Every Vow You Break by Peter Swanson よむよむ
きっともうすぐ邦訳版が出ると思って楽しみにしているけれどまだ出ていない。洋書だってスワンソン作品読むためなら突き進むのである。出版社はハーパー・コリンズ。献辞はたぶん奥様。装幀はエルシー・ライオンズ(Elsie Lyons)装幀の文字のレタリングはジョエル・ホランド(Joel Holland)。アメリカの本には帯ってみたことないけれど、表紙に宣伝文句が印刷されてしまっている(特にペーパーバック)。この本の場合はオプラ・マガジンのレビューとして「ヒッチコック風のスリルとかっこよさ!」的な文句が書いてある。私は映画を見るのが苦手なので、ヒッチコックのことはよくわからない。でもヒッチコックといえばハイスミスの映画が有名なのかな。つまりハイスミス風ということなのか。
タイトルはこれはポリスの「見つめていたい」(Every Breath You Take)っていう有名な歌の歌詞から取られている(以外に考えられない)。この歌は主人公の二人、ブルース・ラムとアビゲイル・バスキンの結婚式のパーティーで演奏されている。この歌はスティングがラブソング作ったつもりだったけど、無意識的に(リアル…)監視と管理をテーマにもなってしまった歌らしい。スティングのCDアルバムを買うとスティングの解説と歌詞和訳がついているみたいなので本当はそれを参照したい。「君が破るあらゆる誓い」的なタイトルになるのでしょうか。読後に怖がりながら聞くのに最適です。
この本は今までの本と異質な部分があると思う。つまり今までの犯人は人間らしいところもあってけれども暴かれる暗闇、みたいな感じだったのだけど、今回は一番そういう犯人の人間臭さが描かれてなくてその観点から見ると一番恐ろしかった。そして、クリスティの『そして誰もいなくなった』みもすごいけど、ホラー映画感もすごい。(苦手なので本物はあまりみたことがないけど)。本文にも書いてあるけど、ちょっとずつちょっとずつ、自分で自分も説得してしまうのだよね。まあこういうこともあるかと。
お話は大富豪のブルースとニューヨークでの出版社の仕事をやめて田舎に帰ろうとしていたアビゲイルが婚約し、結婚し、新婚旅行に行ってという風に展開する。アビゲイル、わかるよ、でもおかしいよ、これおかしいよ、って思いながらページをめくる手がとまらない。でも一番読むのが辛かったよ。本当にものすごく悔しかった。
すごく月並みなことを言ってしまうと、やっぱりアビゲイルには両親の愛があったんだよね。それがアビゲイルの不屈の精神につながっていると思う。離婚してるとか関係ないし、虐待もない。ここ重要だよな。
最後のAknowledgementのところに、実は何度もマーガレット・アトウッドを引用しようとしたけど、結局しなかった、と書いてある。どの作品を引用しようとしたのだろう。フェミニズム文学だと思うけど、俄然、興味がわく。たしかアトウッドの新刊は『だからダスティンは死んだ』のヘンが読もうとして、読めない作品だった。ものすごく女性蔑視のカルト的な考え方の登場人物が出てくるのでたしかにフェミニズム文学の引用ははまったかもしれないと思う。接触しそうだけど、そうではない作品同士という関係があるのかも。(ちなみに以前の献辞に登場されていたナット・ソベルさんもまたここで感謝を捧げられている)
この本には読書会のための質問が巻末に12個もついていた。ここは、スワンソンではなくて、編集の方が書いたのだろうか。ここでもマーガレット・アトウッドの引用がありました。
ふむむ…この本では女性は確かに殺されるのを恐れてるね!男性は女性に判断されることを恐れている、女性が自立した考えを持っていることを恐れている、とかかなあ。そういう意味では笑われるのを恐れているという言い方も頷けるかも。
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