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昭和歌謡は怖い 2

《昭和枯れすすき》 さくらと一郎
 昭和49年7月21日発売 ポリドールレコード

〽️貧しさに負けた いえ世間に負けた
この街も追われた
いっそきれいに死のうか ※1
力の限り 生きたから
未練などないわ
花さえも咲かぬ二人は枯れすすき

踏まれても耐えた そう傷つきながら ※2
淋しさをかみしめ
夢を持とうと話した ※3
幸せなんて 望まぬが人並みでいたい ※4
流れ星見つめ 二人は枯れすすき

この俺を捨てろ なぜこんなに好きよ
死ぬ時は一緒と
あの日決めたじゃないのよ ※5
世間の風の冷たさにこみあげる涙
苦しみに耐える 二人は枯れすすき ※6

※1 いっそきれいに・・・
 この2人、何したんだろう。まず前提として貧しいんだよね。そんでもって世間の目や仕打ちも冷たかったんだ。いっそきれいに なんてただ事ではないと思うんだけど、ひとつ仮説を立ててみようか。
 ⚫︎この2人は借金して夜逃げした
 ⚫︎そんなこんなでアパートを借りるにも
  保証人を立てられない
 ⚫︎嘘の保証人を立ててしばらく住んだが
  それがバレて追い出されつつある 
 こんな感じでどうだろう?

※2 踏まれても耐えた・・・
 踏まれるのかぁ・・・。往来を歩いていても石なんかを投げられるのかな? そりゃ傷つくわなぁ。しかし文明国に生きててこれほど蔑まされるんだからよっぽどのわけがあるんだろう。

※3 淋しさ噛みしめ・・・
 でも夢を持とうと話したんだから望みは皆無ではなかったんだよね? そうだ!がんばれさくら、がんばれ一郎!

※4 幸せなんて望まぬが・・・
 日本国憲法第十三条には『すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする』と謳われているが、単純に考えるとこれに反するように思うのだが、前述のように彼らが犯罪者だったとすればこれも成り立つのだ。
 『人並み』を切に願いながら星を見つめる2人。

※5 死ぬ時は一緒と・・・
 どうも歌詞から判断するに、悪いのは男(一郎)の方だな。さくらはそんなどうしようもない男に自分の人生さえ賭けて支えようとしてる。
 さくらさん、悪いこたぁ言わねえ。そんな男のことなんざ放っといて、自分の幸せを探すこった。

※6 世間の風の冷たさに・・・
 いやぁ、よくもここまで虐げられたもんだ。世間の人も冷たいよ、ダメだよ隣人に優しくしなきゃ! しかし世間が冷たいっていうのは、具体的にどんなことをされたんだろうね。回覧板が回ってこないとか、この家から出たゴミだけは回収しないとか? まぁ違うだろうけど(笑)

 大正琴と思しき悲しい音色でイントロが構成されているこの歌。発売当初から『暗い・・・』と評判だったが、改めて聴くとよくこんな歌詞で発売できたなってところか。当時は『貧乏』が通奏低音であることが多かった(四畳半フォークなど)けど、この歌みたいに『死』がテーマになった歌も少なくなかった。
 この先歌詞中の2人がどうなったのかはわからないけど、なんとなくだけどしぶとく生き残るよ この2人(笑)  経験上、自分たちは大変だぁ かわいそうだぁ と言いたがるようなかまってちゃん などというモノは、実際は案外図太かったりするもんね。

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