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ある星降る夜の出来事
『さてと。これで全部かな』
『うん。引越し屋さんの荷物、案外たくさんあったわね。いつの間にあんなに増えたんだろう』
『後の物は週末に。結局お前の家に送って良かったんだよな。・・・お義母さんまた泣くだろうな』
『ああ母さんね・・・仕方ないわよ』
『なんか今になって色々考えてしまうんだよなぁ。俺たち本当にもう終わりなんだよなって』
『そうね・・・。でも私たちきっとこうなるのが自然だったんだよ』
『なんか悲しいよな。この子の記憶に俺は残らないんだもんな』
『子供の話はやめようよ。時間かけて2人で話し合って決めたことじゃない』
『・・・いつもお前はそうやって自分の考えばかり言ってきたよな』
『何言ってんのよ、あんただって・・・。ダメダメ。ケンカしてお別れするのはやめようよ』
『・・・・・・』
『初めて私の母さんに会わなきゃってなった時のこと覚えてる? あんたさ、自分のバカがバレたらイヤだってあいさつの練習してたじゃない。でも結局母さんの前で緊張し過ぎてみんな忘れたよね。てのひらにまで何か書いてたのにね。え?え? 嘘? ヤダ、あんた泣いてんの? やめてよバカ』
『・・・本当にもう終わりなんだよな』
『・・・きっとこの子にとってもこれがいいのよ』
『そうか・・・。もしさ、何年か後でまた会えたらどうする?』
『どうする? そうだなぁ、もう私違う人の彼女になってるわね。結婚してるかもね』
『こいつを一人で育ててんだぞ。そんな暇はないさ』
『そっか。でもそれでもいいって人があらわれるかもしれないじゃない』
『バカ言うなよ。お前には俺みたいなダラシなくていい加減な奴しか面倒見られないんだよ』
『あんたこそバカ言わないでよ。面倒見てたのは私の方じゃない。・・・アホらしくってなんか泣けてくるわ』
『・・・そう。そうだよな。・・・元気でな』
『あんたもね。あんまり飲んじゃダメよ。・・・こんな私でごめんね』