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社会人のための学び直し数学【高校数学三角関数編その7】

7.三角関数のグラフ

 三角関数のグラフについて考えます。
手始めに,三角関数 $${y=\mathrm{sin}x}$$ および $${y=\mathrm{cos}x}$$ のグラフ上の点 $${(x,y)}$$ の変化のイメージをつかんでおきます。

図 7-1

図 7-1 は $${uv}$$ 平面(座標軸として横軸に $${u}$$,縦軸に $${v}$$ をとった平面)上で,単位円(半径が 1 の円)をとり,$${u}$$ 軸の正の向きと動径 $${\mathrm{OP}}$$ のなす角を $${x}$$ としたものです。このとき円周上の点 $${(u,v)}$$ は,三角関数の定義から

$${u=\mathrm{cos}x}$$,$${v=\mathrm{sin}x}$$

となります。
そして,$${x}$$ に具体的に

$${x=\cfrac{π}{6}}$$,$${\cfrac{π}{4}}$$,$${\cfrac{π}{3}}$$,$${\cfrac{2}{3}π}$$,$${\cfrac{3}{4}π}$$,$${\cfrac{5}{6}π}$$,$${\cfrac{7}{6}π}$$,$${\cfrac{5}{4}π}$$,$${\cfrac{4}{3}π}$$,$${\cfrac{5}{3}π}$$,$${\cfrac{7}{4}π}$$,$${\cfrac{11}{6}π}$$

という値を与え,それぞれの $${x}$$ に対する $${\mathrm{cos}x}$$,$${\mathrm{sin}x}$$ の値の変化を見てみましょう。
図 7-2 では,$${\mathrm{cos}x}$$ すなわち $${u}$$ を青色の点で,$${\mathrm{sin}x}$$ すなわち $${v}$$ を赤色の点で描いてあります。
ただし,$${x=0,π}$$ の値は青の点($${u}$$ の値)で,$${x=\cfrac{π}{2},\cfrac{3}{2}π}$$ の値は赤の点($${v}$$ の値)で描きました。

図 7-2

ここで,$${x}$$ の値が $${0}$$ → $${\cfrac{π}{6}}$$ → $${\cfrac{π}{4}}$$ →・・・ のように変化するにつれて,円周上の点は点 $${(1,0)}$$ を出発点として,反時計回りに変化していくと考えてください。すると,青の点は $${u}$$ 軸上を $${u=1}$$ を出発点として左向きに変化し,$${u=-1}$$ まできて,その後は右向きに変化し $${u=1}$$ に戻ってきます。また,赤の点は $${v}$$ 軸上を $${v=0}$$ を出発点として上向きに $${v=1}$$ まで変化して,その後下向きに変化し,$${v=-1}$$ に達すると再び上向きに変化して $${v=0}$$ に戻ってきます。
 それぞれの点にもう少し動きをつけて考えてみましょう。
円周上の点 $${(u,v)}$$ が一定の速さで円周上を反時計回りに動いていく様子をイメージしてみてください。そうすると,$${u}$$ 軸上の青い点や $${v}$$ 軸上の赤い点はそれぞれ $${-1≦u≦1}$$,$${-1≦v≦1}$$ の範囲で,右や左に,あるいは上や下に,行きつ戻りつ動いていることがイメージできるのではないでしょうか。これを物理では単振動といいます。そして,物理学上たいへん重要な運動の 1 つである単振動三角関数で表現できるということがわかります。

 次に,角度 $${x}$$ を数直線上に目盛り,それを $${x}$$ 軸として $${u}$$ や $${v}$$ の値の変化を見てみましょう。
 図 7-3 は $${u=\mathrm{cos}x}$$ の $${0≦x≦2π}$$ における値の変化を実線で描いたものです。なお,$${x<0}$$ や $${2π<x}$$ の範囲は点線で描きました。

図 7-3

この $${u}$$ を $${y}$$ と書き換えれば $${y=\mathrm{cos}x}$$ を $${0≦x≦2π}$$ の範囲(実線)で描いたことになります。
 図 7-4 は $${v=\mathrm{sin}x}$$ の $${0≦x≦2π}$$ における値の変化を実線で描いたものです。図 7-3 と同様に $${x<0}$$,$${2π<x}$$ の範囲は点線で描いています。

図 7-4

この $${v}$$ を $${y}$$ と書き換えれば,$${y=\mathrm{sin}x}$$ のグラフを $${0≦x≦2π}$$ の範囲(実線)で描いたことになります。
 $${y=\mathrm{cos}x}$$,$${y=\mathrm{sin}x}$$ のグラフの特徴は,$${0≦x≦2π}$$ の部分をそのまま平行移動させて,$${x<0}$$ や $${2π<x}$$ の部分のグラフが描けるということです。これは

$${\mathrm{sin}(x+2nπ)=\mathrm{sin}x}$$,$${\mathrm{cos}(x+2nπ)=\mathrm{cos}x}$$

という式に対応しています。
なぜなら $${0≦x<2π}$$ であれば $${2nπ≦x+2nπ<2(n+1)π}$$ となるので
$${2(n+1)π-2nπ=2nπ+2π-2nπ=2π}$$ より $${x+2nπ}$$ は範囲の幅が $${2π}$$ の中に収まり

$${\mathrm{sin}(x+2nπ)=\mathrm{sin}x}$$,$${\mathrm{cos}(x+2nπ)=\mathrm{cos}x}$$

が成り立つということは,$${\mathrm{sin}(x+2nπ)}$$ も $${\mathrm{cos}(x+2nπ)}$$ も $${0≦x<2π}$$ での値が繰り返されるということを示しているからです。
 一般に関数 $${f(x+p)=f(x)}$$ が成り立つとき,正の数で最小の $${p}$$ のことをこの関数の周期といいます。したがって,$${\mathrm{cos}x}$$,$${\mathrm{sin}x}$$ の周期は $${2π}$$ です。

 ところで以前,2 次関数の記事の中で,$${y=f(x)}$$ のグラフを $${x}$$ 軸方向に $${α}$$ だけ平行移動したものが $${y=f(x-α)}$$ のグラフになることを説明しました。よって,$${\mathrm{cos}\left(x-\cfrac{π}{2}\right)=\mathrm{sin}x}$$ という式は $${y=\mathrm{cos}x}$$ のグラフを $${x}$$ 軸方向に $${\cfrac{π}{2}}$$ だけ平行移動すれば $${y=\mathrm{sin}x}$$ のグラフに一致することを表しています。これは 図 7-3 の曲線を $${x}$$ 軸方向に $${\cfrac{π}{2}}$$ だけ平行移動すると図 7-4 の曲線と重なることから納得できるでしょう。

 グラフの形状の変化は平行移動だけでなく,拡大や縮小も考えられます。
 $${A}$$ を正の数とすると $${y=A\mathrm{cos}x}$$ や $${y=A\mathrm{sin}x}$$ はそれぞれ図 7-3,図 7-4 で $${u}$$ や $${v}$$ を $${y}$$ に書き換えて,$${y}$$ 軸方向に $${A}$$ 倍に拡大(または縮小)したものです。図 7-5 は図 7-4 で $${v}$$ を $${y}$$ に書き換え

$${y=\mathrm{sin}x}$$(黒線)と $${y=2\mathrm{sin}x}$$(赤線)

を描いたものです。赤線は黒線を $${y}$$ 軸方向に 2 倍に拡大したものとなっていることが分かるでしょう。

図 7-5

 ところで $${y=f(x)}$$ と $${y=-f(x)}$$ は,同じ $${x}$$ の値に対して互いに絶対値は等しく符号が反対の $${y}$$ の値を与えます。そしてそれらのグラフは図 7-6 のように,互いに $${x}$$ 軸に関して対称なものになります。図には $${x=a}$$ に対する $${f(a)}$$ と $${-f(a)}$$ が,その位置関係がわかるように書き入れてあります。

図 7-6

したがって,図 7-7 のように

$${y=A\mathrm{sin}x}$$(黒線)と $${y=-A\mathrm{sin}x}$$(青線)

が描けて,黒線を $${x}$$ 軸を折れ線として折り曲げると,青線に重なることが確認できるでしょう。

図 7-7

 $${a}$$ を正の数とすると $${y=\mathrm{cos}}$$ $${ax}$$ や $${y=\mathrm{sin}}$$ $${ax}$$ はそれぞれ図 7-3 や図 7-4 で$${u}$$ や $${v}$$ を $${y}$$ に書き換えて,$${x}$$ 軸方向に $${\cfrac{1}{a}}$$ 倍に縮小(または拡大)したものです。これは少し考えにくいので説明を加えましょう。
$${0≦ax≦2π}$$ と $${0≦ax≦2π}$$ について,$${x}$$ 軸での目盛り方をくらべます。
$${0≦ax≦2π}$$ は $${0≦x≦\cfrac{2π}{a}}$$ と変形できるので
 $${0≦x≦2π}$$ での $${0}$$ から $${2π}$$ までの目盛りの幅が,
 $${0≦ax≦2π}$$ では $${0}$$ から $${\cfrac{2π}{a}}$$ までの目盛りの幅
になります。
すなわち $${\cfrac{1}{a}}$$ 倍になっているのです。
図 7-8 は

$${y=\mathrm{sin}x}$$(黒線)と $${y=\mathrm{sin}2x}$$(赤線)

を描いたものです。赤線は黒線を $${x}$$ 軸方向に $${\cfrac{1}{2}}$$ 倍に縮小したものとなっていることが確認できます。

図 7-8

 最後に物理とのかかわりをもう一つだけ述べておきます。
 図 7-1 の $${uv}$$ 平面上で,円周上の点が一定の速さで反時計回りに回転するとき,角 $${x}$$ は時間 $${t}$$ を使って $${at}$$($${a}$$ は正の定数)と書くことができます。なぜそうなるかは,ずっと後,微分の記事で説明するので,とりあえずそういうものだと飲み込んでください。そうすれば,単振動を与える角は $${at}$$ と書けて,$${v}$$ の値(単振動の位置)の変化は $${v=\mathrm{sin}}$$ $${at}$$ で表現(図 7-2 では赤い点の動きで表現)できます。ただ,振動の幅が 1 でなければならない理由もないので,$${A}$$ を正の数として $${v=A\mathrm{sin}}$$ $${at}$$ とします。振動の幅を決めている $${A}$$ のことを振幅といいます。
単振動の表現としては $${u=A\mathrm{cos}}$$ $${at}$$ でもいいのですが,$${t=0}$$ を変化の出発点と考えた場合,それが $${u=A}$$ となってしまいます。$${v=A\mathrm{sin}}$$ $${at}$$ であれば $${t=0}$$ で $${v=0}$$ となり,変化の出発点が $${-A≦v≦A}$$ の真ん中,すなわち単振動の中心になり,出発点の決め方が自然です。
 ここで,$${v}$$ を $${y}$$ で書き換えて $${y=A\mathrm{sin}}$$ $${at}$$ と書き,単振動の位置の変化を $${y}$$ で表します。物理では,基準点(ここでは変化の出発点)からの位置の変化を変位というので,単振動の変位が $${y}$$ です。

 物理で考える現象の存在形態は,物質の 2 つです。そして,平面上の波はある場所での単振動が時間とともにその周りに伝わっていく現象です。この単振動が伝わる速さのことを,波の速さといいます。いま,$${x}$$ の正の向きに進む波の速さを $${V}$$ としましょう。速さ $${V}$$ で $${x}$$ だけ離れたところに到達するまでの時間 $${t}$$ は $${t=\cfrac{x}{V}}$$ と書けます。言葉で表現すると,(時間) は (距離) を (速さ) で割ったものです。ところで,波が $${x}$$ だけ離れたところに達する時間が $${\cfrac{x}{V}}$$ であるということは,$${t=0}$$,$${x=0}$$ で始まった単振動が $${x}$$ だけ離れたところでは,$${\cfrac{x}{V}}$$ だけ遅れて始まると考えられます。これは $${x=0}$$ での時間 $${t}$$ に対して,場所 $${x}$$ での単振動に関する時間は $${t-\cfrac{x}{V}}$$ と書くことで表現できます。$${t=0}$$ で $${t}$$ だけ時間が経過しているとき場所 $${x}$$ での単振動では $${t-\cfrac{x}{V}}$$ しか時間が経過していないという具合です。したがって場所 $${x}$$ での単振動の変位 $${y}$$ は

$${y=A\mathrm{sin}a\left(t-\cfrac{x}{V}\right)}$$

となります。そして,これが波の式です。

 もともと $${y=A\mathrm{cos}x}$$ や $${y=A\mathrm{sin}x}$$ のグラフは,私たちが波といったときにイメージする図形そのものだと思います。
そこで,波の式である $${y=A\mathrm{sin}a\left(t-\cfrac{x}{V}\right)}$$ がどのように図形としての波を表現しているのか見てみます。
 この場合 $${t}$$ あるいは $${x}$$ を固定してグラフを描きます。特に空間(ここでは平面)を移動する波を表現するには $${t}$$ を固定して $${x}$$ を変数としたグラフを描きます。そして,固定したいろいろな $${t}$$ の値で,その都度 $${xy}$$ 平面上のグラフにしていきます。
 それでは,実行していきましょう。
なお,次の式変形では $${\mathrm{sin}(-θ)}$$=$${-\mathrm{sin}θ}$$ を使っています。

$${t=0}$$ と固定した場合
$${y=A\mathrm{sin}a\left(0-\cfrac{x}{V}\right)=A\mathrm{sin}\left(-\cfrac{a}{V}x\right)=-A\mathrm{sin}\cfrac{a}{V}x}$$

$${t=\cfrac{π}{4a}}$$ と固定した場合
$${y=A\mathrm{sin}a\left(\cfrac{π}{4a}-\cfrac{x}{V}\right)=A\mathrm{sin}\left(-\cfrac{a}{V}\left(x-\cfrac{Vπ}{4a}\right)\right)=-A\mathrm{sin}\cfrac{a}{V}\left(x-\cfrac{Vπ}{4a}\right)}$$

$${t=\cfrac{π}{2a}}$$ と固定した場合
$${y=A\mathrm{sin}a\left(\cfrac{π}{2a}-\cfrac{x}{V}\right)=A\mathrm{sin}\left(-\cfrac{a}{V}\left(x-\cfrac{Vπ}{2a}\right)\right)=-A\mathrm{sin}\cfrac{a}{V}\left(x-\cfrac{Vπ}{2a}\right)}$$

$${t=\cfrac{3π}{4a}}$$ と固定した場合
$${y=A\mathrm{sin}a\left(\cfrac{3π}{4a}-\cfrac{x}{V}\right)=A\mathrm{sin}\left(-\cfrac{a}{V}\left(x-\cfrac{3Vπ}{4a}\right)\right)=-A\mathrm{sin}\cfrac{a}{V}\left(x-\cfrac{3Vπ}{4a}\right)}$$

これらを 1 つの $${xy}$$ 平面に描いたものが図 7-9 です。

図 7-9

図 7-9 では,$${t=0}$$ のときを黒線,$${t=\cfrac{π}{4a}}$$ のときを緑線,$${t=\cfrac{π}{2a}}$$ のときを青線,$${t=\cfrac{3π}{4a}}$$ のときを赤線で描いてあります。$${y=-A\mathrm{sin}\cfrac{a}{V}x}$$ が時間の経過とともに,右へ移動(平行移動)していることが確認できるでしょう。そして $${t=\cfrac{2π}{a}}$$ になると,黒線とピッタリ重なります。この $${t=\cfrac{2π}{a}}$$ が波の周期になります。

【練習問題】$${y=-A\mathrm{sin}a\left(\cfrac{x}{V}-t\right)}$$ で $${t=\cfrac{2π}{a}}$$ のとき $${y=-A\mathrm{sin}\cfrac{a}{V}x}$$ となることを確かめよ。
[ヒント] $${\mathrm{sin}(θ+2nπ)=\mathrm{sin}θ}$$($${n}$$ は整数)となることを使います。

【答】略。


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MaruSun
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