「梔子色のクチナシ」
香り高きクチナシ
見るたびフワッと引き寄せられて
余計な口の覆いをはずし
その濃厚な甘さをハナから楽しむ
その現実離れした高貴な香りも
見た目はどこかしとやかで
存在を見逃してしまうほど
こちらが見つけてやらねばならぬくらい
クチナシの白き美しさは儚くて
その花びらは次第に色あせる
けれどもその色は梔子色
とてもきれいな朽ちあせた色
それはクチナシの実の色が
花びらに溶け出しているようで
美しく黄金色にきんとんを染めあげる
赤い実のしわざのよう
なんと不思議な花なのだろう
白くて黄色くて赤く
それでいてあの香り
なのに影のようにそこにいる