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火星の観光ガイド 後編


液体の水が存在できる「ヘラス平原」

ヘラス平原の全体図
NASA/JPL-Caltech/Arizona State University

高い気圧と水の三重点

 火星で観光するなら一番オススメなのがこのヘラス平原です。ヘラス平原は40億年以上前に火星に隕石が衝突したことで形成したクレーターです。直径は2000km以上、深さは最新部で8000m以上と途轍もない大きさを誇ります。ヘラス平原の魅力は気圧が高いために液体の水が存在できることです。火星の他の地点では大気が薄すぎる(約600Pa)ために水は液体で存在しえません。しかし、ヘラス平原は非常に深いために気圧が高く(1400Pa)、水の三重点を超えるため液体で存在できるのです。現在でも地下に水が液体のまま保存されている可能性があります。

水の三重点

産総研ホームページ

バラエティ豊かな地形

 ヘラス平原はバラエティ豊かな地形を持つことも魅力の一つです。東部にはハドリアクス山などの火山が存在し、そこからダオ峡谷などのアウトフローチャネルが中心部へと伸びています。アウトフローチャネルは氷河が火山活動などの熱で溶け、一気に大量の水が流れることで形成されたと考えられており、この地域に昔水が流れていたことの証拠となります。ヘラス平原のアウトフローチャネルは非常に大規模であり、数100kmも続いています。40億年前頃には水に満たされて湖になっていたと考えられています(表紙参照)。

ヘラス平原東部
NASA/JPL-Caltech/Arizona State University

 また、西部にはハニカム地形という特徴的な構造も見られます。ハニカム地形は蜂の巣のような構造をしており、地球では極地で見られる地形ですが、その成因はまだよくわかっていません。他にもポリゴン構造など周氷河地形が多く見られ、かなり広い範囲が氷河に覆われていたと考えられています。

ハニカム地形
NASA/JPL-Caltech/Arizona State University

ヘラス平原を旅行する際の注意点

 前述の通り、ヘラス平原は気圧が高いために風が強く、強烈な砂嵐が発生することがあります。一度大規模な砂嵐が発生すると数ヶ月間止まず、その間太陽光が届かずに充電ができないため注意が必要です。

キュリオシティがとらえた砂嵐
NASA/JPL-Caltech/MSSS

参考文献

[1]Diot et al., (2016) Planetary and Space Science, 121, p.36–52
[2]Bernhardt et al., (2016) Icarus, 264, p. 407–442
[3]アイナビニュース「火星で史上最大級の砂嵐が発生、NASA探査機と音信不通も"好機"に」
[4]Paker and Bills, (2021) Mars Geological Enigmas, Elsevier, p.41-59
[5]臼井など (2021)「火星の歩き方」光文社新書

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