【読書録26】システム思考「世界はループでできている」~ピーター・M・センゲ「学習する組織」を読んで➁~
前回は、第Ⅰ部を取り上げた。
今回は、学習する組織の第Ⅱ部、著者が「学習する組織」の要とする「システム思考」に入っていく。
システム思考とは?
著者は、システム思考とは何かについて、言葉を変えながら、以下のように述べていく。
キーワードは、「相互関係」「変化のパターンを見る」「土台」か。
そして、システム思考を理解する上での鍵としてとして、以下の3つを挙げる。
因果関係の「環」(ループ)に目を向けよ
では、「システム思考」を理解し、実践するには、どうすれば良いか?
まずは、物事を直線的に捉えるのをやめて、因果関係の「環」(ループ)に目を向けよという。
そして因果関係のループに目を向けた上でのポイントとして以下の通り言う。
フィードバックとは、相互に与え合う影響の流れを意味する。
フィードバックやループを理解するための例として、著者は、対テロ戦争を挙げる。
これらは、各々直線的に見えて、ループになっている。
これらは、典型的なパターンであって、本質的には、街の二つのギャング間の縄張り争いや婚姻の崩壊、市場シェアをめぐって価格競争を繰り広げる2社の広告合戦と同じであるという。
確かにこの構造は、よく見るパターンである、
そして著者は言う。
システム思考を習得する際に、私たちは、責任ある個人がいるという前提を捨てることが必要であるとする。
フィードバックという見方をすることで、システムによって生み出される問題に対しては全員が責任を共有できるようになるというのである。
システム思考の基本構成要素
システム思考に基づいて、直線ではなくループでものを見ていくときの基本的な型が2つあるという。「自己強化型フィードバック」と「バランス型フィードバック」である。
・自己強化型フィードバック
これは、比較的理解しやすい。近年のオイルショック時のトイレットペーパー騒動や近年のマスク不足を考えるとわかりやすい。
だが、悪循環ばかりではない。好循環もある。
など。
この項目で頭に入れておいた方が良いのは「いかに小さな変化が大きくなり得るかを見つける」という点であろう。
フランスの学校で教えられる話として「スイレンの葉」の話が出てくる。
問題に注意が向けられたときには手遅れの可能性があるのだ。種の絶滅は往々にして、長期間にわたって減少がゆっくりと次第に加速していき、急激に崩壊するというパターンをたどる。
ただ、現実では、加速的な成長や衰退が抑制されないままつづくことはあまりない。なぜなら自己強化型プロセスが孤立して起こることがほとんどないからであり、バランス型フィードバックも同時に起きているからである。
・バランス型フィードバック
バランス型フィードバックはいたるところに見られる安定を求めるシステムであるという。私たちが食べ物を必要としているときに食べるように促し、休養を必要な時には眠り、寒いときには、セーターを着るよう促すなど。
人間の身体には、体温やバランスを維持したり、傷をいやしたりする機能がある。生物学者が言う「恒常性(ホメオスタシス)」である。これもバランス型フィードバックである。
そして、すべてのバランス型フィードバック型フィードバックにおいて重要な要素として、望ましいレベルに向かって徐々に適用していくということを挙げている。
そして、この項目で頭に入れておいた方が良いのは、「バランス型フィードバックは何も起こっていないように見える場合が多く、気がつきにくい」という点である。
・遅れ
そして、上記2つのループを複雑にする要素として基本構成要素の最後の要素として、「遅れ」を挙げる。
行動と結果との間の途切れ、があるために起こる不幸。
シャワーの適温調整の話がピンとくる。
「遅れのために、目標を行き過ぎた失敗が起こる。」過ぎたるはなお及ばざるがごとしなのである。
「自然」の型~システム原型~
システムとは、上記の基本構成要素を組み合わせた構造であり、その構造を見ることが、今まで見えていなかった力と連動しその力を変える能力を身につけるプロセスの第一歩であるという。
そして、そのシステムには、いくつかの「型」=システム原型が存在し、その特定の型が繰り返し起こるという。本書では、その典型的な一例として「成長の限界」と「問題のすり替わり」を挙げる。
原型➀成長の限界
自己強化型プロセスとバランス型プロセスのぶつかりが成長を制限する構造である。
ダイエットを目標として、急激な食制限で当初は、体重減るが、ストレスがたまり、決意が揺らぐことによって、結局リバウンドするなどが、例である。
対処するに自己強化型プロセスではなく、バランス型ループの中にある制約要因を特定して、それを変える必要がある。
ダイエットであれば、更に食事制限をするということではなく、ストレスが溜まらないダイエット方法を見出すとかであろうか。
ビジネスでは、成長の限界になった際に、自己強化型プロセスに更にアクセルを踏んでドツボにはまるというパターンがよくある。
原型➁問題のすり替わり
これは、2つのバランス型ループからなる。
また卑近な例であるが、長時間労働のストレスを解消するために、本質的には、仕事量の削減が求められるが、対処療法として、飲酒に逃れるなどである。
これらの原型を理解することは、システム思考を実践する上で第1歩であろう。
守・破・離の「守」である。
人間は、直線的にものを見るのが自然なので、ループで全体を見て、本質的な対処法をか投げていくには、かなり訓練が必要だろうなあと感じた。
システム思考の法則
システム思考でモノを考えるのには、基本原則や原型を意識して、ものを見て実際に構造をループで描いていくしかないかなと思うが、その際に意識しておいた方が思われる11の法則を著者は挙げている。
どれも、システム思考についてかじってから読み返すとなるほどなと思わせる法則である。
最後に
システム思考で見ると本質的な解決策を見出しやすくというのは理解できた。
会社の業務では、関連先も多く、しかも人事評価制度に紐づき、単年度で目標を掲げて、実行していくのが基本となっており、「遅れ」が一番の敵になるような気がする。
対処法的な対策に逃げがちなのは否めない。
第Ⅲ部で出てくる、他のディスプリンの理解・実践が組織でシステム思考を実践する鍵なのかなと感じた、さあ第Ⅲ部に進もう。
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