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【岩石マニア】石垣島巨石めぐり 番外編|by 鈴木邦彦@石垣島|石垣島十名山(前編)

【石垣島巨石めぐり】をご覧いただきありがとうございます!ギャグ漫画家兼 クライマー兼 岩石マニア の鈴木邦彦と申します。

さて、石垣島でさまざまな新しい巨石を探すうち、山や沢もあちこち歩き回る日々が続きました。マーペーを崖側から登ったり、アマユナーの滝を下って遊んだり‥。
石垣島の複雑に入り組んだ地質・岩質がつくりあげた山々は、巨石と同じように、力強く奥深い美しさに富んでおります。

しかしどうにも、石垣島でのアクティビティや観光スポットは海のものに寄りがちです。人々の興味もやはり海に寄りがちに感じます。四方をこれだけ美しい海に囲まれているので、当然っちゃ当然かもしれませんが‥。
少しでもこの島の山の魅力をより多くの方に伝えられないかと思案し、及ばずながら、石垣島10名山を選定してみることにしました。

もちろん異論やご意見は大歓迎です。これをきっかけに石垣島の山好きの方と語り合える機会ができると大変光栄です。


選定の基準

選定基準は、日本100名山にほとんど準ずることにします。
つまり「品格・歴史・個性」と標高です。
標高はキリよく200m以上といたします。

以下が選定基準の詳細です。

  • 山の品格 - 人には人格があるように、山には『山格』のようなものがあるとし、誰が見ても立派な山だと感嘆する山であることを、第一の基準とします。

  • 山の歴史 - 昔から人間との関わりが深く、崇拝されている山であるというような山の歴史を尊重し、第二の基準とします]

  • 個性のある山 - 芸術作品と同様に、山容・現象・伝統など他には無いような顕著な個性をもっていることを、第三の基準とします。

上記の基準に加えて、観光的に開発されつくして「山霊のすみかがなくなっている」ような山は選ぶわけにはいかないとされています。(今後、石垣島の山々が乱暴な開発で切り拓かれないことを祈るばかりです。)

標高の基準によって、市民に愛される前勢岳(197m)や、アカフチのシーサーとティラ石の伝説で知られる大浦山(192m)は、今回は泣く泣く外させていただいております。。ご容赦くださいませ。

それではさっそくご紹介してまいりたいと思います。


1.於茂登岳

まずは沖縄県最高峰、於茂登岳。新日本100名山にも選ばれており、文句なしに石垣島(というより沖縄県)を代表する名山です。
遠くからみると鮮やかな緑色の山体ですが、花崗岩からできている岩山です。

標高は526m。内地の山々に比べると低いように感じますが、この小さな島でこの高さは壮観です。晴れていれば島のいたるところから姿をみることができます。

於茂登岳遠景:wikipediaより引用

石垣島北部の東西に連なる於茂登山系のほぼ中央に位置し、名実ともに石垣島の中心と言えます。

また、古くから霊山として信仰の中心的存在でもあります。山名の「ウムトゥ」は「島の大本」を意味すると言われます。

『琉球国由来記』によると、名蔵村の御嶽は於茂登の神「ウムトゥテラシィ」の拝礼所で、於茂登の神を祀る祭事が島内の多くの御嶽で行われたとされています。

ウムトゥテラシィの響きから、アマテラス大御神との関連も考えられます。

また『琉球国由来記』には次のような伝記もあります。

首里の弁ヶ岳、於茂登岳、久米島の三神は日本から渡来した姉妹であり、二番目の神は妹と一緒に久米島に住んでいたが、自分の山が妹のいる山より低かったので、八重山に移ってもっとも高い於茂登岳にて島の守護神になったのだそうです。

東部に水源をもつ宮良川や南部に水源をもつ名蔵川、北部に水源をもつ荒川など、豊富な水を蓄えていることでも知られます。石垣島の生命の源と言えます。

数ある於茂登岳の滝のひとつに子供と出かける筆者

ボルダリングエリアも山中に数多く点在します。登山道中にも巨石がごろごろ転がります。

またさまざまな動植物のすみかとなっており、アサヒナキマダラセセリやカンムリワシ、またはオモトソウなどの貴重な生物も多く暮らします。そんなこんなで語るとキリがありません。この辺で次にまいります。

2.桴海於茂登岳

続いては桴海於茂登岳です。於茂登岳と混同されがちですが、隣の別の山です。
標高は477m。
於茂登岳の北東約2kmに位置し、石垣島では於茂登岳に次いで2番目に高く、沖縄県全体でも3番目に高い山です。地質的には於茂登岳と同じく花崗岩からなります。

頂がトンガっていて綺麗な三角形に見えることから、八重山富士とも呼ばれます。

桴海於茂登岳 遠景:wikipediaより引用

方言ではフカイウムトゥダギと呼ばれます、桴海の於茂登という意味合いでしょうか。同じように西表島は西の於茂登という意味という説もあるそうです。

北麓の米原側にはヤエヤマヤシ群落、東麓のンタナーラ川と於茂登トンネル入口が交わる付近にはサキシマスオウノキの群落、西麓の荒川付近にはカンヒザクラの自生地があり、それぞれが国の天然記念物に指定されています。すごい!

登山はヤエヤマヤシ群落あたりから。
登山道沿いを流れる川にはヒルが大量に棲んでいるので要注意です。
僕は登るたびに足に吸い付かれています。
これがヒルクライムってやつなのか。。

余談ですが、於茂登岳から桴海於茂登岳への縦走(下山せずに山から山へ横移動)をするのが今のねらいです。山頂間はほぼ藪漕ぎばかりになりそうですが。。

3.安良岳

次は安良岳です。平久保半島北部に位置する標高336mの山で、平久保半島の最高峰です!
トムル層の変成岩でできた岩山で、平久保から太平洋側に流れる安良川や、東シナ海側に流れるジーバ川の水源があり、豊富な水を蓄えています。

また、安良川の支流の小安良川には「平久保安良のハスノハギリ群落」があります。こちらは国の天然記念物に指定されています。

山の東側は平久保エコロードという名前でドライブコースとして開放されています。エコロード中には明治45年に廃村となった安良村跡があり、海岸近くの安良御嶽はいまもなお信仰が続いているようです。
道中には風葬跡などもあり、神秘的で重厚な空気が漂います。

山に入る際は沢づたいに散策するのがおすすめです。
シダやツル性植物が群生する、人の手が入らない太古のジャングル。「石垣島最後の秘境」とも言える、原始の植物や虫たちの姿を見ることができます。何万という命のリレーの積み重なりをひしひしと感じられます。

なお、山頂には旧日本軍の野営地の跡が残っています。

画像:『風景結々』(https://www.fukei-okinawa.jp/archive/00004081/)より引用

前編おわり

拙文にお付き合いいただき感謝申し上げます。いかがでしたでしょうか。
石垣島で山に興味を持つ方が少しでも増えると嬉しいです!

続きは石垣島十名山 中編にまいりたいと思います。


▼「石垣島巨石めぐり」記事集です!


この記事を書いた人

鈴木邦彦
ギャグ漫画家/クライマー
日本最南のギャグ漫画家として活動。
また、ボルダリングジム&ガイド「TOP OUT」運営。
石垣島のボルダリングエリアの新規開拓や、山や滝へのトレッキングガイドも行う。

■連載中
八重山日報「アフロくん」
月刊やいま「まじむん日記」
月刊まーるマガジン「マーロくん」
フリーファン「くにくにのぐだぐだ」など。
4コマ漫画がメイン。

経歴
国民体育大会スポーツクライミング競技 出場多数。
野底マーペーを崖側から登頂。
野底ボルダー最難ルート「ティンガーラ」初登。
2023年 40歳にして沖縄県総体スポーツクライミング競技 男子総合準優勝。
スポーツクライミングにおいて日本代表選手を含む多くの選手の指導経験を持つ。
座右の銘は「下には下がいる」。

Instagram:@topout.guide


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