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清潔とアレルギー

 日本では生まれてくる子供が、4人に1人以上の割合で何らかのアレルギーを持っていると聞く。そして世界中で先進国であればあるほどその傾向が強いらしい。一体なぜそんなことになってしまうのか。

《清潔》
 清潔は病気の元である・・・、何を言ってんだとアホ扱いされそうだが、これは事実である。日本は世界一清潔な国であり、世界一環境をキレイにしておきたい国民が住む国だ。ヨーロッパのお洒落だと位置付けられている国と我が国を比較しても、このことは間違いない事実である。世界の最新モードの発信基地であるパリであっても、そのトイレ事情については決してお洒落な街並みに相応しいものではないことは、訪れた人なら知っていることだ。今日はこの『清潔』や『免疫』ということについて少し突っ込んで自論を述べてみる。

《耐性》
 動物は環境に順応する。それは人間とて同じことである。周囲の状況の変化にいちいち参っていては種を存続することなどできなくなってしまうからだ。悠久の歴史の中にあって、様々な要因により環境が激変した時でさえ、多くの種は進化と退化を繰り返しながら絶滅せずに生き残り、次の世代に子孫を繋いで今に至る。 
 順応とはすなわち自らを変化させることであり、辛さに耐えることでもある。厳しい寒さ、乾燥、天敵、飢え・・・。そうして命をかけて耐えきった個体同士の生殖活動によって種を繋ぐ。当然その子は順応しやすい因子を持った個体となる可能性がより高くなる。こうして環境に合わせることができるようになるか、環境に合わせきれず力尽きて淘汰されるのか。しかし変化することは生き物にとっては辛いことだが、強さを手に入れるための手段でもあったともいえるのである。
 ところが変化の必要が無くなれば、生き物はどうなるのか。残念ながら平和で安穏とした月日を送る生物は、対応力が乏しくなる。『鍛えなければなまってしまう』というのはあらゆる生き物が生きていく上での理である。きっと動物園で生まれ、檻の中で育ったライオンは狩りなどできまい。

《免疫》
 似たような話である人体の免疫機能について。免疫というのは実に不思議で面白いものだ。人間は生まれて半年ほどは母親の免疫があるらしく赤ん坊は風邪もひかないが、その後はよく熱を出す。しかし熱を出すたび、体調を崩すたびに、同時に生きていくのに必要な耐性や抵抗力を取得していくのだろう。要するに『ジャマな障害があるからこそ強くなる』のだ。そうして人は強くなっていく。人間苦労しなければダメなんだなぁと、なんだか人生の教えを見るようで感慨深い。かの理化学研究所からは、13年も前に「花粉症にならないために」としての下記のアドバイスがリリースされているので紹介したい。

 ●生後早期にBCGを接種させる
 ●幼児期からヨーグルトなど乳酸菌飲食物を摂取させる
 ●小児期にはなるべく抗生物質を使わない
 ●猫、犬を家の中で飼育する
 ●早期に託児所などに預け、細菌感染の機会を増やす
 ●適度に不衛生な環境を維持する
 ●狭い家で、子だくさんの状態で育てる
 ●農家で育てる
 ●手や顔を洗う回数を少なくする

 これらの各項目を初めて見た時は衝撃だったが、今の医学界でも『清潔過ぎはダメだ』と判断していることの証左でもある。除菌、殺菌、抗菌と我が子を病気から守るために、清潔な環境でいさせたいとする親心が、かえって子供の生きる力を奪っていることになるなんて、皮肉にもほどがある。昨年亡くなられた、元東京医科歯科大名誉教授の藤田紘一郎氏は、ダイレクトに『清潔はビョーキだ』とおっしゃった。同氏は花粉症やアトピー性皮膚炎などの最近激増しているアレルギーは、日本が清潔になったことが原因だとブッタ斬り、過剰な『きれい好き』を警告しているが、私も確かにその通りだと思う。私が子供の頃は、ごくたまに喘息の子はいたが、花粉症やアトピー性皮膚炎という病名さえ知らなかった。事実50年前の日本にはそんな病気はほとんど無かったのである。

 さて清潔好きの日本人が不潔を受け入れられるか? 残念ながら私は否だと考える。それどころか、今後益々無菌状態を目指していくのではないか。そして当然アレルギーは増える。なんでも父母ともにアレルギー体質だった場合、生まれてくる子供の8割以上はやはりアレルギー体質になってしまうというではないか。せっかく権威ある理研が発信した極めて重要な上記の教えにさえ、『清潔でありたい』という日本人の欲求は勝るのである。今の日本はたとえ病気になっても清潔である方がいいという人ばかりなのだろう。
 かくいう我が校においても、壁を抗菌仕様にし、ウイルス除去用空気清浄機能付きのエアコンであり、トイレにはジェットタオルはもちろん、便座消毒用のアルコール噴霧装置を備えている。きっと生徒の生きる力を奪っているんだろうなぁと思うと複雑である。

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