【日々是光日】#2 オーレオール効果 後光が見えるか
写真は、カナダ・ビクトリアのフィッシャーマンズワーフの海面に現れたオーレオール効果だ。僕の頭の影を中心に放射状に光がゆらめいている。オーレオール(Aureole)は後光のこと。キリストなどの聖者の頭の後ろから放たれる後光のような風景なので、この名前が付けられたのだろう。ネットで「オーレオール効果」と調べてもなかなかヒットしないのだけれど、"Color and Light in Nature" (Cambridge university pless)という本には、しっかりとAuleoleole effect として紹介されている。
オーレオール効果は、水面のさざなみのレンズ効果によって水中に差し込む明るい光の筋たちの集まりだ。光の筋たちはお互いに平行なのだけれども、遠いところほど小さく見える遠近の視覚効果によって、一点に集まって見える。まっすぐな道が遠くに向かって閉じて見えることと同じ現象である。全ての直線が交わる点(消失点)は自分の頭の影の目の中心あたり。光の筋は水中にあるのだけれども、僕たちの感覚では、光は水面にあると感じてしまう。その結果、なんだか自分の頭の影から放射状に伸びる後光のように見えてしまうのである。その証拠が下の写真。
隣の人の影が僕の影の方に伸びて見えるだろう。影は、実は水中にも伸びていて、それが遠近の錯覚で、あたかも僕に引き寄せられるように見えているのである。オーレオール効果は深い水深の適度な透明度の水辺に、程よい日射角度の時に現れる。おそらくいろんな場所で見られるのだけれども、ほとんど気づかれていない現象のようだ。
この写真を撮った時は、僕は久々に出会ったオーレオール効果に興奮し、自分の影を眺めるのに熱中していた。そこへ、がたいの大きな(おそらくカナダ人の)おじさんが「ウミノナカニ、ナニカイルノカイ?」とフレンドリーに近づいてきた。僕は、「ホラ、カゲノマワリカラ光ガ発散シテイルダロウ。キミノカゲノマワリダ」と説明したのだが、彼は「What? What?」と言うばかりで、話が通じない。そして、僕の肩をポンと叩くと、「気にすることないさ」というような感じで行ってしまった。おそらく、僕のことを東洋から来た少しかわいそうなやつ、とでも思っていたのだろう。
でも、この写真の通り、しっかりとオーレオールは出ているのだ。もしかしたら僕が聖人で、これは僕の周りにだけ出ている後光・・・なんて言うことがあるはずはない。物理現象は万人に平等なのだ。