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火星の観光ガイド

今回は今までとは少し趣向を変えて、観光ガイドのような形式で火星の見どころを紹介していきたいと思います。近い未来に火星に旅行に行けるようになって、このガイドが本当の意味でガイドブックになってくれたら嬉しいものです。


火星のグランドキャニオン「マリネリス峡谷」

 マリネリス峡谷は火星の赤道付近にある巨大な峡谷で火星のグランドキャニオンとも呼ばれます。ただ、その大きさはグランドキャニオンとは比べ物にならないほど巨大で、深さ8km、幅700km、全長は4000kmにも及び、その壮大な眺めに圧倒されること間違いありません。また、マリネリス峡谷はメラス谷やコプラテス谷などいくつかの峡谷が重なり合ってできていますので、各峡谷ごとの表情の違いを比べてみるのも面白いかもしれません。そして、谷底には比較的最近噴火したと見られる火山や温泉の跡なども多く見られます。これらをドライブして巡ってみるのもオススメです。峡谷の西側にはノクティス・ラビリンスと呼ばれる、地下の氷が溶けて地表が崩落することで形成されたカオス地形が見られます。ここでは谷や地溝、窪地が複雑に入り組んでいるので、車での移動はお勧めできません。

マリネリス峡谷の全体図
NASA/JPL-Caltech/Arizona State University
マリネリス峡谷の眺め
NHK/NHKクリエイティブ・ライブラリー

火星最大の火山地帯「タルシス高原」

 タルシス高原は火星最大の火山地帯で、その平均標高は5000mを超えます。タルシス三山であるアルシア山・パヴォニス山・アスクラエウス山などの巨大楯状火山やアルバパテラなどの非常に緩やかな斜面と多数の断層をもつパテラ火山、タルシストーラスなどの急な傾斜角を持つ比較的小さなトーラス火山といった異なる種類の火山が密集しています。なのでこれらの火山を登り比べてみるのがお勧めです。頂上には巨大なカルデラがあることが多いので、時間のある人は一周してみるのも楽しいでしょう。また、運が良ければ山頂から西にたなびく雲が見られることもあります。
 タルシス高原の西の外れに位置するオリンポス山は太陽系最大の火山で標高は21km、直径は600kmを誇ります。頂上から眺める火星の景色は壮大です。そしてオリンポス山の傾斜はそこまで急ではないので車で頂上付近まで登ることが可能です。ただ、直径があまりにも巨大なため車でも登るのに数日はかかることに注意してください。山の北と南は急な崖に囲まれているので車で登ることは不可能です。東か西の緩やかな斜面から登るようにしてください。頂上には富士山ほどの大きさのカルデラがありますので、時間がある人は1週してみるのもいいでしょう。早朝カルデラの底には霜が見られることもあります。山の西側には氷河地形が見られます。ぜひ訪れてみてください。

タルシス地域の全体図
NASA/JPL-Caltech/Arizona State University
オリンポス山頂に降りた霜
北と南は急な崖に囲まれているのが分かる
ESA/DLR/FU Berlin

地震の活発な「エリシウム平原」

 エリシウム平原は火星でタルシス高原に次いで火山活動が活発な地域で、現在でも火山活動が続いている可能性が示唆されています。エリシウム平原の北にはエリシウム山と2つのトーラス火山があり、登山客に人気です。これらの東側にはケルベロス地溝帯という長い割れ目があります。ここでは地震が毎日のように起こっており、マグニチュード4以上の地震も観測されています。周辺には溶岩の流れた跡やルートレスコーンと呼ばれる溶岩と水が作用することで生成するコーン地形が見られ、独特の風景を作り出しています。また、エリシウム平原周辺には21世紀の初めに活動していた探査機(スピリット・キュリオシティ・インサイト)が残されており、これらをまわるツアーが人気です。

エリシウム平原の全体図
NASA/JPL-Caltech/Arizona State University
ケルべロス峡谷とルートレスコーン
ESA/DLR/FU Berlin
NASA/JPL-Caltech/UArizona
キュリオシティ
NASA/JPL-Caltech/Malin Space Science Systems

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