汐澤安彦の訃報に接して

ついに汐澤先生が亡くなった。9月に足立シティオーケストラの演奏会で見た指揮姿は元気そうで後4〜5年は活躍しそうな感じではあったのだが。やはり冬は高齢者にはきついのだろうか。
ある一定の年齢以上の吹奏楽ファンであれば吹奏楽のCDを聞こうとすると大体汐澤安彦指揮のCDを聞いてきたと思う。東芝の吹奏楽オリジナル名曲選、ソニーの吹奏楽名曲集など。とはいえ自分がそれらのCDを聞いてた頃既に在京のプロオケには出ていなく変わった存在だと自分は思っていた。この頃はまだネットなど発達していなくて学生オケやアマオケをメインに振っていると知ったのはしばらくしてからだった。足立のアマオケを振っていると情報を知り定期演奏会に通い始め気が付いたら十数年経っていた。演奏の特徴と言えばアマオケなのにダレないテンポ、後あの狭い会場(ギャラクシティホール)を駆使した変わった音響バランス(嘘)だろうか。自分は好きだが人には勧められないかな、と言うものだった。とはいえ指揮台上で放つカリスマ性は凄かった。
通い始めの頃は大体肝心な箇所でホルンの音がひっくり返っていてアマオケだからと諦めていたが、いつからかホルンがひっくり返らなくなったので安心して演奏に浸る事が出来ていたが、恐らくトレーナーも一緒に演奏するようになったからだろう。それに気付いたのはつい最近だ。それは純然なアマチュアオケか?とも思ったが、色々仕方がないのだろう。功を急いだのかも知れない。それでも素晴らしい演奏だと思うし魂を持ってかれるような「体験」を幾度かしたが、だからといって一部の人達が臆面もなく世界一とか吹聴するのには無理がある。後、汐澤先生の演奏会の特徴といえば、ブラボー屋の存在だろうか。終和音が鳴り止むか否かで間髪入れずに出されるそれは音楽の世界から現世に引きずり戻す魔法を解く呪文ではないかと思う。ただ聴衆はその世界にもう少し浸っていたいのだが。(大抵録音が回っているので自分の醜声を刻印として残したいからだと言う説も)
一度は本人と話をしてみたいと思ったが畏れ多くてそれは叶わぬ夢となってしまった。どうしたら無神経にも終演後の楽屋に押しかけて写真を撮ったり出来るのだろうか。果たしてそんな人に音楽が理解出来てるのか甚だ疑問に思う。
また何回かSIOフィルの演奏会にも足を運んだが純粋に楽しかった。アンコールが8曲もある演奏会など(実質的な第三部)今後出てこないだろうなぁ。
日本では長寿の指揮者になると急に巨匠と持ち上げだす癖があり汐澤先生もその神輿に乗りかけていたと思うのだが突然の訃報だ。もう少し長生きしていたらプロオケとベートーヴェン・チクルスとかが組まれていたかもしれないと思うと残念だ。
個人的に気になるのは残された録音物だが、まとめてBOXとかで出たりするのだろうか。前に宇野功芳が死んだときに確か新星日響の録音がBOXで音盤が出ると知った時に「誰がそんなものを聞き返すのだろう?」と思った記憶があるのだが宇野功芳「でさえ」出たのだから期待したい。
最後に素晴らしい音楽を聴かせてくれた汐澤先生に哀悼の意を表したいと思う。

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