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【本要約】山口周さん著『独学の技法』 ※ネタバレ注意

今回は全力で本要約!ということで、
独立研究家として幅広くご活躍されている山口周さんの著作
『独学の技法』を取り上げたいと思います。

まず1周目読み終えた感想はですね、
「これからの時代に必須のプロセスやな…(しみじみ)」
といったところです。

私自身、学生時代から厳しい親の元で塾には行かせてもらえず、
独学を強いられてきたわけですが、だからこそ
独学の様々なメリットも体感として身に沁みて理解していますし、
逆に俗に言われる

「独学はムダに時間がかかる。
塾やスクール、コンサルに重課金しショートかっとすべきだ。」

という意見も根強いですが、
そのショートカットにより起こりうる
”結果を出しているけど中身薄っぺらい人”
の量産には目を見張るものがあり、考えさせられるものがあります。

独学は正解を明瞭に指し示してくれる人がおらず、
孤独で、辛く苦しい側面は当然あります。

しかし一方で独学として己で舵取りをするからこそ、
本当に自分にとって大切で必要なエッセンスを
効率よく回収することが、
特に長い目を見て考えれば可能であると確信しています。

そんな「独学の重要性」を再認識させてくれた本書を
通して、今一度、独学のイロハについて
要約という形で徹底解説させていただきます。
(要約にしてはおそらく冗長な文章になるかと思います。)

なお、以降に示す構成は、
再編成したものであり、実際の本書の構成とは異なりますので、
そこだけご了承ください。
気になった方はぜひ本書を手に取ってご覧ください!

私なりに本書をゴリっと要約して
わかりやすくしてますが、それにより拡散力が高まれば、
下記にあるように著者にとっても本望であることを願っております。笑

私は、本書を通じて、自分が構築した「独学の技術」を社会にばら撒くことで、企業内にとどまりながら、企業の力をうまく活用して社会変革をリードしていく「知的な革命家」をたくさん育成したいと考えています。

本書p.22

では本題へ参りますっ!



Part1「Why "独学"?〜いつの時代も独学が世界を豊かにする〜」

まずこの章では、
なぜ情報溢れ効率化が急進したこの時代に
”独学”が大切になってくるのか、その理由を
本書の主張を引用しつつ
私なりにゴリっとわかりやすくまとめたいと思います。



1-1「本書の独学の定義〜”知的戦闘力”を上げ”死ぬまで自由な人生”を実現する〜」

まず本書の独学の定義は、
単に”資格勉強や仕事の実用のために学ぶ”という姿勢だけにとどまらず、

”知的戦闘力”を上げ”死ぬまで自由な人生”を実現することを
独学の目的としています。
では、それぞれの言葉の定義を掘り下げておきますと、

”知的戦闘力”とは、一言でいうと
「自分の脳みそで考えて、意思決定を行う力」
になります。そしてもっというと戦闘力なので、
仕事術や仕事力と同様にその力が、
社会的に価値となり対価として金銭が発生しうることも
意味しています。
要は、”頭を使って生きていく力”というイメージですね。
これは何も仕事に限らず、家庭生活においても、
育児においても、趣味をする際にも役立つ力になります。
応用可能性は無限大ですね。

そして”死ぬまで自由な人生”はよく知られる言葉でいうと、
教養やリベラルアーツを指します。
教養が大事と聞くと、多くの人は
「博識な人はすごい」だとか
「自分にはそんな記憶力はない」と謙遜する人がありますが、
真の教養は記憶はあまり関係がないのです。
本書でもこのように指摘があります。

世の中には「知っていること」自体を一種のファッションのようにひけらかして悦に入っているみっともない人で溢れていますが、司馬遷がかつて指摘したように、大事なのは「知っていること」ではなく、それを「より良い人生」に反映させることでしょう。

本書p.136

またなぜ知的戦闘力や教養が重要かという疑問に対して、
本書では身体能力を引き合いに出して次のように指摘しています。

身体能力というのは世界トップクラスのアスリートと常人とのあいだでも、せいぜい1.5〜2倍程度の差しかないということです。一方で、アイデアを生み出す力は前述した通り、ストックの厚みによって簡単に100倍、1000倍という開きがついてしまいます。肉体的な能力が、どんなに鍛えたとしてもせいぜい一般人の2倍程度の能力までしか高められないのに対して、創造性というのは鍛えれば常人の100倍、1000倍といった開きがつく可能性があるということです。

本書p.194

これは創造力を仕事にしている人の付加価値の大きさを示しています。
さらに補足を加えると、身体能力はアスリート並みに高めたとしても、
20代にピークを迎えると30代、40代は維持するだけでも
多大な労力を要し、早い段階で旬を過ぎてしまいます。

一方で創造力含めて”知的戦闘力”は年を経るごとに、
衰えるどころか、その深みを増していき、
晩年までその力を発揮する大変賞味期限の長い力と言えるのです。

さらには若いうちにより発揮される多量な行動量に対しても、
親和性が高く、指針がぶれにくくもなるため、
若くしてこうした知的戦闘力や教養に対し、
関心のベクトルを向けることができた人ほど、
レバレッジが効いて晩年まで良い人生を過ごせる可能性は
高くなると考えています。

本書でも次のように述べられています。

結論として言いたいのは、現代をしたたか生きていこうとするのであれば、リベラルアーツほど強力な武器はないということです。
 特にビジネスにたずさわる立場にあるのであれば、リベラルアーツを学ぶことは、恐らく人生においてもっとも費用対効果の高い投資になるでしょう。

本書p.227

費用対効果という言葉が出てきていますが、
投資の先として、株式やインデックス、
広義では時間概念として残業時間や資格勉強時間が
挙げられますが、いずれの時間に費やすよりも、
リベラルアーツは遥かに大きいですよ〜
と言っているわけですね。

しかし注意が必要なのは、
だからといって闇雲にリベラルアーツに手を出したところで、
リベラルアーツは大変だだっ広い分野なので、
消化不良になってそこまで身にならずに
終わってしまう危険があるんですね。

そこで本書ではタイトルの通り
「独学の技法」として、
次のように本書の取り扱う主張をまとめています。

本書が、これまでに書かれた多くの「独学に関する書籍」と違う点は、独学を「動的なシステム」として捉え、徹底的に「知的戦闘力を高める」という目的に照らして書かれているという点にあります。

本書p.7

ということで、システムとして独学の技法を自分自身に落とし込み、
知的戦闘力を徹底的に高めていって、
この世の中を渡り歩いていきましょう!

次項ではさらに深ぼって、
独学が必要な4つの理由を述べたいと思います。



1-2「独学が必要な4つの理由」

独学の必要性という議論になると、
「今だったらたくさんの便利なものやサービスに溢れているのだから、
それに乗っかって知識を得る方が効率的なのでは?」
という意見も一定数見受けられます。

たしかに、
ラクして難関大に合格したい。
ラクして医師国家資格を取得したい。
などのニーズに対しては、
独学は不要かもしれません。

しかし本書の定義である
「知的戦闘力を高めるための独学」
という文脈においては、
独学はこれからの世の中を生き抜いていく上で、
今まで以上に重要になっていきます。

その理由を4つ個別に述べます。

理由①「知識の不良債権化〜覚えたことはすぐに腐る〜」

一昔前だと、生き字引のような人、すなわち
頭の中に大量の事実がインプットされていて、
瞬時に知識として披露できる人が、
重宝されておりました。

なぜなら、情報それ自体に価値があり、
知っているか?知らないか?
でより良い人生を送るのに大きな差を生んでいたためです。

しかし現代はどうでしょう。
情報の価値はむしろ皆無になり、
情報が氾濫し過ぎてむしろ皆困っています。

そんな中で大切になってくるのは、
脳内の知識量よりも、
知識の分別をしっかりと行えること、
すなわち”得た学びをどう加工して保存しておくか”
といったことです。

これにはさまざまな手順の心構えを要するため、
独学を通じて反射的にできるようになるまで、
鍛えるとより良い人生が送れそうですね。

理由②「産業蒸発の時代〜スマホはガラケーを駆逐した〜」

産業の視点で見てみますと、
有名な例にガラケーからスマホへの大転換がよく挙げられます。

ガラケーの開発や生産に携わっていた人のことを考えると、
スマホの登場で一気にガラケー産業自体が蒸発して、
失業にまで追い込まれていることがわかりますね。

最近ですと3Dプリンタやドローン、
さらには生成AIの技術革新の大衆化に伴って、
さまざまな産業で同様の現象が起こっています。

あなたの属する産業がいつそういった脅威に晒されるか、
正確に言い当てられる人はこの世にいません。

だからこそ蒸発した時に備えて、
独学力を高めておく必要があるのです。

理由③「人生三毛作〜あなたの仕事は人生で何度も激変する〜」

上記の産業の例で挙げたのと同様に、
仕事においても激変する可能性は大いにあります。
最近だと生成AIがこの話題をかっさらっていますね。

退屈なデスクワークはその代表例です。
退屈ということはクリエイティビティが発揮されていない、
AIでも処理可能な仕事の可能性が高いです。
そういった仕事はその気になれば、
数年以内にAIによって自動化されます。

そういった仕事においても不安定な情勢の中で、
自分に合った仕事や新たに与えられた仕事を
きっちりとこなしていくためにも、
独学力は大きな武器になり得ます。

理由④「クロスオーバー人材〜高度に組み合わせられる人が無双する〜」

最後にこれからより社会から求められていく人材として、
クロスオーバー人材が挙げられます。

クロスオーバー人材とは、
2つの専門分野を行き来して価値を生み出せる人間のことで、
これが価値創造のプロセスにはかなり重要と言われており、
また昨今不足している人材でもあります。

ひとつの専門性にとらわれずに、
世の中をしたたかに渡り歩くためにも、
やらされ仕事だけではなく、自分の興味関心の赴くままに、
独学で異なる専門性を深めていける人材は、
今後より一層重要なポジションとなってくるわけです。



第2章「How"独学"?〜99%の人は独学を勘違いしている〜」

前章で”独学の重要性”を十分に説明した上で、
ではどうすれば独学を通して知的戦闘力を徹底的に高め、
死ぬまで自由な人生を歩むことができるのか?
その要点をかいつまんでご紹介してまいります〜

2-1「決して”覚えること”を目指さないこと」

これは本書でも本記事でも再三とりざたしていますが、
”知識人”を目指してはいけないということです。
目指すべきは”文化人”。
リベラルアーツを通して広く浅く
”いつの時代も大切な素養”をインプットした上で、
濃厚な原体験を通じて現代を生きる人々に
ポジティブな価値を提供していく。

その中でΠ(パイ)型人材として、
複数の専門性を深めていき、
真に高付加価値な人間へと仕上げていく。

そうした気概が必要です。
そして高付加価値な人間になるためには、
生まれ持っての才能は必要なく、
むしろなるべく早くからの継続的な努力
(しかも自分に合った努力)
が必要となってきます。

これを円滑に行っていくためにも、
後述する4つのモジュールを駆使して、
独学を「システム」として捉えて、
知的戦闘力を着実に身につけていかなければ
ならないわけです。


2-2「独学をシステムとして捉える〜4つのモジュール〜」

本書の言葉をそのまま用いると、
独学をシステムとして捉えるというのは、
下記を表しています。

独学は大きく、「①戦略」→「②インプット」→「③抽象化・構造化」→「④ストック」という流れによって形成されます。

本書p.33

この知的戦闘力を高めていく流れを理解した上で、
独学を進めていきましょうね〜というのが、
本書のサビになります。

では、それぞれの流れを一言で説明しておくと
次のようになります。

①戦略:どのようなテーマについて知的戦闘力を高めようとしているのか、その方向性を考えること
②インプット:戦略の方向性に基づいて、本やその他の情報ソースから情報をインプットすること
③抽象化・構造化:インプットした知識を抽象化したり、他のものと結びつけたりすることで、自分なりのユニークな示唆・洞察・気づきを生み出すこと
④ストック:獲得した知識と、抽象化・構造化によって得られた示唆や洞察をセットとして保存し、必要に応じて引き出せるように整理しておくこと

多くの人は、独学と聞くと②のインプットにばかりフォーカスしがちですが、
真に重要なのは①で事前に戦略を立てることや、
③で得られた知識を抽象化・構造化して異なる事象に転用すること、
そして④ですぐに引き出せるようにストックしておくこと
となってきます。

私自身、もともと独学大好きで合ったため②インプットと③抽象化・構造化
はこれまでの蓄積でかなり洗練してきた自負はありますが、
一方で戦略がまだまだ甘いな〜というのと、
日常生活でも整理整頓が苦手ということもあり、
ストックに関してもかなり雑にこれまで扱っていたので、
本書を読んだことを契機にこのあたりをしっかりと固めて、
独学ライフを歩んでいきたいなと思っております。

私事を挟んでしまい失礼しました、
それではそれぞれのモジュールに関し、
具体的に何をすべきかざっくり解説していきます!


2-3「モジュール①戦略」

ここからはなるべくゴリゴリっと簡略化して進めていきます。
戦略フェーズでは大まかな流れは

①自分の気になるテーマを設定する(常に5〜7つがベター)
②自分の持っているものを棚卸する(身近な人に尋ねる)
③テーマを掘り下げるためにジャンルを絞る(複数がベター)
④インプットへ

といった感じです。
ここでめちゃくちゃ大事なのは、
”何をやらないかを決める”
ということです。
世の中にはたくさんの情報で溢れています。
あれよこれよと全てに手出ししていると、
当然すべて中途半端になりますし、
希少な高付加価値人材にはなれません。

何をやらないかを決めるためにも、
まずは向き合うテーマを決めましょう。
気になるテーマはイメージがつきにくいと思いますが、
著者の例で言えば、
「イノベーションが起こる組織とはどのようなものか」
「美意識はリーダーシップをどう向上させるのか」
「共産主義革命はいまだ可能なのか」
「キリスト教は悩めるビジネスパーソンを救えるのか」
といったテーマを持って独学に臨んでいるとのことでした。
なかなか壮大なテーマですよね笑

でもみんながみんなそんなに壮大じゃなくても良いと思います。
大事なのは、
”自分自身か心の底から興味を持って向き合えるテーマかどうか”
です。

私の例で言えば、ざっと挙げてみるとすると
「10歳までの成長において大事なことは何か?(育児)」
「30代をどう生き抜くことがこの時代でベターか?(キャリア)」
「10代20代の多感な時期に影響を与えるコンテンツとは?(発信)」
「日本をもっと明るく元気にする処方箋は何か?(ライフワーク)」
「大事な人の頼れる相談相手になるための行動は?(人間関係)」
「人同士が争わない世界平和を実現するには?」
あたりでしょうか。
小さいものから壮大なものまで、
常日頃どこかにヒントが転がっていないかな〜と
考えていたりします。

そしてこの個人的に向き合いたいテーマを明確化する
最大のメリットは、情報収集のアンテナが
格段に感度良くなることです。

なんとなくでインプットをしてしまうと、
どうしてもノイズやゴミが多くなり、
インプット自体に疲弊して独学を断念してしまいます。

そんな悲劇を辿る前に、
ある程度自分の中のテーマを言語化した上で、
そのテーマと向き合う際に、
自分の持っているものや、取り組むジャンルを選定してみてください。

自分の持っているものに関しても、
本書では十分に注意して探るよう呼びかけています。
というのも人はつい「自分の持っていないもの」や
「自分の欲しいもの」についつい目がいってしまうからです。

それよりも”自分がこれまで大事にしてきた価値観”に
しっかりと目を向けて、そこを起点に
ジャンル選びを考えてみてください。

ジャンル選びは複数が良いです。
というのも前述している通り、
人はある分野とある分野の組み合わせでしか、
新しい価値を創造できないからです。

教育業界で活躍されている藤原和博さんは言いました。
「3つの分野で1万時間かけて100万人に1人の人材になりなさい。」と

すなわちそれぞれの分野で、周りの100人よりも秀でた能力を身につければいいんです。
それが3つ掛け合わされば、100✖️100✖️100=1,000,000
100万人に1人の逸材の完成です。
きっと巷では、「○○さんは天才だ」と言われるでしょう。
気にすることはありません。
3つの分野に絞り、他の分野を捨て去って努力することで、
希少性が生まれるのです。
こうなれば「○○さんだからこの仕事をお願いしたい」という
案件がたくさん舞い込んできます。

戦略を立てる際はこのような形で、
まずジャンルによらないテーマを選定し、
自分の持っているものを棚卸し、
数あるジャンルから2〜3個を選び取ってインプットを開始しましょう!


2-4「モジュール②インプット」

独学の戦略をしっかりと立てたら次はいよいよインプットです。
インプットにあたっての量的な目安を筆者は次のように語っています。

あるカテゴリーを独学で学ぶとき、対象となるカテゴリーについて一定レベルの知見を獲得するためには、ある程度まとまった量の勉強が必要になります。
 たとえば脳科学について、一定の見通しを持てる程度の知見を学びたいということになると、最低でも5冊程度の入門書と5冊程度の専門書を読み込むことが必要になります。ということは、何らかのカテゴリーについて独学をする際に、最低限でも10冊程度のインプットが必要ということになります。
(中略)
平均的な大人が1分間に読める文字数はだいたい200〜400語であり、平均的なビジネス書は10〜12万字前後となっています。仮に読書スピードを中間レベルの1分間300語とした場合、一般的なビジネス書であれば5〜6時間程度で1冊読了できるということになります。
(中略)
仮に独学のために使える時間が1日平均1時間程度だとすると、つまり1週間で1冊程度、年間では50冊程度のインプットがまずは精一杯だということになります。

本書p.61

まとめると、
1年間にある程度頑張れば5つのジャンルで
インプットを実施できるということですね。
なんだかワクワクしてきましたね。

その中で本書は「読書の技法」として
インプットの目的を4つに分類しています。

  1. 短期的な仕事で必要な知識を得るためのインプット(主にビジネス書)

  2. 自分の専門領域を深めるためのインプット(ビジネス書+教養書)

  3. 教養を広げるためのインプット(主に教養書)

  4. 娯楽のためのインプット(何でもあり)

そしてビジネス書と教養書で読み方もまるで異なると
下記のように指摘しています。

まず、ビジネス書の読み方について指摘すれば、基本は乱発される安易系を避けて、できるだけ名著を押さえ、読書ノートは作らない。狭く深く読むのがビジネス書ということになります。
 一方で教養書の読み方について、基本は雑多な本を幅広く気の向くままに読み、読んだら読書ノートを作る。広く浅く読むのが教養書ということになります。

本書p.92

ここで注意したいのが、
どうしても後回しにされがちな教養書は、
淡々とコツコツと気になるものからしっかりと消化していくこと。
人間はどうしても近視眼的になりやすいので、
ついすぐに効きそうなものを求めてしまいます。
そんな原始的欲求をグッと堪えて、
”緊急ではないけど重要なこと”に費やす時間も
しっかりと確保しておきましょう!

あとはインプットの目的は短期で良いです。
今の興味関心で気になるビジネス書、教養書に
手を出していけば良いです。

理由は簡単で、
あなたがこれからどのような人生を歩むかは、
自分自身も正確に決めることがほぼ不可能だからです。
色んな力が働いて落ち着くべきところに
落ち着いていきます。

そんな時に大切なのは、
今この瞬間に五感をフルに活用して、
インプットできているかどうかです。

その軸に照らし合わせると、
興味もないインプットに時間を費やすことは
不毛でしかないことがわかります。

著者も以下のように述べています。

「将来きっと役に立つだろう」という理由で読むべき本を選別する必要はないということです。常に「いま、ここ」ですぐに役立つとか、あるいは面白いとかといった刹那的な選好がずっと重要であって、あまり中長期的な目線で読書をしなくてもいいと私は考えています。

本書p.97

そして最後にインプットに関して、
ついつい仕事で忙しくなると、
「必要になったら一気に読書しよう…」と
後回しにする人がいるかもしれません。
そんな人に届けたい本文を引用してこの節を終わりにします。

「読書は短期目線でいい」という指摘を別の言葉で表現すれば、「無目的なインプットこそが大事」ということになります。なぜかというと「無目的なインプットをやってこなかった人は、肝心要の時期にアウトプットできなくなる」からです。
 どういうことでしょうか。まずは基本的な前提から確認しておきましょう。
 それは「アウトプットとインプットの量は長期的には一致する」という前提です。これは要するに「人生全体で見てみれば、アウトプットの量とインプットの量は同じだ」ということです。アウトプットする人はインプットしている。逆にいえば、インプットせずにアウトプットしていれば、どこかで涸れてしまうという話で、実に当たり前の前提です。
(中略)
継続的に質の高いアウトプットを出し続けている人に共通しているのは、「人生のどこかでひたすらインプットし続けている時期がある」ということです。
(中略)
これが世の中で「よく言われる勉強法」のアンチテーゼになっていることに気づいたでしょうか? 一般に、ビジネスパーソンの勉強法に関しては「いずれ必要になったら、そのときに必要な勉強をすればいい」というものです。こういう意見を言う人は多いし、さらに言えば合理的にも聞こえます。しかしこれは、やっぱりダメだろうと思うのです。
「インプットが必要になったとき」というのは、もう「舞台に立て」と言われているわけですから、そこで勉強をしているようでは、どうしても付け焼き刃的な知識の表面的なインプットにならざるを得ません。
 そして、いざ他者からアウトプットを求められる時期になって、その人らしいユニークな知的アウトプットを生み出せるかどうかは、この無節操なインプットの蓄積によると考えれば、若いときの無目的で無節操な勉強こそ、継続的に知的生産力を維持するために重要だ、ということになります。

本書p.105

ちょっと引用が長くなりましたね。
まさに”無目的だけど情熱を注げるインプット”が
後々に大きな差になることを熱弁されているわけです。


2-5「モジュール③抽象化・構造化」


さてインプットのプロセスが固まってきたら、
今度は抽象化・構造化のプロセスになります。

抽象化・構造化とはまさにイノベーションの領域で、
「これってこの分野にもこの分野にも言えるんじゃ?」
と言うような気づきのことです。

アインシュタインが実にわかりやすく図で示してくれています。

簡単に解説すると、
Eという直線が、ある人の原体験を示しています。
そしてインプットをしつつ五感を研ぎ澄ませていると、
ふとA:公理系というものが舞い降りてきます。
これが先述した”イノベーション”になります。

その舞い降りたものに説明を加えていくのが、
S:導かれる命題の部分の作業になりますね。
最近だとメタ認知などがここに関連してくる思考体系だと
個人的には認識しています。
ここで初めて公理系と原体験が結びついて
説得力のある法則や概念として見出されます。

しかしながら、
この公理系の厄介なところは、
インプットが不十分だと過去に誰かが導き出していること
をなぞるに過ぎないですし、

公理系を導き出したり、
イノベーションを起こすための明確なロジックは
存在しないというのが現在の結論となっています。

すなわち、
その時が来るまで
粛々とインプットして
ストックを作りまくれということですね。


2-6「モジュール④ストック」

無事に独学の戦略を立てて、
そこに基づいて大量のインプットをし、
メタ認知により一旦は何に使えるかわからんけど、
抽象化・構造化を実施したとします。

その後に必要なプロセスが、
”ストック”になります。

著者はこのストックのイメージを海にいる魚で例えています。
登場するのは下記の4つ
海:この世の全てのモノコトが存在する場所(すなわち世界)
魚:あるモノコト(知識や理解、抽象化・構造化したもの)
冷蔵庫:あなたの脳みそ(記憶)
イケス:外部の情報媒体(著者はエバーノート)

この例えを用いると、
海の中から魚を釣り上げてくるのがインプット、
魚をいざという時に活用するために加工するのが抽象化・構造化
になります。

そして得られた魚はまず初めに冷蔵庫に格納されますが、
当然冷蔵庫のキャパシティはたかがしれているので、
大した量のインプットを保存しておくことはできません。
かといって容量いっぱいだと言って、
海に放出してしまうと、いざという時に
用いることはほぼほぼ不可能です。

そこで登場するのが最後のストックです。
イメージは自分専用のイケスに釣った魚や
加工した魚を保存しておくというもので、
著者は精度の高い検索機能がついていればなんでも良い
ということでエバーノートを使用しているとのことでした。

ちなみに「紙のノートではダメなのか」という指摘に対しては、
容易に検索ができない点と、
書き写す作業に時間がかかってしまうため、
当初の目的である「知的戦闘力を高める」ものとは
少し外れてしまうと著者は指摘していました。

以上が動的システムとしての独学の
4つのモジュールになります。

最後に肝心要の読書の際の要点を再度まとめさせていただきます。

【おまけ】読書術まとめ〜知的戦闘力を高めるために〜

下記に箇条書き的に、
知的戦闘力を高めるための読書術を
まとめておきます。

  1. ビジネス書は数少ない名著を深く読み込め

  2. 教養書は数ある名著を浅く広く網羅せよ

  3. 若い時ほど無目的で情熱的な読書を

  4. 1周目は再読の価値があるかどうかを見極めるため

  5. 1周目には本に直接アンダーライン

  6. 再読時はより価値あるアンダーライン5〜9つに付箋

  7. 三読目はストック媒体に転記(後で読むことを意識、十分程度)

中でも特に、
三読目に転記する際に意識することが、
転記とセットで記入しておく示唆と行動になります。

①面白かった事実、表現
②ビジネスや実生活に対する示唆
③具体的な行動の仮説

この3点をセットでストックしておくことで、
ストックの質は段違いに上がります。

ぜひ実践してみてください!


第3章「教養ジャンル一覧〜自由になるためのリベラルアーツ〜」

教養というと、「おれ知ってんだぜ、ドヤっ」
といった知識自慢のためのインプットと思われがちですが、
真の教養とは一個人とその周辺の人が
「自由になるための」知識や経験のことを指しています。

決してそこを履き違えることなく、
これからあげる教養科目の代表的な分野を
「なぜそれを学ぶことが自由につながるのか?」
という視点で見ていき、気になるものに関しては
掘り下げて学んでみてください。

参考までに著者が主張する
教養が「知の武器」になる理由を5点挙げます。

①イノベーションを起こす武器になる
②キャリアを守る武器となる
③コミュニケーションの武器となる
④領域横断の武器となる
⑤世界を変える武器となる

では、それぞれのジャンルを
簡単にご紹介していきます。

3-1「歴史〜過去の記録から未来を予測する〜」

「歴史は繰り返される」という言葉もあるように、
人は過去から学べないので、
多くの指導者は繰り返し同じミスを犯します。

また人間の本質的な部分は数千年単位では
そうそう変わらないので、
歴史を学ぶことから未来を予測することも
可能になります。

3-2「経済学〜マネーゲームに勝ち続ける〜」

経済学は言うまでもなく資本主義社会の根幹を成しており、
ビジネスの基本的なルールを学ぶことができます。
また、「価値」という概念の本質について洞察を得られることも
経済学を学ぶ大きな意味になりますね。

3-3「哲学〜自分の頭で考える力を鍛える〜」

哲学というのはわかりやすく言えば
「疑いの技術」です。
哲学の歴史において、哲学者たちが向き合ってきた問いは
基本的に二つしかありません。それは
①この世界はどのようにして成り立っているのか?
②その世界の中で、私たちはどのようにして生きていくべきなのか?
です。
こうした問いと向き合うことを通して、
自分の頭で考える力を追体験することができます。

3-4「経営学〜ビジネスの共通言語を知る〜」

経営学においても基本は、定番中の定番をしっかりと押さえること。
これに尽きます、そして、定番の書籍をしっかりと自分のものにした後は、自分の仕事と関連する領域だけをアップデートしていく、ということで十分だと思います。
 このアドバイスは、個人的な大失敗がもとになっています。というのも、いまから10年以上前、経営学に関する知識をまったく持たないままにコンサルティング会社に転職した私は、ビジネススクールで用いられている教科書を中心に、経営学に関連する定番の書籍を、2年間かけて全て読了してやろうと考え、それを実行しました。
 しかし、これは極めて効率の悪いやり方で、
(中略)
私は過去の経験から、経営学を独学するのであれば、必ず古典・原典に当たることが重要だと考えています。

本書p.263

3-5「心理学〜人間の”不合理性”を知る〜」

心理学は人間の不合理な心理に迫る学問です。
特にマーケティングや顧客満足を考える際には、
基本的な枠組みとして必須の知識になってきます。

3-6「音楽〜全体構想の良し悪しを直感で判断する〜」

私は音楽には疎いので、
著者の主張を引用しておきます。

交響曲を聴いて直感的に感じる「良い・悪い」というのと同じように、事業プランを判断するべきだといっているわけです。このような「構想の良し悪しを判断する感受性」は、音楽以外に鍛えるすべがありません。

本書p.275

3-7「脳科学〜人間のエラーを未然に防ぐ〜」

脳科学は心理学と類似しておりますが、
人間の非合理性の一つでもあるエラーを理解、予測して
未然に防ぐ仕組みづくりを行うためにも
原理原則を学んでおくことは大切です。

3-8「文学〜”実のある嘘”から人間性を深く理解する〜」

文学を学ぶ意味に関しては2つあり、
1つ目はよりよく世界や人間を理解するための情報として、とても有用だということ、
2つ目は優れた文学作品が「実のある嘘」というように、たとえ嘘であったとしても、そこに「人間性」を深く理解するためのよすががあること
を著者は挙げております。

3-9「詩〜”言葉の力”を身につける〜」

特に重要なのがメタファー=比喩の用い方です。詩というのは、もっとも濃密にメタファーが埋め込まれている文学作品ですから、メタファーを学ぶにはもってこいの題材なのです。

本書p.288

3-10「宗教〜特定の思考・行動パターンを理解する〜」

各宗教がどのような教養の体系を持ち、信者にどのような思考や行動の様式を求めているかを知ることが、ビジネスにも重要な示唆を与えてくれます。

3-11「自然科学〜新たな発見や仮説をビジネスに活かす〜」

自然科学の領域における新たな発見や仮説が、ビジネスの世界で起きていることを解明するためのきっかけになることは少なくありません。

おわりに

最後まで読んでいただきありがとうございました!
本書はとてもシステマチックに独学の技法についてまとめてくれていて、
私自身も戦略とストック手法を改めて見直した上で、
これからの独学人生を歩んでいこうと
行動を見直す良い機会となりました。

ぜひ読んでくださった方は、
「あなたが向き合いたいテーマ」を
コメントでいただければ幸いです。

ではまた!


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