【超番外編】若旦那が伊豆の山奥の宗教施設で半日以上軟禁された話~その2~
※その1はこちらから。
そんなこんなで、あっという間に伊豆デート(?)の日がやってきました。
突然連絡が来て、あれよあれよで学生時代の女友達姉妹と伊豆までドライブが決まり、酒池肉林(妄想)が待ってる…!なんて流れは普通に考えれば怪しさしかないんですが、完全に浮かれてる若旦那は何を期待してか、朝からシャワー浴びて身ぎれいにして正座待機中…!
そしてついに自宅までお迎えの車が。おっさんが乗るような国産セダンに乗ってきた女友達に若干の違和感を感じつつ、妹さんとも初対面。うん、悪くない。
女友達の手慣れた運転で東名道に乗り、まずは小田原あたり(うろ覚え)の海が見えるお寿司屋さんで少し早めのランチタイム。
「運転は帰りも私がするから、お酒飲みたかったら飲んじゃってー!」
と甘いささやき。
(若旦那はそこまでお酒好きではないので飲まなかったけど、今思えば、これも判断力を鈍らせるための布石だったのではなかろうか…。)
食事をして楽しいひと時を過ごし、じゃあおみくじ引きに行こうか!ということで再び車に乗り込み、下道でズイズイ山奥に…。
何もない渓流沿いの山道を延々と走り続け、ずいぶん山奥に行くんだなぁ…と思っていたら、突如現れる巨大な鳥居。そしてその奥にはひときわ異彩を放つパステルカラーの仏像が立ち並ぶ。姉妹は慣れた様子で駐車場に車を止め、境内に案内されます。
パステルカラーの仏像だけではなく、天使的な像もあったりと、その場の違和感をバリバリに感じた若旦那は「なんすかwここはwwwピンクの仏像とか、やばくない?」的な感じで姉妹に聞いてみたのですが、「神様もカラフルなのが好きだからさ!この方がさみしくないし、楽しいでしょ?」と何当たり前のこと聞いてんの?位の勢いで返され、まぁそんなもんなのか…と錯覚させられ。
その後は大量のパステルカラーの怪しい粗製仏像たちを眺めつつ、鳥居の奥の本殿?の方に行っておみくじを引き、特に心に残らないおみくじの内容を確かめつつ、さらに本殿の奥まで並ぶ仏像たちをダラダラ見物。
この時点で若旦那のテンションも少しずつ下がってきていますが、帰りに立ち寄るであろう混浴温泉()を想像して気持ちを奮い立たせます。
「歩き疲れたよね?お茶でも飲もうか?」と案内されるがまま、鳥居の横にある掘っ建て小屋同様の小汚い喫茶スペースにイン。
4人掛けテーブルで若旦那の正面に女友達が、隣の席に妹が着席。少し妹との距離感が近づいている気がして、『温泉の前にこの距離感は…!!』と若旦那は少しソワソワします。
そしてここからが本番!地獄のジェットコースターの始まりです…!
お茶を飲みつつ、3人で「おみくじ何が書いてあった?」「帰りどこに寄ろうか」などと他愛のない話をしていると、他の席に陣取っていたオッサンやオバサンたちが一人、また一人と距離を詰めてきます。
そのたびに、姉妹からは「この人は〇〇さんって言って、ここに通い始めてから病気が治ってー」「不良だった息子さんが更生してー」「借金まみれだった事業がうまくいくようになってー」などのショートストーリーを交えつつ紹介されます。
そうやって30分ほど経つ頃には、若旦那たちが座る4人掛けテーブルの周囲に十数人ほどの人垣が…。正面、サイド、背後と囲まれ、椅子に座ったままの若旦那はまともに身動きできない状態に。ほとばしる違和感。
そうやって、若旦那を中心に密集陣形が出来上がったタイミングで、正面に座る女友達と、隣に座る妹は突如目をギラリ輝かせる。
「でさ、ここからが大事な話なんだけどね」
と、その宗教施設のパンフレットをテーブルいっぱいに拡げられ、周囲の人垣の方々も時折合いの手を入れらがら、この宗教施設がどれだけ素晴らしいかを滔々と語り始めます。
「…くっ…やられた!!!」
違和感は一気にレッドゾーンに突入。いろいろな欲に惑わされ警戒心0のままこんな山奥にノコノコとついてきた若旦那でもさすがに気付くレベルの危険な状況です。
激しく後悔するも、女友達の車で来たことにより移動手段は無く、当時使っていたKDDIの携帯は山奥で電波も届かず、まさに生殺与奪の権を他人に握られた状況。この状況で殺されて埋められても口裏合わせられれば目撃者0。義勇さんに全力でぶん殴られるレベルです。
そして、信者十数人に囲まれたまま2時間ほどが経過。その全員が、熱い言葉でかわるがわる入信を勧めてきます。
それでも、トップ営業マンとして普段から口八丁手八丁で初めて会う目の前の中小企業社長に高額なオフィス機器を売りまくってきた若旦那の営業スキルをフルに発揮し、相手の怒りを買わぬような絶妙の匙加減で、のらりくらりと入信勧誘の被弾を避け続けます。
「これは長期戦になるな…」互いにそう認識し始めたであろうその刹那、突如目の前の姉妹含む信者全員が息をのみ、訪れる束の間の静寂…。
それまで全身全霊で勧誘していた若旦那の存在が空気にでもなったかのように総立ちになり、窓の外の黒塗りの高級車に全員の視線が集中…!
ざわつく信者たちの口から漏れたその言葉に、若旦那は耳を疑う…!
『大天狗様あぁぁぁ…!!!』
次回、【大天狗様】お楽しみに!
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