社会保険料の削減ビジネスの勧め
ネットの中には「マイクロ法人をつくって節税」というスキームをやたらと勧める税理士がいる。
芸能人やプロ野球選手でいうところの「資産管理会社」だ。
さらに、最近は「社会保険料の削減」というスキームが流行っているように思える。
今回は、このスキームについて書き綴っていく。
社会保険料削減コンサルタントの誘い
私は、仕事で出張した時には、必ずその地域の繁華街へ顔を出す。
そして、人気がありそうな店へ入る。
その時々でどんなものが市場から好まれているかを知りたい。
店側がどんな工夫をしているのかを見たい。
ある日、名古屋へ出張した時に入った居酒屋がある。
徹底した業務効率化がされており、その結果、スタッフは笑顔で緩くマイペースに働いていた。
この店は伸びるだろうな、と感じた。
その数か月後、その店のFC本部から、FC紹介エージェントを通して連絡があった。
「FCに加盟して、店を出さないか?」というもの。
もちろん、ただの偶然だ。
その居酒屋のFCに加盟する気はなかった。
しかし、それを伝えた上で「店舗の見学会」に誘われたので参加した。
店舗の見学に加え、FC制度の説明があった。
よく考えられた店舗、FCシステムだった。
見学会の後、FC紹介エージェントと話をした。
さきほどの居酒屋FCの他、最近はどんなFCがあるのか聞いてみた。
そこで登場したのが「社会保険料の削減」というスキームをビジネスにしたFCだった。
つまり、「社会保険料削減コンサルタント」をFC化して展開しているということになる。
何だか怪しい予感がしたが、それよりも好奇心が勝って、エージェントにそのFC本部の紹介をお願いした。
すると次の日、早速「社会保険料削減コンサルタントの誘い」が来た。
社会保険料削減のスキーム
単純な話だった。
「給料を極端に少なく」して「賞与を極端に多くする」というもの。
賞与に対しての社会保険料は、限界値が低いので、その分の社会保険料を削減できるというスキーム。
たしかに、合理的と言えば合理的だ。
私には「節税」と「脱税」の境目にあるスキームに思える。
もちろん、違法ではないはずだ。
いくら社会保険料が高いからと言って、そんなスキームを利用してまで削減するべき事なのだろうか?
正直、疑問に思った。
同時に、本当に社会保険料削減ビジネスは、ビジネスとして成り立っているのだろうか?
もしかしたら、FC本部はFC加盟者の営業力だけを期待して、FC展開をしているのではないか?
いろいろな疑問が浮かんだ。
なぜなら、社会保険料削減スキームの弱点も同時に考えたからだ。
このスキームの弱点
以下の通り。
1.すぐに真似できる
2.年金に影響する
3.退職金に影響する
4.役員の賞与は取り扱いが難しい
5.法の穴が埋められる
まず、このスキームはすぐに真似できる。
そもそも、税理士に相談すれば、それで済む程度だ。
これがFCとして成り立ち続けるのか怪しい。
社会保険料を削減するということは、将来にもらえる年金の額が減るということだ。
これを理解していない場合、要注意。
賞与の分、給与を減らすということは、退職金として認められる金額も減ることになる。
退職金は、給与をベースとして認められる金額が算出されるからだ。
このスキームは、実質的に経営者向けになるはずだ。
毎月の給与を極端に少なくすることを一般社員は望まないからだ。
そして、経営者の賞与は扱いが難しい。
役員賞与は、簡単に自由に金額を決められるものではなく、きちんと事前に役所へ申請をしなければならない。
つまり、その時の会社の利益に合わせて、役員賞与の額を決めることはできないということだ
これができたら、利益の全額を役員賞与として個人へ還元できてしまうため、役所はそれを禁止している。
また、一度申請した役員賞与は、その通りに実行しなければならない。
取り消すのであれば、再び役所へ申請をする必要がある。
これらの申請を他っておくと、思わぬ税金を余分に収めることになり、本末転倒だ。
そして、何よりも、このスキームはおそらく消える。
法の穴は、”おいた” が過ぎれば、埋められる。