『さざなみはいつも凡庸な音がする』論
どーも、まるのゐです。今回はノクチル3つ目のイベントコミュ『さざなみはいつも凡庸な音がする』の感想記事です。イベントは9月10日11時59分までの期間限定となっていますので、まだの方はお急ぎください。なお、恒例ながら本記事はネタバレ前提の構成となっていますので、イベントコミュ完走後の閲覧をお勧めいたします。
なんてゆっくりじっくりと執筆してたらイベント終わっちゃった。使おう!コミュの鍵!
ノクチル初の冠WEB番組”ノクチル成長中(仮)” 記念すべき初回の企画としてファンの投票によって選ばれた寺院に体験学習に訪れたノクチルの4人 海を見下ろすその寺院で、彼女たちはいつもと変わらない時間を過ごす ただ一人小糸だけがその胸に小さな決意を抱きながら
主人公は小糸だから!
今回のコミュを読了している皆さんは分かっているかと思うけど、今回のコミュの主人公は小糸だったのかなと。だからどうだったとか面白かった面白くなかったという話ではなくただ事実としてそう思った。では、私たちは何をもって小糸メイン、だと思ったのだろう?もちろん、イベント配布S-SSRは小糸だった。でも『天塵』は円香で、『海に出るつもりじゃなかったし』は透だったけど彼女たちがメインのお話だったか、って言われるとちょっと違うよね。あくまで今まではノクチルとしてのお話がメインで、4人は渾然一体としていたけど、今回は明確に「お、小糸がメインだな」という感覚があったわけだ。じゃあそれはって言うとひとえに、小糸だけ3人とは違うことをしていた、これに尽きるんじゃないかな。
冒頭の場面で小糸だけ遅れてきた、小糸だけ予備校に通っていた、バスの中で一人だけ起きていた、写経を一人だけやったことがあった、ジュースではなく次を求めた………エトセトラエトセトラ
といった感じで小糸だけ明確な差別化がされていたわけで、それって
成長の兆し
なのかなって思った。最初はね。でも、
ここで全部ひっくり返された。正直なんで忘れていたんだと言われても仕方がないけれどこのシーンのこの瞬間まで”小糸だけ違う中学校だった”ことを完全に忘れていて。でこのシーンを見て全て思い出した。つまり、小糸だけなんか違うねという感想がそっくりそのまま、中学時代のリフレインの様に思えたんだ。そしてそれがね、同じ表現で好転と悪化を感じさせる表現方法がね、シャニマス君お得意のミーニング、寄せては返すさざなみの一つ目のミーニングだとそう感じたんだ。
でもね、このシーンを見てシャニマス世界の住民はそんなことは思わないでしょう。なぜなら”小糸だけが違う中学校なのを知らないから”でもそれはファンが悪いんじゃなくてそもそもノクチルが閉じすぎているのが問題なような気がする。だからこそファン投票で寺院なんてのが選ばれるわけで。だって世間的に彼女たちは様々な番組をぶっ壊す破天荒なアイドルだから。そして番組のディレクターですらそう思っていた節があるよね。
でも待って欲しいよく考えると、件のWEB番組に出るまでノクチルは新進気鋭のアイドルだった時期があるわけで。幼馴染アイドルという異質感とまあ透の魔力に中てられて、ネクストアイドルになりそうだったわけだ。そしてそれは破天荒アイドルになり、そして今回普通の幼馴染アイドルに戻ろうとしてる、少なくともディレクターはそう思ったのかなあと。そしてね、これもまたさざなみのミーニングなんじゃないかなとか考えちゃうのよ。
じゃあね、実際コミュ中のさざなみはどういう扱いを受けてるのかなって見てみると、
さざなみ全然出てこなくない?
って。深夜眠れない小糸が廊下でその音を聞いていたくらいかな?つまり、
やっぱりさざなみは何かのメタファー
と考えていいんじゃないかなと。これまで私は自分や、シャニマス世界の住民の心象をさざなみに例えてきたけれど、
小糸が主人公なのだから「さざなみ」も小糸に掛かっている
という考え方をすれば非常にシンプルなわけだ。じゃあ小糸はどこをなにがどうして、寄せては返しているのだろう。
おうかんみつけた
今コミュで小糸が抱いている悩みというのは明文化されていて、自分は成長できているのか、そもそもどのように成長すればいいのかについて悩んでいる。この悩みを無理くりさざなみに当てはめてみると、
寄せては返すさざなみの様に、一歩前に進んだと思ったらいつの間にかまた同じ場所に戻っている。何度繰り返しても同じ場所から動けていない気がしている。
みたいなことなのかなと。だけど勘違いしてはいけないのは、さざなみは世界に何も影響を与えていないわけではない、ということ。
奇しくも小糸が「どこかから流れてきたのかな」なんて言っていたけれど、海岸に落ちているゴミは海水浴客がポイ捨てしているものよりも、海側から漂着してきたものの方が多いらしい。もちろん海からくるゴミも心無い人がポイ捨てしたゴミが海に出てから海岸に打ち上げられているから、ポイ捨ては絶対にしてはいけない行為なのは変わらない。でも、さざなみはゴミとはいえ、何かを運搬したりしているわけなんだ(他にも海岸を削ったり、逆に砂浜に砂を運んだりもしていたりする)。
小糸が見つけた一瞬だけ光ったおうかんも、さざなみがもたらしたもの
ここでいうおうかんはすなわちかんむり、冠番組のメタファーだと推測できる。今回ノクチルが冠番組を手に入れたように、小糸が次を手に入れたように、
同じ場所でもがいているように見えて、ちゃんと何かをもたらせていた
小糸の悩みに対して、雛菜は私は変わりたいなんて思ってないけど~なんていいつつ、自分がなりたいものになればいい、と言ったり、円香も成長中(仮)なんだから次でもいいじゃん、と言ったり
急ぐ必要はない、でも変化そのものを否定はしなかった
後発のシーズにすら一瞬で追い抜かれたノクチル、でもそれでいい、他なんて気にするな、彼女たちはゆっくりとでも確実に進んでいく。それを再認識させるようなコミュ。それは当たり前のことを言っているからとても凡庸だけど、でも示しておかなければならない大事な事柄だったので。
透明な透
さて、小糸に対して円香と雛菜がそれぞれのスタンスでエールを送ったのに対して、透は……あれ、何も言ってなくないか?
透が口下手なのはそうだけど今回はいつにもましてレスポンスが悪いような…
ん、あれ…?
あれ?
顔がいいアイドル浅倉透の顔が映ってないじゃん!シャニマス君は非常に挑戦的で、大胆な構図でこちらをあっと言わせて来ることも多いので最初は気にしていなかったけど、これってもしかして意味があるんじゃないの?
思い返せば『天塵』も『海に出るつもりじゃなかったし』でも、ノクチルが生配信でぶちかましたり、海に行ったり、飛び込んだり、仕事受けたり、ジャンプしたりする時は透の意思決定が介在したわけである。しかし今回の『さざなみはいつも凡庸な音がする』ではどうだろう。寺院に行くことを決めたのは?小糸が一位だと決めたのは?
透の意思決定が全く存在しないノクチル
ちょっとずつ変わればいいなんてさっき言ったけどさ…とんでもない変化が起こってるじゃん!どういうこと?いったい透にどんな変化があったの?
彼女たちの現在地
まてまて、いったん落ち着こう。小糸の変化、透の変化と様々な変化についてのトピックスに触れてきたわけだけど、彼女たちの変化を声高に主張するならまず、どこからどう変化したのか、その現在地の話をしなきゃならないよね?
というわけで『天塵』『海に出るつもりじゃなかったし』『さざなみはいつも凡庸な音がする』のスチルどん。
海の中⇒海の上⇒海を見下ろせる場所と変化している
ノクチルのモチーフには海は欠かせない、そんな彼女たちが徐々に海から遠ざかっている。そしてその向かう先にはきっと空がある。要するに垂直方向の変化なわけだ。シャニマスにおいて空とはアイドルが輝くステージであるからして、これはもうノクチルが着々とアイドルへのステップを登っていると言って過言ではないだろう。(え、ノロマ号は湖だって?君のような勘のいいプロデューサーは嫌いだよ)
そしてこういった視点を持ちながらイベントタイトルを再度振り返ると新しい気付きが得られる。私は長らく、『天塵』とはいったい何のことなんだろうという問いに頭を悩ませてきた。しかしこれらを、空へと近づいていく彼女たちとその変化の過程の感傷と捉えるとどうだろう。ノクチル発表時の情報からして、ノクチルは海中から浮上していくイメージを持っていることは間違いない。『天塵』のスチルも、実際には海に飛び込んだシーンではあるけれど、海中から浮上し、海面に顔を出した彼女たちを意識しているのは間違いないだろう。だとするならば『天塵』は、海中でのマリンスノーや、海面での光の散乱等とは捉えられないだろうか。つまり天とは上方向のことであり、『天塵』というが実際は海中の描写というわけだ。
同じ考えで『海へ出るつもりじゃなかったし』は陸から海へ、ということではなく海中から海上へ出るつもりではなかったという風に捉えられないだろうか。『天塵』を追いかけ上へ上へ向かってたら海上に出てしまった彼女たち、なんて考えると面白いのではないだろうか。
では最後に『さざなみはいつも凡庸な音がする』だが、さざなみの音が聞こえるのはいったいどこだろうか?そう、きっと海岸だ。海中や海のど真ん中ではなく海岸でないとさざなみの音は聞こえないのだ。つまりさざなみの音が聞こえるということは逆に海のど真ん中から陸と海の境界まで移動してきたことの証左なんじゃないだろうか。
さて、ここまで熱弁を振るってきたが、ノクチル有識者の方ならそんなことノクチル学会では常識だぞ、と一笑に付すことだろう。では『さざなみはいつも凡庸な音がする』では海の見える寺院という舞台ながら、さらに彼女たちの現在地を分割できることにはお気づきだろうか。
今コミュにおいて、円香と小糸が海岸、透と雛菜が境内と別れて掃除を行う描写がある。そう、海のすぐそばである海岸と海を見下ろせる寺院とにだ。海が幼馴染側、空がアイドル側とするならば透と雛菜は僅かだがアイドル側に寄っているということになる。
そして大事なのはこの2組での掃除に対する意識の違いだ。小糸と円香はもともと綺麗だった海岸を綺麗にした、透と雛菜は境内を自分たちの力で綺麗にした。海岸組は自分たちの行動が変化を起こせていないと思っているし、境内組は自分たちの行動が変化を起こせていると思っている。場所と意識、これだけの証拠が揃えば言い訳はできないよねシャニマス君?そしてね、円香より小糸の方が、自分たちの掃除で綺麗になったという実感を持っていそう。ってのがミソなんだ、ねえ円香さん。
さてさて、海岸が幼馴染側、境内がアイドル側と割り振るならば、このシーンにも別の意味が生まれてくる。
寺院の掃除をするより海岸の方が良かったという雛菜に対する、透からのとりとめのない会話、ではない。
海(幼馴染の側)じゃなくてこっち(アイドルの側)で良かったの?という非常にナイーブな質問、それが隠されているんじゃないか?そしてそれに対する雛菜の答えがこれである。
私たちは何回雛菜に救われたんだろうな……
そして一度それに気づいてしまえば、透は今回取り留めのない会話の中に、非常に大事な文脈を隠してるんじゃないかと思うのは当然のことだ。
そしてそれはあった。
いやもうこんなん感情が抑えられなくて限界早口になってしまうよ。眠れずに廊下にいる小糸に対して、問いかけたこの言葉。いやもうこのたかが3センテンスの7文字に、いったいいくつの感情が込められているのだろうか???
小糸はこの廊下でさざなみを聞いていた。海岸で聞こえる、陸と海の境界で聞こえる、凡庸なその音を。海岸、まだギリギリ海と呼べるような。あの海によく似た、アイドルじゃなくただ幼馴染であった、あの暖かなまどろみに、まだギリギリ戻れるかもしれない海岸で、
ここに、まだ、立ち止まったままでいる?
小糸…いつの間にそんな強くなって…!
うん、小糸はもう心配ないな。心はもう、一歩踏み出す決意を秘めているから。ね、円香さん。
で、最後の疑問として透はなんで、こんな迂遠な表現を用いているんだろうかって。でね、まあ私の想像だけれど、透ってもしかしたら他の3人がアイドルになったことに、実はすごい負い目を感じてるんじゃないかな。だから今回もいつものように言葉にし過ぎてしまうと、小糸に無理をさせるんじゃって恐れていて。遠回しに雛菜に質問したのだってそうだよね。でも、透がさ、アイドルになってそれを見て3人がアイドルになって。それって透とプロデューサーが初めて会ったときにプロデューサーが透にしたことと全く一緒なのにさ。それで透は救われたはずなのに、それに気づいてないのかな。
さざなみはいつも凡庸な音がする
”海”が幼馴染の、幼馴染だけで構成される暖かな世界のメタファーだとするならば、小糸は中学の3年間”海”に居なかったことになる。そして高校生になってその”海”を取り戻したとき、もう絶対離したくないと思っただろう。しかし透がアイドルになってそれがまた遠ざかりそうだと思って、だからノクチルはあの始まりの1つ目のイベントコミュで、海に行こうとしたのだろう。
だけど彼女たちはあんなにも恋焦がれた”海”からもう旅立とうとしているんだね。なんだよ…お前らの成長爆速じゃん…。
とまあここまで書いてね前回の『海に出るつもりじゃなかったし』が実装されたときに私が作った考察動画を見たんですよ。そしたらね私、海=アイドル業界みたいなこと言ってたんだよね、ガバガバだなお前の考察!
で、うーん考察って難しいなって思って何度も書いては消して書いては消してってやってたらイベント期間終わっちゃったのよ。うわヤバイと思ってたらね
もっとヤバいの来ちゃった。しかもA面が
僕らだけの未来の空
もうこれ答えじゃん!たどり着けるじゃん!少しずつ少しずつ空に近づいてって!掴めちゃうじゃん!アイドルの空!しかもね、僕らだけの空なんですよ!?これもう空ですら彼女たちの暖かな居場所に出来ちゃうじゃん!出来ちゃってるじゃん!そしてねB面がね
今しかない瞬間を
もうシャニマス君単純に力で圧倒してくるじゃん…これがアイドル育成ゲームのやり方か…?
そんでね今、僕らだけの未来の空はゲームサイズバージョンがゲーム内で視聴できるんだ。
聴いて、お願い。聴け。
正直語りたいことなんていっぱいあって、まだまだ書かないとななんて思ってたんだけど、この曲聴いてどうでもよくなっちゃった。だってさ、待てばいいじゃん。今はまだ言ってくれないけどさ、思ってること感じてること全部、言ってくれるのをただ待てばいいんだよ。
今回の配布S-SSR【傍白のあいだに】覚えてます?傍白って、舞台上の演者が、他の演者は聞こえていないというお約束事の上で、観客に対して自分(演じている役柄)の心境心情を台詞として言う手法の事らしいんです。
だからいつか、彼女たちが心境や心情を吐露してくれるのをあのにが~いブラックコーヒーでも飲みながらさ、…ゆっくり理解っていけばいいんだよ。時間かかりそうだからさ。
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