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海が香る、あの街に似てる。
もちろん、今住んでいる街も好きだ。
ただなんとなく「別の種類の好き」な街、それが藤沢。
大学生になった時、横浜市内のキャンパスに通いやすくて、どことなく空気が肌に合いそうな街として選んだのが、藤沢だった。
最初に住んだ最寄駅のそばに、顔馴染みのケーキ屋さんができた。「藤沢の母」を名乗ってくれるくらい、仲良くなった。
当時はまだマルイがあって、映画館もたくさんあった。
江ノ電はそんなに乗らなかったけど、でもあることが嬉しかった。
駅前のミスドやベッカーズやサブウェイで親友と朝ご飯を食べ、松屋やスタバで夜閉店まで粘った。それでも喋り足りなくて藤沢駅のベンチで終電までしゃべり、藤沢本町駅をあえて乗り過ごし、親友の家がある隣駅までしゃべり、下りの最終電車に飛び乗って帰った。
一体何をそんなに喋ることがあったのか、我ながら謎だ。
その謎なところが、なんとも青春っぽい。
藤沢の家に友達が8〜9人くらい泊まりに来て、難民キャンプみたいになったのも、青春っぽい。あんまり溜まり場にならないようにとキャンパスと逆方向の家にしたのに、一週間泊まる子とかいた。ザ・青春。
年に数回、自転車を漕いで江ノ島まで行った。同じ市内とはいえ、それなりに時間はかかった。でも、自転車で海に行くという行為が好きだった。
海を前にすると、考え事をしたくて来たのに、何も考えられなくなって、でもそれで帰る時には、頭の中がクリアになってた。
大学時代一回引っ越しをしたけど、それは小田急線の藤沢本町駅→藤沢駅という、たった一駅分の移動だった。それだけ、心地よい場所だった。
就職して藤沢から渋谷に通ったけど、毎日終電の生活だと藤沢は遠くて、仕事を早く切り上げざるを得ないのが難しくて、3ヶ月で引っ越すことになった。
多分、江ノ島以外は観光ではなく生活とショッピングの街だ、藤沢は。でも、会いたい人がいたり、歩くだけで楽しくて、引っ越してからも何回も行った。あの街に行くだけで、無性に楽しい。
あの時から薄々気づいていた。
「この街は、新潟に似ている」
関東の人が聞いたら「そんな田舎じゃない!」と言われそうだけど、ちょこっとデパートがあって、映画館があって、ターミナル駅があって、海があって、都心ほどゴミゴミもあくせくもしていない柔らかい空気が流れてて…。
「別の種類の好き」と書いたけど、「限りなく近い好き」なのかもしれない。
あれから20年が経った。
流石に、長く足が遠のいてしまった。
でも、まだ私はあの街を心から楽しめる根拠のない自信がある。
変わっていたとしても、それもまた楽しい。