【詩】何もない世界
その世界には 何もない
悲しむ人も 醜い人も
昨日から 学校に行けなくなった子
弱いものいじめをして 何も感じない子
幼い子を 事故でなくした母
幼い子を轢いて 自己保身に走る逃亡者
借金を抱えて パチンコばかりの息子
育て方を間違えたと 頭を抱える父親
何も変えられずに うんざりするあなた
そんな人たちはいない
その世界には 何もない
悲しい理由も やるせない理由も
自分がどうして弱いのか どうして意地悪なのか
自分がどうして泣いているのか どうして罪を犯すのか
自分がどうして逃げているのか どうして後ろめたいのか
どうしてうんざりしているのか
誰も何も分からない
その世界には 何もない
幸せも不幸も 感じない
日曜日の朝 コーヒーの香りが心をほどく
家族はリビングに集まって 何気ない話をする
一陣の風が窓から吹き込んで カーテンがなびく
温かい日差しに あなたは目を細める
それが幸せなことだと あなたは知らない
誰も知らない
何もない世界