リスキリングの違和感
2022年の末頃だったと思う。
「リスキリング」という単語を政府が口にした。
また、同時に今後はリスキリング関連に1兆円の予算をつけると口にした。
そして、リスキリングという単語が流行った。
2024年現在、もはや殆ど聞かなくなった。
私は「リスキリング」という単語に、当初から違和感を持っていた。
今回はこの辺りについて書き綴っていく。
勉強する人、しない人
私は、そもそもリスキリングなどという単語をわざわざ持ち出すことに違和感がある。
「勉強する人」は、普段から勉強しており、RE(リ)という一文字が意味を成さない。
逆に「勉強しない人」は、よほどのことがない限り、勉強をはじめることがない。
私が直接見たわけではないが、総務省の2016年の調査結果によると…
・日本の社会人の平均勉強時間は1日6分
・勉強を全くしない人は約半数
何をもって「勉強」とするのかは疑問だが。
とにかく、このベースがあって、リスキリングを政府が叫んだところで、焼け石に水だ。
――― 勉強しない人に勉強をさせる
これがどれだけ難しいことかは、義務教育の教師と経営者は、痛いほどよく知っているはずだ。
何を勉強するのか?
普段から勉強している人には、3種類の学習感覚があると思う。
1.自分の仕事に必要なスキルを身につける勉強
2.関連分野を理解しておくための勉強
3.幅広く教養を高めるための勉強
そして、若い頃は1を中心に勉強する。
次に、2も勉強しておこうと考える。
やがて、勉強するべきことが簡単には見つからなくなり、何かのヒントを求めて3を勉強するようになる。
さて、リスキリングとは、どこから勉強をはじめれば良いのか?
REが付くくらいだから、1なのだろうか?
もしくは、全く新しい分野の勉強でもはじめるのだろうか?
勉強の順番
私には、勉強には順番がある気がしている。
それは以下の通り。
1.一つの専門分野を突き詰める
2.専門に関わる副次的な分野をフォローする
3.多岐に渡る分野をカバーする
まず、何も専門を持っていない人は、学習をする時に不利だ。
一つのことを、貪欲に追及した経験がない。
そして、自分の視点、発想に基軸がないことが多い。
逆に、一つのことを貪欲に追求した人は、有利だ。
他の専門分野の人とも、会話、意思疎通、価値観の共有がスムーズだ。
どんな分野でも、追及の過程で得た「気づき」というのは、共有するところが多い。
これを持っているか、持っていないかで、他の分野を理解する能力が大きく変わって来る。
私の経験上、1を経た人は、かなりの確率で2まで進む。
しかも、驚くほど深くまで副次的分野をフォローしていることが多い。
1と2を超えると、3がいよいよ勉強の効果を発揮する。
今まで、点だらけだった考え方や価値観が一本の線となって繋がるケースが増えるからだ。
視野は広がり、視点も増える。
このレベルまで来た人は、何をやってもある程度の成果を出せてしまう嫌味な人が多い。
だから、謙遜する人が多い。
結局、リスキリングとは?
まだ自分の基軸が定まっていない人が、一つ専門分野を追求することだと思う。
既に基軸が定まっている人が、その後、自分が勉強すべきことが分からないとは思いにくい。
そして、そんな人にリスキリングが必要な気がしない。
ようやくリスキリングの「違和感」の正体が分かった気がする。
・実質的に、まだ何の専門でもない人
・普段、勉強しない人
・そんな人が重い腰を上げて勉強をはじめるのか?
上記のどうしようもならない感覚が違和感の正体だったのだと思う。
――― リスキリングとは、重い腰を上げさせること
これが本質なのかもしれない。
そこへ国の予算が1兆円。
大変有難いことである。
このまま単語ごと消えてなくならないことを祈る。