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命を伝える
私はこれまで動物園に対して
『人間の利益のために命が搾取される場所』
だと思い込んでいた。
元々動物が苦手というのもあったが、同じ生き物なのに檻の中に入れられて、命は不平等だと遠足中に小学2年生ながら感じた。
目の前の赤白帽を被った同級生が檻の中に閉じ込められて家族と離れ離れにされていたら私は話を聞いて助けずにはいられない。
でも檻の中にいるのは人間じゃない。動物。だからこの状況は一般的に通用するものなのだ。動物は可哀想。私は人間として生まれてこれてよかった。
遠足でそう感じて以来、動物と向き合うことが怖くなって動物園に13年間行かなかった。
だが、その固定観念は北海道旅行で訪れた旭山動物園で覆った。
人間のためではなく、そこに存在したのはいかに動物がストレスなく過ごせるかを考慮した動物第一の世界。
各生態に合わせた場所づくり。
動物にストレスを与える行動を人間にさせないようにするための注意書き。
所々にある、飼育員の方や獣医学生、インターン生が書いた心に響くコラム。
誕生だけでなく死にも真摯に向き合う姿勢。
従来までは
人間がお金を稼ぐために動物を利用しているのが動物園の現状だと考えていたが、
旭山動物園の動物に携わる方々が動物第一の信念と責任をもって種を守ってくださっているのだと気付かされた。
そして旭山動物園に心から感銘を受けた。
動物を見たら思わず『かわいい』と発してしまう。その『かわいい』は目の前の命の全てを知った上で出てくるものではない。表面上の言葉に過ぎない。
食物連鎖により私たちは生命を維持できている。
『いただきます』『ごちそうさま』はただの挨拶ではない。それは想いを込めてこそ成り立つことば。
誰もに死が絶対的に約束されている。
生きられることは当たり前ではない。