【恋愛なショートストーリー】「ずっとずっとそばに」

暖かくなりそうな予報だったから君も俺も春の薄着だった。それなのに急に曇ってきたから寒くなって参加していた野外イベントは途中退場。
ホットなラテを買って車に戻った。エンジンをスタートして車内温度は上がり始めたものの寒さによる途中退場は予定になかったから次の行き先が決まらない。君は隣でホットなラテをすする度に吐息と声が混ざった「あーーっ」の繰り返し、俺はナビとスマホを探っているけれどまだ決まらない。
「ねぇどこか行きたい所ある?」
君から吐息と声が混ざった「あーーっ」が聞こえなくなって何かを言いたそうだけど何も言わない。
「俺が決め……」

「お風呂に入りたいっ!」
被せてきた君を見るとさっきまでしてなかった「パイスラッシュ!」
「わかった、わかった何も言わなくていい!」と言おうかと思ったけれどシートベルトをしただけ、俺の考えすぎか?
走り始めるとキミの頭は俺の膝にのせて眠ったのか何も言わない。車内が暗くなって停車したところで「目的地に到着しました」と顔を上げてニコッ。
エレベーターは二人だけ、眺望からのどこからの視線でもエレベーター内のカメラも関係なく指とラテが香る吐息を絡めて絡めた。
キミが入りたかったお風呂で思うがままに楽しみ、キングサイズで何もかもを忘れて互いに溺れた。

眠る君の光る鼻先を指でなぞる

「ずっとそばにいてね」

そんな事を言うから泊まってしまおうかと思ったけれど泊まるには時間が早い送っていくにもまだ早い。まだ君と一緒にいたい。
「少し早めのディナーに行こうか、何系が食べたい?」
もう一度聞いたけど今度は本当に俺の膝で眠っているみたい。
君が好きそうなお店に車を停めたら顔を上げて
「目的地に到着しました、運転お疲れ様でした」とニコッとした。
どこに着いたのかとキョロキョロしてわかった君は

「ここ私の好きなお店だっ!」
嬉しそうな笑顔がたまらない。

「俺だってずっとずっとそばにいて欲しいよ」



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