オンラインレッスンあるある「お宅拝見ツアー」
先日、中国人の生徒さんのレッスンで思わず笑ってしまう出来事があった。レッスンの時間になり、Zoomに入ってきて音声で挨拶を交わすも、カメラがオンにならない。そう伝えると今日は在宅で片付いていないのでとのこと。背景を消せばいいんじゃないかと提案するも、片付いていないのは自分だからとカメラはオフのままレッスンを受けたいとのことだった。会話のレッスンなのに、顔を見ないでやるの?と戸惑うも、大人男子に失礼かもしれないがちょっとかわいい(笑)と思ってその日はそのままやることにした。
実はこれは私にとって初めてのカメラオフ体験だった。聞くとオンライン会議では結構あるあるだということを初めて知った。私のレッスンでは基本的にはプライベートレッスンか多くても二人というオンラインレッスンだったので、生徒さんの顔を見ずにレッスンをしたことは一度もなかった。背景を隠す機能を使う人も全くいないので、日本人のお仕事関係者とのオンライン会議で背景を隠す機能があるということを知ったぐらい。日本語のレッスンの生徒さんに背景を隠されたことは一度もなかった。
それどころか、私のオンラインレッスンあるあるはまず、「お宅拝見ツアー」から始まること。イタリア人の生徒さんは仮住まいの社宅、引越し先の正式社宅、ご実家とレッスン場所が変わるたびにパソコンかタブレットを持ち歩いて、家中のツアーが始まる。ここが私の仕事部屋、キッチン、寝室、お風呂とトイレはこんな感じとぐるーっと一周おうちのなかを見せてくれる。お父さん、お母さんも登場し、カメラ越しに手を振って挨拶までする。投げキッスも飛んでくる。アメリカ人の生徒さんはお父さんのお家に行った日にレッスンがあったときには、父さんのお家も一周して見せてくれたが、とても広かった。ビリヤード用のお部屋まであり100平米もあれば、広いと感じる日本人には夢のまた夢のようなゆったりとした間取り。ドイツ人の友人もやっぱりおうちのなかを一周見せてくれる。次回は地下室を見せるねなどと言う。
こんなこと、私は絶対にしないと思うし、してくれと頼まれたら、来客時と同様に大掃除をしないといけない。背景こそ隠さないものの、レッスン開始前にカメラをオンにして変なものが映り込んでいないか必ず確認はする。今日は少し気分を変えて背景に大きめの観葉植物を置いたりしてみた。それに対して反応はあったりなかったり。私の仕事部屋は壁面が全て本棚。「うわぁ!本がたくさんですね!」と今日は韓国人の生徒さんにこの本棚に興味を持たれたのでカメラに写っていない角度の部分も次回までにしっかり片付けなくては!と一瞬、緊張が走った。
お家に中をぐるっと見せてくれる「お宅拝見ツアー」も楽しいが、窓やバルコニーから見せてくれる外の風景もまたいい。イタリアの街並みやドイツの田舎町の風景を自宅から少し見られるというのが妙に楽しい。ドイツの田舎町の雨模様や曇り空、友人はそういう天気を気分がふさぐから嫌だというが、夏がとても長くなってしまった日本にいる私にはもう暖炉に火を焚べる必要があるほど寒いという気候が少し羨ましくもある。
犬を飼ってしまうと海外に出られなくなる自分をわかっていたのに犬のいる生活をまた始めてしまったから、本気で今、海外に行きたいとは思わない。それでも生徒さんが時折連れて行ってくれる「お宅拝見ツアー」でパスポートの要らない数分の小旅行を楽しむと一種の旅情のようなものが掻き立てられる。