今年度の大河ドラマ「青天を衝け」主人公、渋沢栄一。
本書は、渋沢栄一の講演の口述を編集したものである。現代語訳になっており、渋沢栄一に語り掛けられてるような感覚になる。
「読書は、著者との対話」という。対話というと、渋沢に対しておこがまがそんな感覚になる。
渋沢は、明治6年(1873年)に官僚をやめて、もともと希望していた実業界に入ることになった時に、「これからは、いよいよわずかな利益をあげながら、社会で生きていかなければならない。そこでは志をいかに持つべきだろうか?」と考え、おのれを修めて、人と交わるための日常の教えが説かれている論語の教訓に従って商売していくことを思い至る。
読み終えると、付箋・赤線の嵐となったが、振り返ってみて、印象に残っていることを3点にまとめてみる。
1 天命に身をゆだね、「道理」に従い生きる
これは、決して運命論などではない。明治維新前後、尊王倒幕を掲げながら、一橋家に仕え、幕臣となり、民部公子に随行してフランスに渡ったところで、明治維新となり、敗者側になったという激動の時代を生きた、渋沢ならではの実感であろう。
そんな渋沢は、逆境について、以下のように述べる。
「道理」に従って、ひたすら努力するべきとする。そして、一時の「成功」や「失敗」は、心を込めて努力した人の身体に残るカスのようなものなのだと語る。
そして、人に禍が来るのは、得意になっているときと戒める。
確かに自分自身を振り返ってもその通りである。「慣れたとき」「自信を持ったとき」が危険信号である。さらに私の心を見透かしたかのように以下のように語る。
おっしゃるとおりである。まだまだ心に響く言葉が続くが、この項最後は、70歳を超えた渋沢が、「人生は努力にある」として、我々に語り掛ける言葉で締めくくりたい。。
2 知識は実践と結び付けてこそ価値を持つ
これは、私にとっての一大テーマである。いくら本を読んだり、勉強したりしてもそれをしっかりと役立てないと意味がない。渋沢の言葉は、グサグサと私の心に刺さってくる。
現実と密接な関係を保つには、極端に走らず、「中庸」であるべきということだろうか。確かに物事を上手く運ぶためには、必要な考え方だろう。
3 徳川家康に対する畏敬の念
そして、「天命に身をゆだね、道理に従って生き」、「 知識と実践に結びつけて活用」した人物として徳川家康が、本書で何度も登場する。大河ドラマのナビゲーターを家康が務めるのも納得なのである。
そして、家康の遺訓を紹介する。
4 最後に -決意し、それを持続すること-
まだまだいろいろと刺さる言葉が多い。最近、ノートを整理していたら、年始に書いたメモとして、「運命をひらく4つの条件」として以下を書いていた。
こんな素晴らしい言葉、せっかくメモしていたのに忘れていた。「決意」してそれを持続する。大切である。今回の渋沢栄一との対話を通じて得たことをしっかり活かしていきたいものである。