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今さらながら刺身を語ろう 9

ー クセ強めの魚たち ー

《ホウボウ》
 なんでこんな色をしてるんだろう?  あの胸びれに何の意味が込められてるんだろう? 私は他のことはともかく、魚のことについてだけは普通の人より詳しいと自負しているものの、魚語までは話せないから、他の魚たちが、あるいはホウボウ自身が、あの胸びれのことをどう思っているのかを訊いてみたい。
 とにかく胸びれだけが蝶々のように鮮やかできれいな色をしたホウボウ。古来よりハデな魚は美味くないものと相場が決まってるが、コイツは別。頭が大きいから食べるところは少ないんだけど、刺身はその場の人が思わず顔を見合わせるほど美味い。

ホウボウ
左右3本ずつの脚で海底を歩く海の蝶
近似種に『カナガシラ』というのがいるが
こっちの方は鮮やかな蝶のヒレを持たない

《ゴンズイ》 ーテーマ画像ー
 ともすれば100匹以上にもなろうかという小さな魚の塊が、塊のまま海中を高速移動する。ゴンズイたちはあたかも1つの集合体であるかのように、一糸乱れず丸い形をなすのでゴンズイ玉と呼ばれる。その玉の動きは、日体大の集団行動を思い出させる。
 この不思議な黒い物体を捕まえようと、海面に上から『エイ!』と手を突っ込んだりしてはいけない。毒針にやられるからだ。コイツを釣ってしまい、釣り針を外そうと 胸と背中のヒレの横にある針が刺さった事故現場に居合わせたことがあるが、大の男が 釣りを続ける気が失せてしまうほどの痛みに悶絶していたものだ。
 大きな個体なら刺身でもイケると叔父は言っていたが、独特のヌメリがあって臭そうなこともあり、五島に暮らしていた時期にも食べたことはなかったし これからもないだろう。

ゴンズイのトゲ(毒針)
背ビレ横と両胸ビレ横の3ヶ所に針はある
ヒレが毒針になってる魚は多い中、
コイツはヒレとは別に毒針を持っている


《タツノオトシゴ》

 一般の人が持つタツノオトシゴについての勘違いポイントをあげてみる。

 1.魚類じゃないよね?
 2.水族館にいるんでしょ?
 3.大きさは5㎝位じゃないの?


 こんなもんだろうか? もちろん3つとも不正解だからここに挙げたんだけど、1.彼らはれっきとした魚だ。2.そしてちょくちょく見かけるから珍しくもない。3.最後に 大きなヤツは15㎝くらいあってビックリする。
 そもそも身は少ないし、食う気にならんので 刺身を試したことはないけれど・・・。

タツノオトシゴ
メスはオスの腹の袋に産卵する
だから妊娠・出産はオスの仕事になる
つくづく不思議な魚である・・・


《マトウダイ》
 マトウダイは体の真ん中に丸い模様があるから、マト鯛=マトウダイ なのだと長い間思っていたが、本来の名前は口を伸ばした時、馬の顔に見えることからマトウダイと呼ぶらしい。馬頭(マトウ)ですね。
 頭がデカいので大きな個体でないと あまり身は取れないが、白身の刺身を肝醤油で食べるなど、カワハギみたいなことができる(カワハギの方が断然美味いが)。
 しかしコイツみたいに口だけがニョーンと伸びる魚は 他にも案外いるのよねー。キモチ悪いからぜひ画像検索してみてほしい(笑)

マトウダイ
スマした口の状態
体の中央にマトがある
口をニョーンと延ばしたところ
要するに馬頭(マトウ)の状態


《ヤガラ》
 コイツはなかなかにデッカくなって、全長1.5mくらいのヤツを見たことがある(調べると2mくらいまで大きくなるらしい)。しかし体長の3分の1を口が占める(『食べるための器官』という意味ではほぼ2分の1である)この魚、五島にいた時もそれほど頻繁にお目にかかった訳ではないが、獲れると嬉しかった。なぜなら変わった魚体を見たり触れられるという他に、単純に美味しいからだ。煮物や揚げ物もなかなかのものだが このシリーズのテーマである刺身にすると本当に深みのある味わいがある。
 若魚(4,50㎝ 前後)のうちは浅瀬でも見かけることがあり、私が小さい時分、湾内に侵入してきた50㎝くらいのヤガラ十匹以上が、悠然と桟橋からすぐの海面近くを泳いでいるのを見つけたことがある。小学生の私はそれをなんとか晩ご飯のおかずにしたかったのだが、その時は手ブラで道具も無く、歯がゆい思いをした思い出だ。

(赤)ヤガラ
変な形をしているチャンピオンかもしれない
口の先端は尖ってはおらず案外大きく開く
ちなみに口の部分は ほぼ食うところが無い


 私が知ってる魚種など その数はたかが知れている。世の中にはとんでもない種類の魚がいて、人が認識しているのは ほんの一部なのかもしれない。もっともっと風変わりなヤツはいるんだろうが、今日はこの辺で。

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