恩があっても私はこの人のこと、
私は出会う人に、周りの人に恵まれている。
久しぶりに前働いていた職場のオーナーに会った。
学生の頃から随分とお世話になった方。
尊敬して憧れて、飲食店で働きたいと思って教員からの進路も変えたくらいだ。
仕事を辞めてから店舗のSNSを見ながら気になってはいたが、今は距離も離れてたところに住んでいる。だけど全く関係が切れてしまうのもなぁとどこか昔受けた恩でつなぎとめているような自分がいた。
前の職場が節目を迎えたので、思い切って訪ねることにした。
ちょうどお店のある市内に行く、このタイミングを逃したらきっと行かないと思ったから。
扉を開けると雰囲気のいいスタッフさんが迎えてくれた。
ほっとしながらも、商品を選ぶ手が震えている。
久しぶりで緊張してるのかな。
会えないままお会計も終えたが、思い切ってオーナーがいるか聞くと、呼びに行ってくれた。
わぁ懐かしい姿だ…。
どんどん目がうるんできて涙が出た。
なんで泣いてるのー!と言われたけど、感動の涙ということにしてごまかした。
きっと会えた感動じゃない。
トラウマが蘇ったような、存在に恐怖を感じていたあの頃の気持ち。
笑顔で話し終えて店をでたが、心は怯えていたんだな。
店内での会話を思い出す。
「どう?保健室の先生は向いてる?」
「学校でもやらかしてる?」
働いていたときにかけられた言葉を思い出す。
「あなたは飲食の仕事向いてません。」
「自分がやばい人、やらかすんだってこと認めた方が楽になるよ。」
ちょっとサービスしてくれる気前の良さも、私への接し方も、あの頃と変わらなかった。
私は出会う人に、周りの人に恵まれている。
このオーナーもそう思った一人だった。
だから、マイナスな感情を抱くことに抵抗がある。
働いていたときもそうだった。
お世話になったし恩があるし、嫌いになりたくない。
辞める少し前から薄々と感じていたけど、見て見ぬふりをしていた気持ち。
辞めて一年以上経って再確認した。
行くかどうかものすごく迷ったけど、今回行ってよかった。
もう行かない。もうこの人には会わない。
そう決めることができた。