【論文メモ1】「何が正しいか」よりも「誰が正しいか」が組織的違反の容認を招く
読んだ論文についても、たまには触れてみようと思って、メモ的に書いてみる。
約20年前の論文だが、最近読んで面白かった、「属人思考」についての論文を取り上げてみる。
取り上げる論文
概要
組織風土が組織の違反に与える影響について、組織風土の「属人思考」に着目し、質問紙調査の 手法を用いて検討した。
属人思考とは?
社内の 会議で新しい企画の採否を決めるような場合に、その企画の立案者は誰か、他に 関わる人が誰か、その人は社内では誰の派に属するのかなど、企画内容以外の「人」に関する事項が意志決定に大きな影響を及ぼしがちな組織風土(岡本 2001)のこと
このような「人」に対する志向性の高い風土であると以下のようになるという。
・職場への忠誠心や所属意識が重んじられ、上下関係のけじめが甘くなると考えられる。
・属人風土では、個人のキャリアへの悪影響や人間関係 の不調和を回避するため違反が容認されやすいのではな いかと考えられる。
この属人思考、いろいろな場面で見かけることが多いなあと思っている。
本研究の構成
本研究は、以下の3つの研究から成り立っている。
【研究1】 組織風土が組織における違反容認に与える影 響について検討を行う
【研究 2】 研究1 で得られた結果の信頼性の確認を行う
【研究 3】 属人風土を形成する 1 要因として、組織メンバーの属人思考の測定に向けた、 属人的判断傾向の特徴について検討する
各々の研究を概観していきたい。
研究1
【目的】
組織風土から、組織内の違反容認(個人的違反の容認・組織的違反の容認)の予測可能性を検討することを 目的としている。
なお、「個人的違反の容認」「組織的違反の容認」は、各々以下のように定義づける。
【方法】
<調査・分析対象者>
関東地域の国立・私立大学に在学中の大学生の家族 1146 名に調査票を配布し 382 名から回答を得た(回収率 33.3%)。そのうち、調査票に記入漏れのない、企業・官 公庁に正社員・正職員として勤務している者 310 名(男 性 253 名・女性 57 名)を分析対象者とする。
<調査・分析内容>
以下の項目につき、「あてはまらない(1 点)」から「あてはまる(5 点)」までの 5 段階で評定。
【結果】
研究2
【目的】
・研究 1で得 られた共分散構造モデルの信頼性を、異なったサンプル を用いて検討
・組織風土の属人度が高いと、実際に違反の件数が多いのかどうかについて検討
【方法】
<調査・分析対象者>
首都圏40km圏内在住の25 歳から59 歳の男性勤め人 を調査対象とした。調査標本数は750、回収数は492 (回収率65.6%)。
<調査・分析内容>
研究1 と同様の内容に加え、現在の職場での組織 的違反の経験を尋ねる項目を作成し、「はい(違反経験が ある)」、「いいえ(違反経験がない)」の2 件法で回答を 求めた。
【結果】
研究1で作 成された共分散構造モデルと、ほぼ 同様の結果が得られ、再現性を確認できた(Table1)。
また属人風土は、組織的違反に関連していることが分かった(Table2)。
研究 3
【目的】
個人の属人度を測定する尺度(「属人的判断傾向尺度 」)を開発し、「属人的判断傾向尺度 」の特徴を既存の心理尺度との関連から、属人的判断傾向の特徴を明らかにする。
【方法】
<調査・分析対象者>
関東の私立大学に在学する大学生369名を対象にアンケートを実施
<調査・分析内容>
属人的判断傾向尺度として17項目(上記Table2と以下のTable3を参照)を作成、一般的心理尺度と合わせて測定した。
【結果】
わかったこと
本研究から、わかったことは、以下の点などである。
感想
本論文は、2003年のものであるが、今に至っても、この「属人思考」「属人風土」というのが、本当、アルアルだなあと思う。
また現在に至るまで組織の不正はなくなっておらず、最近もよく報道で耳にするところである。
著者らの以下の指摘は、昨今の事態を予言しているようにも見える。
「誰が正しいか」ではなく「何が正しいか」、フラットに議論できる環境作りが大切なんだろうなあ。
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