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無料相談は自己満足

私はビジネスにおいて「無料相談」をやらない。
それどころか「見積無料」とも言わない。
昔はやっていたが、それはただの自己満足だと気付いた。
今回はこの辺りについて書き綴っていく。


無料相談に来る人

最初に結論を言ってしまおう。
「無料相談」に来る人は、顧客になる可能性が極めて低い。
業種にもよるが、おおよその業種でそうであると思う。

もちろん、定形化して商品化されたサービスであれば「無料相談」や「無料体験」は有効だろう。
しかし、「無形の知識を提供する」という場合は、これに全く当てはまらない。

無料相談人は、いろいろな会社の無料相談にお世話になる。
そして、そもそも相談と言う行為に対して、金を払う気が無い。

本来、「知識を提供する」と言う行為は、立派な仕事である。
そこに報酬が発生するのは自然なことだ。

恐ろしいことに、無料相談人は、新たな無料相談人を呼ぶ。
無料相談へ行った評判を撒くのだから、当然だ。
放置しておくと、無料相談の数が加速度的に増えていく。
そうなると、成果の薄い活動に対して、時間を溶かすことになる。

――― 無料相談は、甘え

無料相談へ行く人だけでなく、無料相談に下心を込めている提供側も同じだ。

電話やメッセージで勝手に無料相談会を開催させようとする人もいる。
例えば、知人の弁護士に電話して、平気で法律相談をするような人だ。
弁護士としては、それに付き合っていたら、キリがない。

実際、弁護士は所属団体の会員名簿に携帯電話番号を載せない人が多い。
これは、職業上、恨みを買うことがあるという点と、先述した理由のためだと知人の弁護士から聞いた。

無形のモノは無料だと言う勘違い

ピカソのエピソードは有名だ。
しかし、もっと身近な例を挙げてみる。

随分前だが、自動車をインロックして中に入れなくなった人がいる。
ロードサービスへ連絡して、自動車のドアのカギを開けてもらうことにしたそうだ。
ロードサービスの作業者は、ものの5分で鍵を開けたらしい。
その時のことを彼はこういった。

――― 5分の作業で1万円ほど盗られた

昔の事、昔の車なので、特殊な工具でロックスイッチを物理的に動かす解錠だったと思う。
それに慣れたプロなら、5分で完了したのも頷ける。

ただ、そのプロは、その技術を獲得するのに時間を掛けて努力をしたはずだ。
駆けつけた道を往復する時間も掛かる。
支払った1万円は、時給換算のバイト代ではなく、売上だ。
そこには、いろいろな経費が含まれている。
私には、1万円が高いとは到底思えない。

さて、この時点で「知識を提供する仕事」を行っている人は、自分の過去を思い出して苛立っているかもしれない。
それも、そのはず。
おそらく「知識を提供する仕事」をしている人は、全員同じような経験をしたことがあるはずだ。
その苛立ちが苦しいほど理解できるはず。

――― それでも無料相談をやっていないか?

他の会社はやっているから
無料相談を止めると新規顧客が来ない気がするから
何となくずっとやってきているから

――― そんな理由で無料相談を続ける?

それは、CSR活動もしくは自己満足に近い。
もちろん、そうだというなら、全く問題はない。

報酬が発生すると伝えると…

無料相談を続けるか迷っている人は、無料相談を求める人にこう言ってみると良い。

――― これ以上は報酬が発生します

言ってみればすぐ分かる。
おおよその御方は、一目散に、お引き取りなされる。

私の場合、軽いノリで見積を求めて来る人にも同じことを言う。
私の業種の場合、見積をするということは、開発するモノを設計することと同義だからだ。
概算見積でも、概算の設計が必要になる。
正式な見積を出す頃には、設計は殆ど終わっていることになる。

――― 見積を作成するまでの費用を見てくれますか?

軽いノリで見積を要求する人は、この言葉で撃退する。
こうかは ばつぐんだ!

もちろん、私は相談料や見積料が欲しいわけではない。
既に取引が始まった顧客から、それらを貰うことはない。
顧客でなくとも、実際に相談料や見積料を請求したことはない。
ただ、名も知らない無料相談人や親しくもない見積収集人に、無駄に奪われる時間が惜しいだけだ。

知人からの電話でも、徹底的に無料相談を撃退するようにしている。
一時期は、1日に数本の無料相談電話が掛かってきていたことがある。
ここまで来ると、さすがに業務に支障が出る。
本来は、この時間を既存顧客のために活用するべきだ。

今は、よほど親しい人でない限り、塩対応をする。
気にすることはない。

――― ちょっと犬小屋を建ててくれないか?無料で。

大工へそんなことを言う人はいないだろう。
しかし、無形のモノに対しては、その限りではない。

――― ちょっと〇〇するだけでしょ?

そう言って来る人は、五万といる。

私は、こういった人がまだまだ多いことに憂いを感じている。
もし、まだ順調に搾取されて苛立っている人がいたら、勇気を持って立ち上がって欲しい。
きっと、幸せになれる。


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