

・大腿四頭筋の筋力低下
・疼痛などによる筋出力不足
・手術後などの大腿四頭筋延長による筋収縮距離の相対的な低下

などといわれていますが


その他に膝蓋上包の癒着により膝蓋骨を近位方向へ引き上げられないことも1つの要因として考えられます。


上記でも書きましたが、膝蓋上包は膝関節伸展する際に近位で折れ曲がり二重膜構造を呈していきます。


しかし膝蓋上包は滑液包であるため、自己にて近位方向へ動くことができません。


じゃあどうするか?


その際に「膝関節筋」という筋肉が働き膝蓋上包を近位方向へ引っ張ってくれます。


膝関節筋??


聞いたことありますか?

第7回ナイト研鑽会-コピー-自動保存済み

詳しい作用などは分かっていないのですが、膝関節筋は大腿四頭筋の深層に存在している小さな筋肉で、中間広筋の中央部深側から分岐しています。


<膝関節筋>

起始:大腿骨遠位前面

停止:膝蓋上包

作用:膝蓋上包を近位方向へ引く

膝関節筋は中間広筋と連結。膝関節筋と中間広筋の筋腹の間に明確な間隙は存在しない。

こんな感じです。


役割としては、膝関節伸展時に膝蓋上包を引っ張ることにより、滑膜が膝蓋骨と大腿骨の間に挟み込まれるのを防いでいます。


膝関節筋の機能不全が生じると膝蓋上包が膝蓋骨と大腿骨の間に挟み込まれるため拘縮の原因になると考えられています。


膝関節筋の収縮を引き出すためには、パテラ周囲組織の癒着や伸展制限を解除しておくことが大切です。


膝蓋上包と膝前面痛

膝蓋上包は拘縮だけでなく膝前面痛の原因になるので、膝蓋骨の上方に痛みを訴える場合は圧痛を確認していきます。


膝関節周囲の組織の疼痛は、膝蓋下脂肪体が最も疼痛を強く感じる組織であり、次いで前十字靭帯の付着部、膝蓋上包となっています。


このように膝蓋上包は痛みを感じやすい組織といえます。


圧痛がなくても、膝関節筋の収縮不全によって膝関節伸展時に膝蓋上包を引っ張ることができず、滑膜のインピンジメントを起こすことにもつながります。


アプローチ

膝蓋上包が癒着を起こすことで可動域制限や痛みに関与してくることは周知の通りです。


そこで膝蓋上包の癒着を予防するためのアプローチをどのようにすればいいのでしょう?


やり方は結構簡単で

膝蓋上嚢

*上図はもう少し持ち上げてもいいかもしれませんね。


大腿四頭筋特に中間広筋を指でつかんで持ち上げ(Ω形)、大腿骨と引き離していきます。


これだけ?そうこれだけです。


もちろん、他にも有効な方法があるかもしれませんが、自分の知っているところでは今のところこれが1番有効です。


この方法をパテラセッティングとあわせることでより効果的になります。


術後や外傷などで膝関節に炎症が存在する場合はとくに癒着が進行しやすいので、セルフexとして必ず患者さんに指導しています。


まとめ

今回は膝蓋上包についてまとめていきました。


膝蓋上包は比較的癒着が生じやすい組織であると同時に、癒着を作ってしまうと運動療法により剥離することは非常に困難であるため、予防が重要になります。


膝蓋下脂肪体同様、膝蓋上包も膝関節を評価する上で切っても切れないほど大切です!


今回の内容が臨床の参考になれば幸いです。


最後まで読んでいただきありがとうございました。


参考文献

・河上敬介、磯貝香:骨格筋の形と触察法,改訂第2版,p316-317,大峰閣,2017

・森口晃一 他:膝関節理学療法マネジメント 機能障害の原因を探るための臨床思考を紐解く(監修:石井慎一郎),p74,MEDICAL VIEW,2018

・林典雄 他:関節機能解剖学に基づく整形外科運動療法ナビゲーション 下肢,改訂第2版,p60,MEDICAL VIEW,2014

・林典雄:膝関節拘縮に対する運動療法の考え方~膝関節伸展機構との関連を中心に,The Journal of Clinical Physical Therapy VOL 8,2005















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