③タンパク質の摂り過ぎによる影響
なぜ肉や魚といった動物性タンパク質を食べすぎてはいけないのか?
人の身体に欠かせない大切なタンパク質なんですが、摂りすぎることでマイナスに傾いてしまうのです。
もちろんタンパク質は健康には欠かせない大切な栄養素です。
タンパク質は身体の中で、酵素、細胞受容体、伝達分子を組み立てるための部品であって人の筋肉や骨の元にもなっています。
さらに、タンパク質は血中で身体に必要なものを運び、タンパク質に含まれるアミノ酸は、ホルモンやビタミンを作るための大切な材料です。
腎機能にダメージを与える
必要以上にタンパク質を摂取してしまうと代謝する過程で窒素が増え、それを尿として排出しなければならないため腎臓に負担をかけてしまいます。
腎臓に疾患がある人にとって、タンパク質の摂りすぎは腎機能を低下させる要因となります。
タンパク質の過剰摂取が引き起こす問題は他にも例がありますが
いくらタンパク質が身体に良いといってもアトキンスダイエットやパレオダイエット
ケトジェニックダイエットなどの薦めるままに、肉や魚を食べ過ぎてはいけません。
カロリー制限よりもタンパク質制限
今まさに最新の分析研究では、カロリー制限よりもタンパク質の摂取量を減らすことの方が身体に良い影響を与えると考えられています。
特に肉に多く含まれるメチオニンというアミノ酸を控えた方が良いとされています。
ただし、アミノ酸であるメチオニンは体内にある最も重要な抗酸化物質であるグルタチオンの与える側(メチル供給源)なので
完全に排除する必要はなく、ただ減らすだけで良いことが分かっています。
インスリンと癌、老化の関係
少しタンパク質の話題から脱線してしまいますが、人の身体においてインスリンは栄養を貯蔵するために必要な機能を果たしています。
※インスリンは、膵臓から分泌されるホルモンで、血液中のブドウ糖(血糖)を下げる働きがあります
食べ物が豊富であればエネルギーを身体に溜め、逆に食べ物が少ない時期には消費する助けをしています。
つまり、インスリンは過剰に摂取した炭水化物を脂肪に変える役割を持ちます。
(糖を食べすぎたら脂肪を蓄積するということです)
そして、老化現象の観点から見るとインスリンの機能は二つあります。
生存よりも生殖を促す
まず一つには食物が豊富だと身体が認識すると、インスリンは身体に生存よりも生殖を促します。
自らの生命の維持ではなく、新しい命を生み出すために身体の機能を切り替えていきます。
防御機能が働き身体が活性化する
二つ目は、飢餓状態にあると身体が認識すると身体の中でさまざまな防御機能が活性化し、生き残りを優先する機能にスイッチが入ります。
そのため、一般論としてインスリンの平均値を低く抑えると、インスリン受容体が敏感であればあるほど、老化のプロセスは遅くなることが判明しています。
インスリンとタンパク質の関係性
ここでタンパク質の話に戻し、インスリンとタンパク質の関係を見ていきます。
以前もお伝えしましたが、タンパク質を過剰に摂取するとインスリン様成長因子1(IGF1)というホルモンが身体の中から分泌されます。
名前の通りインスリンによく似た特徴と役割を持っています。
このインスリン様成長因子1(IGF1)の分泌を刺激するのが、ヒト成長ホルモン(HGH)です。
分泌されたIGF1は、細胞の増殖を命令する役割があり、ヒト成長ホルモン(HGH)による、成長や同化作用の多くを担っています。
たくさんのタンパク質を食べると、身体の細胞が成長し増殖しますが、実はインスリンと同様にIGF1には強力な老化作用があるのです。
IGF-1の分泌量を減らすと、老化や癌の発生を抑制する
長寿を研究している研究者が示す結果では、IGF1の分泌が少ない動物ほど長生きし、病気も少ないことが観察されています。
例えば、これらを示す好例があります。
それは、ラロン症候群という、世界で広く知られている疾病についてです。
※興味のある方は是非ラロン症候群(別名では小人症)の画像をググってみてください。
南米エクアドルの遠隔地に、ラロン症候群という小人症の人々が多く住んでいる地域があります。
ラロン症候群の人々はみな長命で、糖尿病や癌にほとんどかからないことがわかり世界中の科学者を驚かせています。
この事実は、IGF1と様々な病気との関係に関与しています。
ラロン症候群の患者99名を五年間追跡した研究では、糖尿病患者は一人も出ず、癌患者も一人だったそうです。
(その患者も癌を克服しているそうです)
同様の結果が、遠く離れたヨーロッパに住む、ラロン症候群の人々を含むコミュニティの調査でも確認されています。
ラロン症候群の患者の血液を分析したところ、HGHの値が高かったのです。
その原因を探ると、彼らのHGH受容体に変異があることが判明し、HGH値が高くなってもそれに反応してIGF1は分泌されていなかったのです。
つまりIGF1の分泌がないだけで、世界中の人々が苦しむ癌や老化の発生を抑え込むことができるというのです。
健康寿命に影響する「mTOR酵素」
重複しますが、mTOR酵素(ラパマイシン標的タンパク)は太古から存在している複雑なタンパク質とされ、体内のとても重要な栄養素の伝達回路として機能しています。
このmTOR酵素は、1960年代後半に南太平洋のイースター島で発見されたバクテリアから
強力な抗がん剤ラパマイシンを開発する過程で発見された比較的新しい物質です。
全ての哺乳類にとって筋肉を作る上で、m TOR酵素は鍵となる仕組みを担っています。
mTOR酵素は、細胞の修復や維持に必要なプロセスを行います。
オートファジーやDNA修復、細胞間の抗酸化物質やヒートショックプロテインの活性化など、私たちの身体を適切なコンディションに保つようプログラムされています。
ところが、現代社会の食生活という観点から見ると、身体に異常をきたしているのが現状です。
必要量を超えるタンパク質の摂取によってm TOR酵素が過剰に刺激され続けていて
IGF-1も過剰に分泌され、細胞の成長と複製の命令が絶え間なく身体の中で起きています。
その結果、細胞やミトコンドリアの修復と回復機能の多くを止めています。
常にタンパク質を過剰に補給し続けているので、いつまで経っても身体の機能を回復させる機会が来ないのです。
血中の糖、アミノ酸、インスリン、成長ホルモン(IGF1など)を低く抑える
身体の機能回復と減量や老化防止に努めるには、細胞やミトコンドリアのコンディションの維持回復を促す食事内容を改善します。
その手段として、血中の糖、アミノ酸、インスリン、成長ホルモン(IGF1など)を低く抑えて
mTOR酵素を刺激しないようにし、これらの働きを適切に抑える必要があるというわけです。
つまり、食事の中身やその食べ方が健康全体に大きな影響を与えるということです。
デトックスやダイエット、予防医療など、特に「健康寿命」にも影響を与えます。
身体の中の細胞とミトコンドリアの自浄作用は、体内の老廃物や傷ついた細胞を排出するために必要な機能です。
糖質制限などで血中の糖やインスリンの量を抑えても、動物性のタンパク質を摂りすぎてしまえば、mTOR酵素伝達回路が刺激されて身体の機能回復が起こらないので注意が必要です。
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