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ベスト・メロハー・アルバム 2024

デマ、誹謗中傷、差別、陰謀論が当たり前のように飛び交う SNS の時代に特効薬はありません。ただし、荒んだ心を癒してくれる "Remedy" なら存在します。メロディック・ハードロック。通称 "メロハー" です。

奇抜や瞬間芸、ルッキズムが尊ばれる現代の音楽世界において、彼らはただ自らの信念にもとづいて時代遅れのキラキラな音楽、青春、正しさ、喜び、光、個性をまっすぐに貫きます。そこに嘘や金銭、欲望は微塵も介在しません。あるのは無垢なる情熱だけ。だからこそ尊い。だからこそ信じられる。

2024年もメロハーは大豊作でした。ベスト10。個性を出すのが難しいジャンルでいかに個性を出すか。ですね。どうぞ。

  1. REMEDY "Pleasure Beats the Pain"

そう、楽しみや喜びは苦痛をぶっ飛ばすんだよね。
それが、メロハーの "Remedy"、"治療法" なんだ。
スウェーデンの REMEDY は暗い時代を生きる僕らの本当に素晴らしい治療法だ。
"Sin For Me" を聴いてみてほしい。"Angelina" を聴いてみてほしい。これだけ "枠" のあるジャンルで、次から次へと斬新でドラマティックな展開をつなげていく。ガッツポーズが出過ぎて腱鞘炎になるくらい。脱糞しすぎてアナルが負けてしまうくらい。そう、彼らは北欧の哀愁を、全世界向けのドラマティックな音楽へと変貌させる。
誰か傑出したプレイヤーがいるわけじゃない。だけど、この猫の目の華麗な作曲術が彼らの個性。メジャーもマイナーも、彼らの手にかかれば手品のように入れ替わる。そう、僕らはこういう音楽に出会うため生きているんだ。暗い世界でも、辛い日常でも、胆石でも、こんな最高の"治療法" があれば大丈夫。大丈夫。ありがとう、北欧。ありがとう、医療関係者の皆様。

2.NESTOR "Teenage Rebel"

僕がメロハーに求めるものは、メロディだけではない。それだとただの "メロ" になっちゃうからね。"ハー" の部分もとても大事なんだよ。ハーはハードロックであり、ハーモニーでもある。
そういう意味で、僕にとってメロハーのベスト・アルバムは HAREM SCAREM の "Mood Swings" なんだよね。
このアルバムはそこにとてつもなく近い。やっぱりね、メロハー・バンドには天才シュレッダーがいて欲しいんだよ。僕は。ギタリストのジョニー・ウェメンステッドは明らかに達人で、さらに意外性がある。まるでピート・レスペランスのようにね。
もちろんトビアス・ガスタフソンの北欧らしい哀愁を秘めた歌も最高。コーラスもキラキラで、だけど楽曲は存分にハード。QUEENSRYCHE の "Operation" や "Empire" に影響を受けているってのもいいじゃないすか。TNT みたいなリフもあるし。
"ヤンテの掟" に対する10代の青い反抗をしたためて、この作品は完璧になった。80年代に忘れてきた夢をオッサンが叶える。最高かよ。またジャケが泣かせるじゃないの。結局、マサオ・フジキの推しに間違いはないのよ。

3.FM "Old Habits Die Hard"

この人の歌が聞きたいから、ギターが聞きたいからアルバムを買う。それって、音楽家冥利に尽きる話だよね。
僕はスティーヴ・オーヴァーランドが歌っていれば、値段も見ずにウンウンと頷きながらニコニコとアルバムをカートに入れてしまう。そんな人間だ。そして、彼の歌は、歌心はそのくらい素晴らしい。
FM, OVERLAND, GROUNDBREAKER, LONERIDER, KINGS OF MERCIA。20年代に入ってからも、声が資本のボーカルなのに平気で1年に2枚くらいアルバムを出し続けているけど、そのどれもで何かしら感じ入ってしまう。平伏する。足をイギリスに向けて眠れない。
中でもやはり FM は別格だ。僕はこの作品で、TOTO のルカサー・アルバム、"Kingdom of Desire" や "Tambu" を思い出したよ。ブルース・ロックだけど、時折りハッとするほど爽やかなメロディや、捻ったリフがあって深くて飽きることがない。ジム・カークパトリックの名人芸もぜひにご照覧あれ!

4.FIGHTER V "Heart of the Young"

FIGHTER V。もうバンド名からして完璧だよね!ボルテス V の上位互換よ。インタビューできたから、読んでみてね!

5.NIGHTBLAZE "Nightblaze"

メロハーといえば、ネオン、アーバン、レトロフューチャー。そう昔から相場が決まっている。見てくださいよ、このサイバーパンク 2077も真っ青のサイバー感。ネオンで目が潰れるくらいのジャケでこそメロハー。もちろん、どの曲もトップガンやバック・トゥー・ザ・フューチャーで今にも使用されそうなほどアゲアゲ de レトロ・フューチャー。THY MAJESTIE でおなじみ、ダリオ・グリロのキラキラ・ギター、キラキラ・キーボードも絶好調。"You're Gone" のように LAST AUTUMN'S DREAM を思わせる超哀愁にハッとさせられる場面も。ネオンの海に溺れてください。

6.A Never Ending John's Dream "Coming Back to Paradise"

いやー、イノセントですよ。"ジョンの夢は永遠に終わらない"。こんなイノセントなバンド名ある?そんで、この清涼感溢れるジャケ、津波のように押し寄せるキラキラキキララのキーボード、重ねすぎてCDからこぼれそうなコーラス…絶対悪い人たちじゃないよ。長袖を着させてくださいってお願いしたら、絶対ユニクロ寄ってくれる。
とにかく、このイノセント感こそ、僕らがメロハーに求めているもの。心が洗われますね。入院中にオナニーしてすいませんでしたと本気で謝りたくなる。
でも、素晴らしい音楽ですよ。STYX をテクニカルなメタルモードにしたような感じかな。スペインの人たちだって。Joan さんはいるけど、John さんは残念ながらメンバーにいません。

7.THE NAIL "The Nail"

さっき、この人の歌が聴きたいからアルバムを買うって話をしたけど、最近僕のそのリストに追加されたのがギリッシュ・プラダンだ。伸長著しいインドのシーンから登場したギリッシュの歌声は実に個性的で強力だ。メロハー、インドに立つ。そりゃ、ジョエル・ホークストラやキップ・ウィンガーも目をつけるよね。
このアルバムでは、彼のヘヴィでダークな一面が堪能できる。まるで00年代のジョージ・リンチのようなリフや妙技を披露する若きギタリストも白眉。とはいえ、Girish and the Chronicles の "Rock the Highway" はもっと凄いけどね。

8.Cory Marks "Sorry For Nothing"

カントリーの人なんだけどね、とにかくメタルが好きなんですよ。逆はよくあるんだけど、これは珍しい。そして心地よい。
"アーバン" と同じくらい"アメリカの大地のような"もよく使われるメロハー表現なんだけど、まさにそれよ。GODSMACK や BAD WOLVES が全面協力するのもわかる。とにかく心地よいんだよね。ちゃんとカントリーしてるけど、メロハーでメタル。大音量でカーステから流しながら、四国カルストを疾走したい、そんな音楽。すいませんね、例えがショボくて。でも、テキサスとか行けないじゃん。胆石だし。

9.INVASION "2"

やたら勢いがあるやね。インタビューできたので、よかったら読んでみてね。

10.ZIGGY "For Prayers"

「懐メロバンドにはなりたくない」「新曲をやらないバンドにはなりたくない」
もうね、森重さんのその言葉に痺れましたよ。最高のライブ、最高のアルバムでした。世界一歌心のあるバンド。事務所と揉めようが何だろうが関係ない。一生、森重さんについていきます。結局、僕はこれが言いたかったんだ。とにかくZIGGYを聴け!


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