関西私鉄大手五社を語る
決して私は鉄道オタクではない(それどころか、線路に立ち入って運行に支障をきたすようなことをする撮り鉄は、重罰に処すべきだと思っている方だ)が、今回はただ 関西の私鉄各社について、心に移りゆく由無し事を あくまで私見に基づき述べてみようと思う。
《私鉄各社名の発音》
昔に比べてドラマの中の俳優さんたちが話す関西弁が かなり自然になったと思う。それでも『ん?』となることは少なくないが。方言の難しいところはワードではなくイントネーションだ。最重要ポイントは アクセントをどこに置くかである。これはきっと英語なんかでも同じことが言えて、本人は得意気にペラペラ話していても、ネイティブが聞くと随分ナマッたように感じているのかな?と思ったりもする。
そういえばロックミュージシャンの B'sの発音については、昔から『メール』や『渋谷』と同じだったものが、最近は『スープ』と同じ感じで発音する人が現れてきた。なんとなく近い将来そちらの方が主流になっていくような気がしている。
関西五大私鉄各社のうち、阪急、阪神、南海、京阪の4社に関しては、一音目にアクセントがくる。しかし、近鉄だけは二音目の『ん』にアクセントを置くのだが、ここのアクセントの強さで関西人度が測れるんじゃないか? と思う。『阪急』のアクセントでは『近鉄』とは発音できないし、『近鉄』のアクセントでは『南海』とは発音できない (笑)
《ステータス》
関西に住む人間にとって、あずき色の阪急電車は 関西私鉄界ではカーストのトップに君臨している。乗っている人にも何となく高級な感じがあるのだが、それをお土産にあてはめてみるとわかりやすいかもしれないと思い、乗客が持っていそうなお土産を想像してみた。
阪急電車の乗客には上記の通り気品がある。よって持っているお土産にも高級感が漂っている。阪急マダムが手に持つお土産がユーハイムのバームクーヘンあたりなのに対し、近鉄電車や南海電車では それが 551蓬莱の豚まんになる。日曜日の夕方頃になると、高い確率で車両内にその匂いが漂い、ユーハイム側ではない私は そんな芳香に本能的な安心感を覚えるのだ(余談ながら 関西においては 蓬莱の551と潤滑剤の556が、また銀行のUFJとテーマパークのUSJがゴッチャになっている主婦は少なくない)。
《遊園地》
今や関西私鉄各社が運営する遊園地は 閉鎖されてしまった施設が多いことを考えると、はじめは良くてもその人気を維持するのは難しいのだと思う。
※閉鎖された遊園地
あやめ池遊園地:近鉄
宝塚ファミリーランド:阪急
阪神パーク:阪神
みさき公園:南海
経営状態の詳細は知らないが、今も営業中のパルケエスパーニャ(近鉄)が 若者やファミリーでごった返しているというような話は聞かない。しかし同じく現役の遊園地であるひらかたパーク(京阪)は、V6の岡田准一さんの起用が当たり、入場者が回復していると聞く。関西人の間では大河ドラマがテーマとなった菊人形くらいしか特徴のなかったひらかたパーク(失礼!)だったのに、全国区で主役級の俳優である 岡田君のパワーはホントすごい。よくぞCM出演を引き受けてくれた!と拍手喝采だ。
《百貨店》
デパ地下といえば、主婦にとって 食の最高峰に位置する。そんなデパ地下戦争をいち早く制したのは、関西では阪急百貨店だったと思う。エレベーターの乗降階を戦略的に操作したと聞くが、なるほど上手くやったというところか。以来関西人にとっては 『阪急の地下』といえば揺るぎない地位を築いているが、最近改装した阪神百貨店の充実ぶりには目を見張る。今や阪急一択じゃないところまで来てる気もする。
その阪神についてもう一言。関西で『阪神の地下のイカ焼き』を知らない人はいないが、改装後の今もちゃんと何十年も続いた味は生きている。チープだが無性に食いたくなる時があるあの味。卵が入るからデラックスっていうのは、この時代少々合わない気もするが、こんなネーミングは 卵が贅沢だった頃から この場所にイカ焼きが存在していたことを教えてくれる。
私にとっては不思議な百貨店である『高島屋』。高級感は他の百貨店にひけを取らない。でも実は南海電鉄が同百貨店を経営しているわけではないのだ。しかしあの大阪ミナミの南海難波駅と高島屋の関係は『デキテる』ことは間違いない。例えは悪いかもしれないが、他の電鉄会社と 経営する百貨店の関係が 本妻と実子の関係ならば、南海と高島屋はいわば愛人と非嫡出子なのかもしれない。
《プロ野球球団》
近鉄も阪急も無くなって、2つの球団はオリックスバッファローズに集約されてしまった。令和の今 昔みたいな野球少年は多くなく、私には野球というスポーツは、するものではなく観るものになったような印象がある。
一昨年の秋 甲子園球場にあいみょんのライブを見に行ったが、久しぶりに訪れた甲子園はやっぱり大きかった。球場に足を運ぶ野球ファンというのはあの壮大な臨場感がたまらんのだろうなと思ったことだった。
ところで関西五大私鉄の内、京阪だけが野球チームを過去においても持たなかった。もし京阪が野球チームを持つなら と考えると、ぜひとも京都に球場を持ってほしいものだと思う。寺社や花柳界、また老舗のお大尽なんかがスポンサーに付いてるから 財政的には潤っている。チアガールは舞妓さんだし、和服ユニフォームをまとった選手たちは にじり口からグランドに出る(なんでやねん!)。
《ストライキ》
思い返してみると、今は鉄道各社の賃上げ闘争のためのストライキは ほぼ無くなった。でもそんな鉄道各社に勤める労働者の戦いが 盛んに繰り広げられていた頃、近鉄だけはほぼストをやらなかった気がする。給料が良かったのか、従業員満足度が高かったのか。『近鉄は止まらない』というのは当時の通説だったように思う。だからその近鉄が止まったりすると『あの近鉄が止まるのだから今年はよっぽどやなぁ』みたいな会話が飛び交っていたことを記憶している。
私は『春闘』や『スト』などとは無縁の、美容師という 個人事業のような仕事しかしてこなかったので、働き出してからは『仕事せずみんなでサボるぞ!』と雇い主を脅すことによって 給料を上げようとする考えが理解できなかった。それで給料が増えるならいいなぁ 羨ましいなぁ と 思えなくはないが、少なくとも私を含め当時の仲間たちは、誰もが 稼ぎというものは自分の腕でファンを掴んで増やしていくものだと思っていたからだ。