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イケオバを目指して~バイクとの出会い~

きっかけ

 父の背中越しに見た田園風景。
これが私の自分でバイクの運転がしてみたいと思ったきっかけだ。
今まで乗ったどの乗り物よりも爽快で、ワクワクしてどこまでも行けるような最高の気分だった。小学生の時、確か習い事の習字教室のお迎えだったと思う。そこに父がバイクでやってきた。エンジンを吹かせながら現れた父は道の脇にバイクを停めるなり、フルフェイスのシールドを上げて目だけをのぞかせた。我が父ながら「結構イケてるじゃん」と羨ましくなったことを今でも鮮明に覚えている。これ以前にもバイクの後ろに乗っけてもらったことはあったと思うが、この記憶だけがはっきりと残っている。
 倉庫のシャッターを上げる音が家の庭に鳴り響き、そこから数分して他の音が何も聞こえなくなるほどのエンジンの破裂音とガソリンの強烈なにおいが立ち込める週末が好きだった。父は毎週のように「ちょっとそこまで行ってくる」と一人で出かけていたが、私はそれに着いて行きたくて行きたくて仕方がなかった。でも父の一人時間は邪魔できないと子供ながらに少し遠慮していた。どうしても我慢できないときはたまに後ろに乗っけてもらったりはしていたが。母は、外で布団や洗濯を干しているときに父がバイクに乗る準備をしていると嫌な顔をしていたが、出発前には「気を付けてね」と言う姿も私は好きだった。

思い立ったが吉日

 バイクの免許を絶対に取ろうと決めていた私は、大学2年生の2月、テスト期間が終わると同時に勢いで自動車学校へ入校した。そうでもしないと、タイミングを見失ってしまうと思ったからだ。一緒に免許を取ろうと話していた姉は仕事でなかなか都合が合わず、結局私一人で通うことになった。初めて自分で運転するバイクに感動しつつも、慣れない操作の多さに困惑し、何度バイクを倒したかわからない。
 教習指導員は男性ばかりで、ただでさえ女性が少ない環境だった。それに加えて、仕事でバイクの免許取得に来ている陸上自衛隊の方々が多く雰囲気に馴染めず、最初は自動車学校に通うのが少し苦しかった。しかし、通ううちに運転技術が上達していくのを感じると、少しずつワクワクし、公道に出てツーリングする日が待ち遠しくなった。急制動やスラロームが想像以上にスムーズにできたことで油断していた私は、一本橋という大きな壁にぶち当たった。合格タイムは7秒以上、つまりそのタイムで一本橋と呼ばれる幅30㎝、高さ5㎝、長さ15mの台を走行すればよいのだが、私は5秒からなかなか進まなかった。バランスを取ろうとしてスピードを緩めてはエンスト、エンストしては転倒を繰り返し、教習車を散々傷つけてしまった。失敗ばかりのエピソードで申し訳ないが、コースを覚えるのも簡単ではなかった。運転操作だけで頭がいっぱいなのに、次の進行方向を考える余裕がなく、このままではツーリングどころか免許を取ることすらできないかもしれないという不安ばかりが募った。そして迎えた卒業試験の日、いまだに自分でも信じられないが、減点方式の試験で1点も減らすことなく合格した。教習指導員の方のひいきか甘さ、あるいは何かの手違いだろうと思っているが、まぐれでも何でも嬉しかった。後先考えずに免許が取りたいという一心で、勢いだけで自動車学校に入校し、諦めずに通い詰めて本当に良かったと思った。これが私の、思い立って即行動に移し成功した最初の経験となった。

念願の父とのツーリング

 合格して最初に思ったのは、「これでやっと父とツーリングに行ける」ということだった。嬉しくてたまらなかった私は合格証明書をもらってすぐ家族に電話した。本当は実家に帰省するときにサプライズとして持って帰ろうと考えていたが我慢ができなかった。まさか私が一人で自動車学校に行って免許を取ることができるなんて成長したねと、予想とは少し外れた称賛をしてくれた母と、免許が取れなかったらバイクに乗ることができないだろう良かったねと予想通りの反応をしてくれた父に報告できたことが何より嬉しかった。
 実家に帰って早速バイクに乗ろうと思っていたが、父は人の出入りが少ない開けた公園の駐車場で練習をさせてはくれたものの、公道には出してくれなかった。今考えると、免許取りたての娘を交通事故が付きもののバイクに乗せることが不安だという父の気持ちが少し分かるが、その時の私は何のために免許を取ったのかわからないと父に何度も交渉した。その甲斐あって折れてくれた父と行った初めてのツーリングは、最高以外の言葉が見つからないほど最高だった。あの日父の背中にしがみついて感じた爽快さを、自分が運転するバイクで感じている瞬間に感動した。自動車学校では最高速度40kmしか出したことがなく、その速度にさえ恐怖心を抱いていた。初めて出した70kmは不思議と恐怖心など何もなく、飛んで行く周りの景色や全身に感じる力強い風、シフトアップしてエンジンの回転が変速していく音、すべてが快感だった。滑走路を颯爽と走るトップガンのマーヴェリックさながら。ちょっと言いすぎだがそれくらいの気分だった。この一日は何事にも代えられない大切な思い出となった。

次なる目標

 バイクの免許を取得してから、これまでに乗った回数は両手で数えられるほどしかない。自分のバイクを持っていないから仕方がないが、それでももっと乗りたい。お恥ずかしながら、まだ高速道路を走ったことがない。私にとってこれは大問題で、緊急事態だ。あれだけ必死に免許を取ったのに、このままではペーパーになってしまう。そんな現状を打破するために、この文章を書くことで自分を奮い立たせたい。
 まずは目標を立てることから始めようと思う。大きい目標でも小さい目標でも実現させたいことはとりあえず書き出してみることが大事だ。

  1. マイバイクを購入する

  2. バイクに乗るのに必要な備品一式をそろえる(バイクは見た目から入ることが大事だと思っているでかっこいい服や靴やヘルメットにする!)

  3. ツーリング仲間をつくる(これは免許を取る前から憧れている)

  4. とりあえず高速道路を走る(70km以上出してみたい!)

  5. とりあえずバイクで県外に行ってみる

  6. ソロツーリングができるようになる

  7. バイクでキャンプがしてみたい

  8. 父と姉とツーリングに行く(姉も遂に免許を取った!)

  9. 大型の免許を取る

  10. バイクで旅行がしてみたい

  11. インカムでコンタクトを取りながらツーリングしてみたい

  12. 熊本県のミルクロードや長野県のビーナスラインなどの絶景スポットを走ってみたい

  13. 訪れた先でいろんな人と話してみたい

  14. 行ったことのない場所へバイクで行き、食べたことのないものを食べる

  15. 写真をたくさん撮る

  16. GoProで走行中の動画を撮る

  17. バイク記録を作りたい(動画でも文章でも絵でもなんでも)

 こうしてとにかく書き出してみると、自分がまだ何も手をつけていないことやワクワクすることがたくさんあることがよく分かる。自分でツッコミを入れたくなるような項目もあるが、やりたいことや目標が明確になり、それらを達成するために必要なことが見えてきた。今回は私の大切な趣味の一つであるバイクにスポットを当てたが、最終的には、バイクを含めさまざまな角度からアプローチして「イケオバ」になることを企んでいる。そもそも「イケオバ」という言葉が存在するのか、何をもってそう呼ぶのかは分からないが、私は将来、イケてるおばさんになりたい。もし自分に子供を持つ未来があるとするなら、私が父に感じたように、我が子から「結構イケてるじゃん」と思われるような、そんな素敵な年の取り方をしたいのだ。








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