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現場の消防士も知らない予防業務のあれこれ Vol.3 用途判定編
前回の投稿からだいぶ間が空いてしまいましたが、前回の投稿の中から、今回は用途判定について書いていきたいと思います。
用途判定とは?
消防法上における用途判定とは、建物の使用用途(マンションなのか、ホテルなのか、スーパーなのか・・・etc)が、消防法上の使用用途区分のどれに当てはまるかを判定することを言います。
消防法上の用途の区分は、消防法施行令別表第1(例別表と言われてます)に記載されているのですが、大きく分けて22項目に分かれており、その中でさらに細分化されて、全35項目となっています。
この35項目の中からどの用途に当てはまるか判定します。
消防法施行令別表第1
https://www.fdma.go.jp/singi_kento/kento/items/kento094_10_sanko03.pdf
引用元:総務省消防庁
どのように判定するの?
例えば、一般的なマンション(1階にコンビニなどが入っていなくて、建物全体がマンション)の場合は「(5)項ロ:共同住宅など」、コンビニ(建物全体がコンビニ)の場合は「(4)項:物品販売店舗など」に当てはまります。
この(5)項ロ、(4)項をもとに消防法を読み解き、必要な消防用設備等を確認していきます。簡単ですね!!
上で紹介した2つの例ですが、建物全体の使用用途が1つだと本当に簡単なんです。ですが、これが複数の用途が入っている建物だといろいろややこしくなります。()内にわざわざ謎のコメントをしていますが、これが重要ポイントなんです。
上で紹介したマンションは「(5)項ロ」なのですが、1階部分にコンビニが入っていたり、どこかの階で民泊をやっていたりした場合は、用途が変わってしまう可能性があるんです。
例えば、「各階100㎡の5階建てのマンション」の1階部分全てがコンビニで2階から5階がマンション(共同住宅)の場合は、用途は「(5)項ロ:共同住宅など」ではなく「(16)項イ:複合用途防火対象物」になります。
名前に複合とついているので、なんとなくいろいろな用途が入っているのかなと想像できるかと思います。
ですが、この複合用途いろいろ入っていれば全て複合用途というわけではないんです。
上の例をまた少し変えます。
「各階100㎡の5階建てのマンション」の1階部分の40㎡がコンビニでそのほかの部分はマンション(共同住宅)の場合、用途は「(5)項ロ:共同住宅など」なんです。
え〜〜〜なんで〜〜〜???
「機能従属」と「みなし従属」という考え方
同じように建物内に複数の用途が入っているのに、複合用途になったりならなかったり、なんで?と頭に?ハテナ?が出てくると思います。ここで用途判定において重要な考え方として、「従属」というものがあります。
従属について、消防法上では消防法施行令第1条の2第2項のなかで以下のように書かれています。
異なる2以上の用途のうちに、1の用途で、当該1の用途に供される防火対象物の部分がその管理についての権原、利用形態その他の状況により他の用途に供される部分の従属的な部分を構成すると認められるものがあるときは、当該1の用途は、当該他の用途に含まれるものとする
ここでまた疑問が出てきます。従属的な部分を構成すると認められるものとは何か?これについては、国より下記の通知が出されています。
https://www.fesc.or.jp/sp_navi/list10/pdf/S50_41.pdf
引用元:一般財団法人日本消防設備安全センター
この通知の中では、従属的な部分を構成すると認められるものとして「機能従属」と「みなし従属」について記されています。
「機能従属」とは?
建物内にいくつもの用途が混在する場合でも、次の3つの要件をすべて満たす場合は、従属する部分は主の用途に機能的に従属する部分とし、消防法上の用途は主の用途のみとして扱います。この中で、主の用途部分とは建物内で必要不可欠な部分であり、一般的に面積より大きい部分をいいます。
①従属的な部分についての管理権原を有する者が、主の用途の管理権原を有する者と同一であること。
② 従属的な部分の利用者が、主の用途部分の利用者と同一であるか又は密接な関係を有すること。
③ 従属的な部分の利用時間が、主の用途部分の利用時間とほぼ同一であること。
「みなし従属」とは?
次の2つの要件をいずれも満たす場合は、主の用途とは別で独立した用途の部分であっても主の用途とみなして、消防法上の用途は主の用途のみとして扱います。
① 主用途部分の床面積の合計が、防火対象物の延べ面積の90%以上である。
② 主用途以外の独立した用途に供される部分の床面積の合計が300㎡未満である。
この場合、管理権限などについて考える必要はありませんが、それぞれの用途の床面積を算出する際は、共用部分についてはそれぞれの用途の面積割合をもとに按分して求めます。
※平成27年に法令が一部改正され、「みなし従属」が適用されない用途もあります。詳しく知りたい方は、一般財団法人日本消防設備安全センター様より引用しました資料をご確認ください。
以上のことを考慮し、建物が複合用途になるのか、単独用途になるのか判定します。結構ややこしいですよね。ですが、用途判定結果によって必要となる消防用設備等や防火管理が変わってくるため、とても重要な判定となります。
まだまだ用途判定において注意すべきことはありますが、今回はここまでとします。