見出し画像

法人カードもバーティカル化?トラック向け法人カード×SaaSのCoastを纏めてみた

i-nest capitalの濱吉です。

今回は、トラック向け法人カード×SaaSで事業展開をしているCoastについて纏めてみました。

Coastの概要:
・地域:米国
・設立:2020年
・総調達額:3,350万ドル
・投資家:Accel、Insight Partners、BoxGroupなど

スクリーンショット 2022-03-10 12.07.49

事業ストーリー:

サイモンは、Coastが初めての起業ではなく、Coastの設立以前はtoC向けBNPLのBread(Breadは、Alliance Data Systemsに5億ドル超で2020年に買収されている企業)を共同設立していました。その後に元Lyftの幹部であるAndrew Woolfとコロナが大流行している時にCoastの事業を開始しました。経済活動を維持するために必要な最前線の労働者である物流やモバイルワークフォースに大きな負荷がかかっていた時期でした。コロナ期間にECの需要が急加速し、トラック運転手、配達員などの稼働も一気に多くなり、世の中がこれらの労働者をますます必要とするようになったため、彼らのコミュニティのニーズと問題点がより一層見えてきたのが事業を始めたキッカケだそうです。

サイモンが目指したのは、モバイルワーカーのワークライフを向上させ、雇用主のビジネスの繁栄に貢献するビジネスを構築することでした。そんな中サイモンは、フィンテック業界が盛り上がる中、フィンテック分野の中でも特に注目されていない、プレイヤーがいない艦隊、航空機、船舶、車両などのフリート領域にチャンスがあることに気付きました。また、マーケットも非常に大きく経済にとって不可欠でありながら、まだ十分なサービスが提供されていないことに。

市場概要:

商用車における可視化の必要性:
近年、Ramp、Brex、Divvyなど、企業が従業員に職務上の経費をコーポレートカードで支払わせる方法を簡単に提供する企業が登場しています。しかし、職務上の経費や普段の業務で必要になってくる資金用途は業界ごとに異なってきます。例えばトラック運送業、配管工、造園作業員、スクールバス運転手、HVAC設置業者などを中心としたフリート領域はまさに異なった特殊なニーズを持っている領域です。メンテナンス、トラック運転手などは、ガソリンの購入以外で出費することは、基本的に無いに等しく、一般的なコーポレートカードを従業員に持たせたくない、持たせる必要がない企業がほとんどを占めていると思われます。例えば、個人所有の車ではなく会社のトラックのためにガソリンを購入したり、ガソリンスタンドのコンビニで他の買い物をせずに給油を行うなど、許可された取引のみを承認/管理するためのツールが必要です。

一方でこの数年、この課題を解決するべく、フリート業界向けにカスタマイズ決済ソリューションを提供する企業も現れています。これらの企業は、フリートオーナーや管理者に、管理、セキュリティ、可視性などの機能を備えたツールを提供しています。例えば、特定のグレードの燃料だけを購入するように制限したり、車両ごとに経費を追跡したりすることが可能なツールです。

これらのプリペイドカードでのフリート燃料の支払いは、米国では年間1,200億ドルという額にのぼりとんでもない大きさのマーケットが存在しています。また、商用車セグメントは、Over the Road セグメントと比較して、世界の燃料カード市場で大きなシェアを占めていくと予想されており、商用車セグメントは、2030年までに2兆1,000億ドル以上の機会増が予測されています。一般道向け燃料カード市場の成長が鈍いのは、デジタル化のメリットに関する認識が低いことと、エンドユーザーの間でカードのスキミングに対する懸念が高まっていることが影響しているそうです。
<参考:世界のフリートカードの市場規模>

画像2

この市場は3つの既存企業(FleetcorやWexなど)によって支配されており、その合計額は3社合わせて400億ドル以上と言われていますが、これらの企業から提供されるプロダクトに多くの顧客は不満が大きくなっています。というのも顧客は、既存企業の売上、組織拡大が起こっているのに対し、その拡大した企業に対してのニーズの機能アップデートや顧客の声に対し、かけ離れた製品を提供していたり、さらに酷いのはユーザーから可能な限りのドルを引き出そうとする隠れた手数料を請求されることも多々あるそうです。しかし、Stripe、Marqeta、Lithicなどの最新の発行プラットフォームが登場し、POSで利用できるデータが増えたことで、オープンループ・ネットワークの上にこの機能を構築することが技術的に可能になり、この差別化は失われつつあります。

フリート領域の課題:

使いにくい決済ソリューション:
顧客は、既存のソリューションが従業員と運行管理者の両方にとって苦痛であると訴えており、既存のフリートカードの多くは、既存企業が構築した独自の自社の燃料カードが使えるガソリンスタンドのみで動作するため、ドライバーは貴重な時間を無駄にします。また、燃料ポンプで取引の承認に必要なあらゆる種類の識別情報を前もって入力しなければならず、ソフトウェアのUIも操作しにくいもの。その為顧客は直感的で使いやすいペイメントソフトウェアを求めていました。

サイロ化され、分離された支払いデータ:
会計プラットフォーム、経費報告、車両テレマティクス、車両ソフトウェアに決済をシンプルかつ直感的に接続することができなければ、車両の支出情報を管理するのに苦労。フリート領域は、従業員と車両の決済を他の業務とシームレスに統合する必要がありました。

隠れた手数料や理解しにくい条件による、肥大化したコスト構造:
既存の商品には、高額な隠れた手数料や理解しにくい用語が多く存在しており、これらは、消費者やVCが支援する新興企業にとって、公正さと透明性の先駆者であるフィンテック・ビジネスの製品とは似ても似つかぬものです。中小企業にとって何千ドルにもなる隠れた手数料は、フリート決済では当たり前のことであり、既存企業が製品にイノベーションをもたらすことができなかったという事実がそれに拍車をかけているのです。フリート領域には、公正で透明性の高いフィンテックサービスが必要なのです。

プロダクト:

新しいフリートペイメント:
Coastは、こういったフリートニーズに対応するため、フリート燃料決済のための法人カード&管理SaaSを開発。Coastはシンプルで使いやすいチャージカードで、Visaと提携しVisa Fleetカード・プログラムを開始したことによりCoast Visa Fleetカード所有者はVisaが利用できる北米の加盟店で支払いが可能となっています。その為Visaが使えるところならどこでも使え、フリートオーナーやドライバーは仕事で行く先々で効率的に、車に燃料を補給することができます。ドライバーはCoastカードを使って、1ヶ月間、ガソリンスタンドやその他の車関係のお店で買い物をします。そしてフリート・マネージャーは、アメリカン・エキスプレスのチャージカードと同じように、月末に利用明細を全額支払う仕組みとなっています。

より良いデータ:
Coastは、ガソリンスタンドで購入した商品の詳細な明細データを取得し、Coastプラットフォーム内で特定の車両やドライバーと照合することで、社用車に対して明確な報告と可視性のデータの接続機能を提供。また、管理者はそのデータを車両のテレマティクス、会計システム、ERPなどに接続することも可能のため、更にこれまで行っていた作業が効率化されます。

管理:
Coastは社用車がカードを必要とする際に、きめ細かなコントロール機能を提供。フリート管理者は使用限度額の設定、カードの発行、支払いの承認などを数秒で行うことが可能です。また、オペレーターは、車両がいつどこで使用されているかを確認し、疑わしい取引に関するアラートを受け取り、Coastのダッシュボードでワンクリックでカードを凍結することができるため、購入を燃料のみ、または特定のカテゴリーの商品に限定することができ、特定の人物や車両に異なるポリシーを適用し、不正請求や無駄な支出を検出・回避することもできます。Coastの支出管理ソフトウェアプラットフォームはどこからでもアクセスでき、事業主は制御を設定し、各ドライバーと車両について、誰が、何を、どこで購入したかについて、把握することができます。経営者は、不正請求や他のソリューションで請求される高額な隠れた手数料を心配することがなくなります。

公正で透明性の高い価格設定:
Coastはサブスク価格で提供し、従業員一人当たり毎月2ドルを支払うモデル。ガソリンの管理費、取引手数料、電子決済手数料、電話決済手数料、小切手処理手数料(日本では発生しない)、ガソリン安売りサーチャージ、非アクティブカード手数料、報告手数料、最低管理費、ポータルアクセス料などはかかりません。また、未払い残高が多くなったとしても従来のように高額な遅延損害金を請求することもなく、顧客としては安心できます。

まとめ:

今回は、法人カード×バーティカルSaaSを提供しているCoastについて簡単ではありますが纏めてみました。以下まとめになります。

・プリペイドカードでのフリート燃料の支払いは、米国では年間1,200億ドルという額にのぼりとんでもない大きさのマーケットが存在
・しかし、この市場は3つの既存企業(FleetcorやWexなど)によって支配されており、その合計額は3社合わせて400億ドル以上
・ただ顧客目線では大きなペインが存在しており、Stripe、Marqeta、Lithicなどの最新の発行プラットフォームが普及し、POSで利用できるデータが増えたことで技術的的にも可能になりタイミングとしても今だった

最近、Brex,Ramp,Divvy(Bill.comに買収),Claraなど様々な法人カードプレイヤーが誕生していますが、こういったバーティカル法人カードのアプローチも非常に面白いと感じていますし、バーティカルSaaSでの初手のアプローチとしてもカード手数料での軸で利益を出すのではなく、SaaSツール軸で利益を出していく長期的な経営アプローチとしても面白いなと思いました。
バーティカルSaaSで事業をされようとしている方にとって一つの参考になれば嬉しいです。


いいなと思ったら応援しよう!