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おばさんが優勢!

 関西では絶対的な地位を築いている『りくろーおじさんのチーズケーキ』。街で見かけると どこの売り場でも行列ができている。その理由は明らかで、味の良さと良心的な価格はもちろんのこと、これほど色々な項目で合格点を獲得できる手軽なお土産はないからだ。誰かの家にこれを持っていくと おもたせとして高い割合で自分も食べることになる。私は歳をとってケーキの類は少々辛くなってきているものの、冷たく冷やしたコイツだけは好きで、冷蔵庫にあったりすると飲み物は何にしようかなどとワクワクして嬉しい。
 行列に並ぶ親子連れやカップルが、オーブンで焼かれ焼印が押されるケーキたちをガラス越しに眺めながら『フルフルやなぁ』とか『美味しそやね〜』などと言いながら目を輝かせる。自分たちの順番が来るまでのそんな時間も楽しい。

 しかし調べてみると このチーズケーキのような『おじさん』ではなく『おばさん』を冠につけた商品がこの世にかなり出回っていることを知った。ざっと例を挙げてみると、シチューはクレアおばさんだし、チョコチップクッキーにはマギーおばさんが君臨している。髪がパスタみたいになってる出自が謎に包まれたデュラムおばさんのカルボナーラ、『りくろーおじさん』と競合してしまうアニーおばさんのチーズケーキと、世の中は『おばさん』だらけなのだ。その他 変わり種で、ビアードパパのシュークリームってヤツもあるが、『おじさん』は圧倒的に少ない。スイーツではない、ポッポおじさんの塩からあげってヤツがあるにはあるが、それ以外『おじさん』は見つからないのだ。
 いずれにしても個人名を商品名に付けると、あたかも名前の人物がその商品を作ったみたいに感じる心理をは、メーカー側の戦略だろう。ここらでちょっとウィットを効かせて(悪フザケである)、日本食に関連した商品を『おじさん』『おばさん』以外で提案してみたい。

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『小春姐さんの明太子』 3,050円/約200g
あくまで『姉』じゃなく『姐』の字を使いたい。深川の売れっ子芸者であり、下の子たちの面倒見も良かった小春姐さん。どこかの御大尽に身請けされた後その姿を見た人はいないが、旦那が若くして死んだ後、芸者上がりの小春は冷遇され、寂しい老後を送ったという。
 伝説として残るほど 料理が得意で周囲に慕われた人柄。そんな姐さんの名を冠にした食品が 株式会社桃屋(『ごはんですよ!』でおなじみ)から発売されることになった。粋人だった先代のたっての願いが通じての商品化だったとのことである(知らんけど)。

『市蔵兄ぃの西京漬』 2,050円/約150g
 市蔵は若い頃、幼馴染の奥さんである和香を放ったらかしにして飲む打つ買うの毎日だった。1カ月近く家を空けていた市蔵が、茶漬けでも食って出直そうと、久しぶりに家に戻ると和香が布団に横になっていた。幼い妻は苦労がたたり、病に体の自由を奪われつつあった。そんな身で帰らぬ夫の帰りを待ち続けていたのだ。そういえばしばらく前から顔色が良くなかったことを市蔵は思いだしたが、時すでに遅く 程なくして亡くなった和香。市蔵は後悔と懺悔から、その後の人生を和香の供養に捧げたという。
 祝言の記念にと親分が二人にくれた魚で和香が一度だけ作ってくれた、市蔵の好物だった西京漬けの逸話は、時を超え土地の名産品に姿を変えたのである(知らんけど)。

『玄界灘のオジキの塩』 2,450円/200g
 とっくに隠居した嘉助のやもめ住まいに、人情家で知られる天神組の三代目 久左衛門の子分である新三が訪ねてきた。天神組は北九州は長浜最大の極道一家である。
 『なんか? 新三やなかっか。なんごとね?』『おじき、もうおじきに出てもらわんばどげんしょっもなかとこまで来とるとです』『新三、俺はもうおじきでも若頭でもなか。俺が出てもなぁんもできんばい』・・・
 長くなりそうなのでこの辺でやめとこう(笑) ま、それほど嘉助は頼られていたって話だ。その嘉助が愛した玄海の海は、令和の今も皆の暮らしを見つめている。その海で生まれた塩はお漬物に最適です(知らんけど)。

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