【Bリーグ】スモールマーケットの戦い方
今回のキーワードは、『田舎には田舎の戦い方がある』です。
NBAでもBリーグでも関係なく、スモールマーケットはスモールマーケットとしてのやり方があるなと改めて肌で感じたので、感覚が鈍らないうちにレポート&備忘録としてnoteに残しておこうと思います。
1.『みんなで作る』 小豆島アローズというプロジェクト
Bリーグは年間60試合(うちホームゲーム30試合)をレギュラーシーズンとして各チーム戦っています。一節単位での設営&撤収(これがかなりタフ)、冠スポンサー対応、ファンイベント、様々な演出企画と、その遂行力が求められるタフな業務をフロントはこなしています。
私は仕事柄、色んなチームの試合を観に行くことがあるのですが、その度に一つの興行(一節)に懸けるフロントスタッフ及びその関係者それぞれの熱量に直接触れる機会があります。
毎度笑顔でステークホルダーすべてに対して対応できる組織と、残念ながらそうではないような状況になってしまっている組織とが散見されますが、今回の香川ファイブアローズのホームゲームであった小豆島開催(通称:小豆島アローズ)は明らかに前者のメンタリティだったなと感じました。
今回、小豆島に行った最大の理由は以下、
Bリーグの事務局長でもあり、『稼ぐがすべて Bリーグこそ最強のビジネスモデルである』でお馴染みの葦原一正さん、スポーツチームのマーケティングクリエイティブを数多く手がけるプラスクラス社の平地大樹さん(20年近い付き合いだけど)、NATIONS TVでも日頃からお馴染みマーク貝島、そして今回の小豆島アローズの素晴らしいクリエイティブを手がけた村上モリローさんとともに、試合後にブースターの皆さんと一緒に飲みながらいろんなぶっちゃけ話をしようぜという『反省会』にお呼ばれしたためでした。
土日開催の土曜日の夜にこんな企画をぶち込んでしまうのが、まさに小豆島アローズなるプロジェクトの真髄かなと思いました(笑)
期せずして、『みんなで作る』というテーマの一員になれたことは非常に喜ばしいことでした。
2.お祭り感溢れる会場
オリーブオイルや醤油の生産で非常に有名な、人口わずか2.7万人程の瀬戸内海の離島。
静かな観光地というイメージでしたが、想像通りというか本当に静かな落ち着いた島でした。
我々は神戸港からフェリーで三時間かけて小豆島入しましたが、島の東部の港に到着したため、会場である土庄町は逆サイドだったため、さらに17Kmの道のりを40分以上(遠っ)バスに揺られて移動してようやく会場に到着。
『実は意外と広い!』←小豆島あるあるらしい
そんな本来なら静かな落ち着いた島で、一箇所だけ異質な空気を作っていたのが土庄町総合会館フレトピアホールでした。
まず素晴らしかったのは、出店の多さ。
全国各地のアリーナを回ることがある仕事柄、まずはやっぱりご当地ものをたくさんいただくというのがお作法なわけです。
〜地ビール美味し ◎〜
酢橘フレーバーのフルーティーな地ビールは試合観戦にはピッタリな爽やかさ。白ビールも飲んでしまって、5杯くらいやってしまいました。
いつも思いますが、レバンガ北海道や川崎ブレイブサンダースのようにご当地ビールは会場売り子さんで売りまくったほうが確実に売上伸びると思います。
ビールは興行においてもかなりの収益源になるため、是非皆さんも会場でお酒飲んで欲しいです。(応援しているチームのためにも)
〜まさかの醤油クレープが美味い! ◎〜
きれいなお姉さんに作ってもらった(※ここ重要)、『醤油クレープ』は非常に美味しかったです!
小豆島産のせんべいと醤油の香りが意外とクリームに合うという奇跡体験。
この他にも、焼き鳥、唐揚げなども食べましたが、すべてクオリティが高く、非常に感心しました。
〜居酒屋シートの破壊力 ◎〜
コートサイドにはなんと『居酒屋シート』なるものが(笑)
これにはびっくりしました…。
色んなアリーナを見てきましたが、初でしたね。
しかも、1テーブル3万円の販売で飲み物チケット付き。
そりゃ試合前からずいぶんと良い感じ(?)にブースターさんたちは出来上がるわけです。
『普段のホーム会場よりもキャパ的に小さな会場でやらざるを得ない節』
『集客のアッパーが決まっていて節売上単価的に打ち手がない』
『えー、会場は土足厳禁です。スリッパ持参ください(乙)』
みたいな状況にてお困りなチームの皆さんは、思い切ってコートサイドをこうやってテーブル並べて飲み屋にしてしまってはいかがでしょうか?
試合中はみんなちゃんと椅子をフロアに向けて観戦してましたよ。
酔っぱらい対応は別途コストかかるかもしれませんが…(苦笑)
冗談はさておき、来場者がちゃんと会場内にお金を落としていくように売り手側がホスピタリティを高く持つというのはスポーツ興行としては重要です。
ここでもみんなが販売に熱心でしたし、『みんなで作る』は実践されていたように感じました。
3.『アロクエ』 クリエイティブの秀逸さ
今回のテーマは『アローズクエスト』なるもので、某国民的RPGゲームをパロってはいるものの『みんなで作る』というコンセプトとのマッチも含めてハッキリしていました。
詳細は上記のYahoo!ニュース内の動画を見ていただくとわかると思いますが、事前に交通広告も絡めてしっかりと地元香川県内でPRをしていたんですね。
何よりもクリエイティブが秀逸でした。
島の住職、醤油作りの職人さん、漁師さん、小学生など、地元の当たり前の風景の中にバスケットボール選手を入れ込む異質感。
しかも、それがドラクエの世界観で再現される。
・思わず見てしまう異質感の演出(画のシュールさ=話題になる)
・地元民を参加させることによる自分ゴト化(ターゲットの明確化)
・アロクエというわかりやすいストーリー性(感情移入させる)
・メッセージ性のあるコピー(みんなで作る=応援すること)
・確かなクリエイティブクオリティ(嘘じゃなく、本気である)
これ以外にも、色んなことを考えて制作されたものだと思います。
香川ファイブアローズのこと、地元のこと、島のことをちゃんと考えて制作したモリロー氏の腕が光ったと思います。(酔っ払っている彼しか知りませんがw)
4.『反省会』でのお話
さて、我々が呼ばれた理由である試合後の『反省会』でのお話について。
一言で言うと非常に、ゆるく、本当に島の飲み屋でオフ会やってますというような雰囲気でした(悪い意味ではなく)
話のほとんどは、香川ファイブアローズへのファン(ブースター)の方々の想いとチームへの愛でした。
今回の小豆島開催という興行を利用して、何を実現したかったのか?
主催者でもあるの渡部さんの熱い想いを中心に、まさに皆その熱意に巻き込まれて行きました。
でも、これってすごいことだと思うわけです。
①ファン(今回『反省会』に参加してくれた方々)
②選手(『反省会』参加こそはなかったもののマストな方々)
③チームフロント(途中からフロントスタッフも参加)
④リーグ関係者(事務局長である葦原さん)
⑤マーケティング企業(プラスクラス平地さん)
⑥クリエイター(アロクエ制作者でもあるモリローさん)
⑦メディア(NATIONS 平&マーク)
それぞれ違う役割で日々バスケットボール界に接している様々なレイヤーの人々が一堂に会して日本のバスケットボールの未来について語る。
結果として、今回の『みんなで作る』というテーマが『日本バスケ界をみんなで作る』というような話題に昇華していくという…。
こういった会はもっとやるべきだし、やったほうが良いとずっと思っていたものでした。
それが期せずして、実現したというのは本当に良かったなと改めて思いました。
5.スモールマーケットの戦い方
冒頭にも書きましたが、『田舎には田舎の戦い方がある』という言葉。
これは今回のクリエイティブを制作していたモリロー氏が『反省会』の最中に何度も放っていた言葉です。
パイが大きい反面、東京、大阪のようなビッグマーケットになればなるほどコミュニティへの帰属意識というものは薄れるものです。
対して、スモールマーケット(地方都市)にはビッグマーケット(大都市)よりも地元への強い愛着が人口相対比で考えると高いと考えられます。
素晴らしい郷土品、自然豊かな観光地、おらが街と言えるだけの郷土愛。
Bリーグのように地域密着型のクラブチームの場合は、本気で地元民のペルソナを理解して、惹きつけ、離さないという活動が何よりも大切だなと。
今回の小豆島開催では、島民人口の5%超の人々が100%に近いチケット購入率で観戦に訪れました。
年に一度しかないからかもしれません。
それでもこの1節に対して本気で作り上げたPR/マーケティング活動は、総じてスモールマーケットはこう戦うべきだというのを体現した一つの成功事例だったのかなと思います。
毎試合、毎節、この熱量でやり続ける。
愚直に突き進めていく。
長々と書いておいてなんですが、『田舎には田舎の戦い方がある』という戦い方に”魔法はない”です。
そして、別に戦い方なんて特別なものも、実際はないのだと思います。(おいおいタイトルと冒頭に言ってることとちげーじゃねーか)
強いて言うならば、『当たり前のことを当たり前にやる』これが戦い方なのではないかなと。
スポーツビジネスの現場では、『明日は数学の試験だよ』と言っているのに日本史の勉強をずっとし続けているようなことが平気で行われていたりするケースもあります。
試験の前日には、しっかりとその教科の準備をする。
普通なら当たり前なことなのですが、これができていない。
逆に当たり前のことをやり続けるだけで、ビジネス的に相当なポテンシャルがあるのが、バスケットボール界でありBリーグなのだと思っています。
そしてもう一つは、本気で達成させるために必ず必要な、自らへの『自信』です。
葦原さんのこの言葉は日本バスケ界全体にも言えることだと思います。
『どうせ日本のバスケなんて』
『どうせNBAみたいにはなれないし』
『どうせアジア人は世界では通用しないし』
いや、一歩ずつ行きましょうよと。
日本のバスケだってイケてる所を示して行きましょうよと。
NBAに少しでも近づくために、まずは世界2位のビジネス規模のリーグになろうよと。(二位じゃダメなんですか?の逆パターン)
まずはアジア制覇して、それからNBA選手わんさか出しましょうよと。
話題というのは次元が違うとまったく異なることを話しているような錯覚に陥りますが、本質的な部分は共通していて、視座を上げるとその分話題の視座も上がります。
私は少なくとも20年以内に日本バスケをNBAに次ぐ市場規模のリーグにするということにあらゆる角度からアプローチしたいと思って日々過ごしています。
手法論以前に、まずは志を達成するためにどれだけ具体的なイメージとアクションを起こせるか?
そしてそれに”魔法はない”です。
一歩ずつ進んでいく以外ないわけです。
日本のバスケ界に対して、同じようなマインドセットを持ってビジネス参入する人々がもっと増えてくれれば、そのスピードは加速度的に伸びていくんだろうなと。
ちょっと話が飛躍してしまいましたが、そんなことを思いながら小豆島を後にしましたというお話でした。
最後になりましたが、今回の小豆島遠征。
最高にたのしかったです、ありがとうございました。
でも、めっちゃ移動疲れました(爆)
全国津々浦々、また似たような企画ができるといいなと。
何かあればいつでもお誘いください。
さぁ、日本のバスケを盛り上げましょう。