Carne de porco à alentejana(豚とアサリのアレンテージョ風)
バンドでポルトガルへのツアーは都合三回行っている。俺が料理を楽しめるようになったのも、ポルトガル語を覚えたのも、ポルトガルの飯と酒、人や風土が本当に気に入って、ネットでレシピを検索して自分で気に入った料理の再現をするようになったから(ブラジルにはそのあと通うようになったんです)。その中でもこの料理は特にお気に入りであります。豚肉にパプリカ味噌の味付け、そして香菜の香りが最高に異国情緒。。。 のようでいて、ガッツリ効いたあさり出汁が日本人の心も鷲掴んでくれる事請け合い。
ざっくりレシピ以下に!
<材料>
・豚肉 一人前=200gくらいとして分量書きます↓
※本場では肩ロースやロースあたりの肉が多いが、モモやヒレであっさり目に作るのもオススメ!
・massa de pimentão (なければパプリカペーストかパウダー)大さじ1
・アサリ 殻付きで豚肉の3/2くらいの分量がちょうどいい気がします
・香菜 適当...多めが美味しいと思う
・じゃがいも 炭水化物が好きな人は沢山揚げましょう
・にんにく 一片
・白ワイン 30cc
・塩 massa を使う場合はひとつまみ、ない場合は小さじ半分
massa de pimentão (マッサ デ ピメンタォン ドス)というのはポルトガル南部の塩気の強いパプリカペーストで調味料として使われます。俺はツアーの度にまとめ買いしてくるか、あちらから日本に来る友人などに買ってきてもらう。今の所切らしたことはないので自作したことはないけれど、なければ市販のパプリカを塩とオリーブオイルとミキサーにかけて即席ペーストを作るか... パプリカパウダーと塩を使えばいいでしょう。
さて、豚とアサリのアレンテージョ風の作り方ですが
【手順】
①パン/鍋にオリーブオイルを引いて刻んだニンニクを入れ熱し香りを出す。②別の鍋で適当な大きさに切ったジャガイモを油で揚げておく。
③豚肉を適当な大きさに切って、表面を焼く。
④焼きつつマッサ(あるいは塩とパプリカパウダー)で味をつける。
⑤ざっと洗って砂抜きしてあるアサリを投入。
⑥ザッと白ワインをかけてパン/鍋にフタをしてしばし待つ。(1分くらい)
⑦揚げた芋を皿に敷いて、その上にパン/鍋の中身を盛りつける。
⑧刻んだ香菜を盛りつける。
こんなところ。muito simples ! 我が家ではブラックオリーブや刻んだパプリカ(黄色が映える)を一緒に炒めたり、少しレモンを絞ったりするのも喜ばれる。
白ワインか、可能なら冷えたvinho verde(ポルトガル名産の微発泡の緑ワイン)があれば最高。とか言いつつ、私は最近ポルトガルビールのSAGRESと楽しみました。
carne de porco à Alentejana(豚とアサリのアレンテージョ風)というのが正式名称っぽいけども、単にporco de Alentejo(アレンテージョの豚)でも通じる気がする。「アレンテージョ」というのはポルトガルの首都リスボンを流れる大河、テージョ川の南対岸、のどかな郊外〜農村/漁港地域のこと。地価も生活費も安いのでリスボンのベッドタウン的に住む人も多いし、移民も多い。俺の友人のミュージシャンなんかも多く住んでいる。そして、素朴で独特な歌や芸能の宝庫でもあります。ポルトガルの音楽はファドやメタル(!?)だけじゃないんだよ!
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そういえば一度、バンドでリスボンのフェスティバルに出演した後にアレンテージョ域に隣接するセトゥーバルという街の人気バー&レストランでライブを行ったことがある(大きなフェスの合間に小さなギグを入れ込む形でバンドのツアーというのは成立するのです)。オシャレに美味しいタイ料理を食べられて、野外スペースでイケてるインディーバンドの演奏やDJプレイを楽しめる地元の人気スポット。オシャレな女の子も多くて凄く雰囲気が良かった。
そのギグの日は経費削減のためにお店のブッキングをやっていた兄ちゃんたちの住む築百年以上のボロ...いや極めてレトロなアパートに泊めてもらったのだが、殆どスクワッターみたいな生活で、なかなか楽しかった。俺が意気投合した青年はベラルーシ出身の移民で(モザンビークやアンゴラ、あるいはカーボヴェルデやチモール出身の移民が多いポルトガルでは珍しい)同居の仲間は地元のジャーナリスト志望者やミュージシャン志望者。店に来ていた観光客の女の子を部屋に引っ張り込んだりしてワイワイ楽しくやっていた。
その中でジャーナリスト志望の若者は熱心な共産主義者でマオイストだった。意外と知られていないが、ポルトガル南部では伝統的に共産党への支持が非常に強い。1974.4.25に行なわれた独裁政権打倒の革命(Revolução dos Cravos="カーネーション革命"と言われる、ほぼ無血の革命)以降、南部の農村地帯は党の指導によって小作人の解放が行なわれて来たためだそうだ。実際毎年、共産党主宰の大きなフェスティバルも開催されて(結構若者にも人気)、友人のミュージシャンも沢山出演している。
家のキッチンにもEstaline=スターリンの「o mterialismo dialéctico e o mterialismo histórico=弁証法的唯物論と史的唯物論」や毛沢東の「contra o liberalismo=自由主義との闘争」といった著書が、なぜか新約聖書と共に...
ソ連崩壊後も依然としてコミュニズムの支持が高いのは、先に述べた農村部の解放を共産党が行なって来た実績や、セーフティネットの整備や再分配への働きかけをしたり、人工中絶の合法化(ポルトガルでは現在も違法)を問う国民投票を実現させる等、所謂「労働者階級」に向けてかなり実際的な取り組みを行なっている事がある様だ。うんうん、左派政党てのはそうじゃなきゃならん。
いわゆる農村地方のある種の解放を土着風俗とアメリカ万歳的な自由主義の悪魔合体(失礼)で、自民党主導で行って来た日本とはだいぶ違う。わが国では結局共産主義は育ちのいい都市部インテリや文化人家系の青春の解放でしかなかった面はあると思う。(地方に目を向けるときは決まって「ロハス」的な視点から勝手に都市部の理想を田舎に押し付ける様なものばかりだ...)
伝統的に、日本の田舎では左派思想は嫌われるでしょう。そういうことを言うインテリはだいたい都市部に出て行って地元に利益誘導はしてくれないのだから。俺は地場産業のある山間部の田舎の、中小工場経営の家系で唯一のインテリ系?(異論は認める)として育ったので、そんな感じは肌でわかる。
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セトゥーバルでのライブ後、店でそのまま飲んで騒いでいたのだが、トイレの壁にドイツのメルケル首相の写真が飾られていたのが印象的だ。... ピンで刺したり、ひどい落書きをして皆でウサを晴らしているらしかった。笑
EUを一つの国と捉えれば...ドイツは都市部、ポルトガルは丸ごと辺境の農村漁村だ。左派リベラルの星、メルケルも社会の末端部では緊縮財政を推し進める悪魔である。バラマキ、地方への(ズブズブの癒着込みの)利益誘導を合理的に引き締めていくと、結局利益は一曲に集中し始める。ヨーロッパもなかなか大変だ。
ま、なんにせよ、そうした話でもご機嫌なランチを取りながらゆったり話せてしまうのがポルトガル、アレンテージョ地方の素晴らしさだな。
ああsaudades... (写真はリスボン、アルファマですが)
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