「不可侵な沼地」
何日か前から
行きたい場所があった
熊谷にある森林公園の
不可侵な沼地
そこに住んでもいいと言われれば
喜んで住むだろう
何時間何十時間でも
佇めるところ
冬は静寂に包まれ
残暑の今は
ツクツクボウシの鳴声と
鳥たちの囀りでにぎやかしい
けれど清らかさは
変わらぬまま
ここには人が
来ないから
ただ自然と多様な生き物と
わたしだけ
虫たちはめずらしいのか
わたしの周りをうろつく
汗だくのTシャツを脱いでも
ここには蚊一匹いない
やはりここは特別
不可侵な沼地
くしゅん!
沼地の森は倍音を響かせ
鯉を驚かせた
やはりここは静かなのだ
風は吹けども
そのゆらぎには女郎蜘蛛は動ぜず
わたしが触れれば
あわてふためく
驚かせてゴメンよ
でも仲間でいたいから
あともう少しだけ
居させてちょうだい