【人材開発研究大全⑪】第2章 採用面接 今城志保
前回の「第1章 採用」が興味深かったため、引き続き、採用関連についての論考について読みたいと思い、「第2章 採用面接」を取り上げることにしたい。
本章は、こんな問いかけから始まる。
採用面接を中心とした採用時の評価と入社後の評価に相関はあるのかは、以前、採用を担当していた時に何度も考えたことがあったので、本章はとても興味深くまた自分の頭の中を整理するのに役立った。
先行研究紹介
まず、採用面接に関する先行研究の紹介からはじまる。
1:採用選考手法としての面接評価の有効性
採用面接の評価は、その人物を評価する手法として正しいのであろうか?という観点からの先行研究を紹介している。
2:採用面接の評価内容に関する研究
続いて、どのよう人物特徴が面接で評価できるのかに関する先行研究を紹介する。
上記で設定したような指標が、面接で適正に評価されるかについては、支持する研究も支持しない研究もあるという。
以下の前者は支持する先行研究、後者は支持しない先行研究である。
面接評価と職務遂行度の関連性については、評価する内容が特定されないと、関連性を解釈するにも問題になる(Arthur&Villado 2008)と結論づける。
「概念的枠組み」の提案
そのような状況を鑑みて、今城(2016)は、採用面接の評価内容をまとめるための概念的枠組みを以下の図の通り提案する
概念的枠組みでは、面接評価において、以下の3つの内容を評価を行うのが適切ではないかとする。
職務との適合評価
入社後の職務遂行における成功を予測するための人物特徴の評価
組織との適合評価
入社後の組織文化や組織の価値観との適合を予測するための人物特徴の評価
一般的な対人評価
面接場面で自然に評価されるもの
特にこの最後の「一般的な対人評価」が実は面接の時に一番行われているのかなとも思う。
では、この自然に行われる人物評価が入社後の活躍の予測に役立つのか?
先行研究では、自然に生ずる評価について表立って取り上げられることはほどんどなかったとするが、面接研究ではないが、かなり限られた情報からの印象評価にも妥当性があることが示されている(Ambady&Rosenthal 1992)こともあるとして、著者は以下の通り結論ずける。
「概念的枠組み」を用いた実証研究
あるサービス会社X社で2007年に行われた採用面接時に実施した面接の評価結果(N=325、男性216名、女性109名)を用いた研究である。
調査の概要
・内定まで3回の面接を行うが、選抜効果の影響が少なく、サンプル数の多い最初の個人面接での評定を用いた。
・面接者が例年評定で用いれている以下の項目の評価
(a)会社が最終の意思決定として用いる最終評価を4段階でおこなったもの
(b)最終評価の根拠として求められる人物特徴である、自律性、思考力、創造性、誠実さ、協調性の5段階評価
・今回の研究用に協力依頼して収集した、第一印象評価、組織への適合評価
調査結果
以下の図の通りである。
上記の3つの評価に分けると以下のようなことがわかる。
面接の評価は結構、第一印象に左右されるなあという感覚は持っていたが、本研究もそれを裏付ける形になっておりなるほどと思った。
仕事経験の乏しい新卒採用に対する構造化面接の効果
著者は、今後の面接評価の精度向上に向けた今後の研究課題について述べているが、その中での構造化面接についての論考が興味深かった。
前述の通り、欧米の先行研究では、職務との適合評価において構造化面接という評価手法が効果的であることがほぼ確立された知見となっている。
構造化面接には、以下の2種類があるという。
構造化面接研究が行われる欧米は、ジョブ型を中心とした採用をしており、実際の仕事の場面に紐づけた質問は有効だが、日本の新卒採用のように被評価者が仕事経験に乏しい場合、構造化面接が効果的か?
本章の著者でもある今城(2016)によると、入社後3年以上の経過後の仕事での業績や上司評価との相関を分析した結果、欧米の水準と比べると若干劣るもののr=0.25有意な相関関係が確認されたという。
採用面接のリクルーティング機能
面接採用は、会社が応募者の中から社員となる方を評価し選ぶという機能のほかに、応募者が会社を評価し選ぶという機能もある。後者の機能をリクルーティング機能と呼び、社員と応募者が直接会う面接においては、このリクルーティング機能の面の研究が今後注目されるだろうとし、いくつかの先行研究を紹介する。
これも、感覚的によくわかる研究結果である。やはり人と人とが会うということがもたらすものの大きさを感じさせる。
最後に本章をこう締める。
人と人とが、会うことによってしかわからないものがあるため、面接の機会は重要だろう。
そしてそれは会社側だけではなく応募者にとっても同様である。
感想
採用に関しては、自分自身で被評価者・評価者双方の経験があることからとても納得感をもって読めた。今まで漠然と考えていたことが、このように論理的にまた実証研究の結果も踏まえて示されることに痛快さを感じる。
また第一印象の大切さについても考えさせられた。自分が面接官をするときのことを考えると、確かに第一印象で結構評価は決まってしまう面もあるなあという感覚をもっている。
またリクルーティング機能としての採用面接もその通りだと思う。採用面接って、応募者側にも就職する会社を選択するための機会になっている。採用面接って、本当相性だと思うし、相思相愛になれるパートナー探しのような気もする。
本章のベースになっている以下の本も読んでみようかなと思う。とても面白いテーマである。