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国から見張られてる生活

 パリオリンピックの女子卓球には熱くなった。日本の女子卓球界は今、史上最強だと思う。早田、伊藤、平野 という同い年のライバル3選手が名を連ねる中にあって、さらに張本選手という飛び切りの新型兵器まで現れた。まさに黄金時代だといえる。我が家では柔道に引き続き、卓球競技が行われる日には、TVの前で家族全員が試合の行方を見守ったものだ。

 ところで悲願の初出場、そして見事メダリストになった早田選手が帰国直後の会見で、アンパンマンミュージアムと鹿児島は知覧の特攻平和会館に行きたいと発言したことが話題になっている。しっかりとした目でそう言った彼女を見ながら、なんて可愛らしく、また意志のある聡明なお嬢さんなんだろう と思ったものだが、中国ではそうは受け取らなかったらしい。

 彼の国において『早田ひなの発言はファンを怒らせ、真剣に受け止める必要がある』とのタイトルが付けられた記事で、早田選手の発言を追及したのだという。また早田選手が開設した『微博=中国版X』のフォロワーは16万人だったが、わずか数日で4万人のフォロワーを失い、同じ競技の仲間として仲のよかった中国代表の女子エースの孫穎莎選手と男子エースの樊振東選手が、フォローを外したことが中国で話題になっているとのことだ(孫選手は準決勝で早田選手を破って握手をする際、早田選手の左手の怪我を気遣っていたことが印象に残る)。

 あきれた。なんじゃそら? 『生きていることを、そして自分が卓球をこうやって当たり前にできているということは、当たり前じゃないというのを感じたい』という 早田選手の崇高な考えにケチをつけるたぁ、ゲスの極みであろう。彼女はなにも戦争を賛美したり特攻を美化しているわけでもあるまい? ましてや国や家族を守ろうと 自分の命を犠牲にして散った英霊は、あなたたちの国土や艦船を目指したんじゃないぞ! と私は声を大にして言いたい。

 4万人フォロワーが減る? その発言でフォローを外す? ・・・頭大丈夫か? 的外れも甚だしい! と思ったが、次の瞬間 私は ああそうか! と気がついた。令和の今でさえ 報道の自由はおろか、個人の発信だって大幅に制限される国であることは周知の事実である。早田選手の例の発言に対して『けしからんから認められん!』というのは国の方針なのだ。よって2人のエースはその方針に同調せざるを得なかったのであろう。国民にも影響力のある有名人であり、それは同時に国から見張られることを意味するからだ。
 そう考えるとつくづく可哀想だと思う。いや早田選手もだが、そんな国の威信を背負わなければならない選手たちが。


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