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「日本らしさ」は森がつくった?—日本とワインの国を比べて見えた文化の違い

こんにちは。
まだまだ投稿数も少ないので自己紹介もしてみます。

ソムリエの資格を持ち、日々ワインの仕事をする傍ら、あらゆることに興味があり日夜情報のインプットをしながら過ごしています。
このインプットをどこかでアウトプットして、自分の中での理解度&解像度アップしたいという気持ちと、世の中での興味関心の需要に少しでもマッチすればと思ってnoteに手を出してみました。
今回の自己紹介はざっくりこのくらいで。
今日は日本とワインの国の比較、というテーマでとりあえず書き殴ってみます。

照葉樹林文化とワインの国を比べてみた

日本の文化って、なんだか独特だと思いませんか?
和食、木造建築、四季を愛でる感覚…。でも、これって単なる「日本の伝統」じゃなくて、もっと根本的なもの——つまり「森」が生み出した文化なんです。

この視点を教えてくれるのが「照葉樹林文化論」。
簡単に言うと、温暖で湿気の多い森(照葉樹林)が広がる地域では、特有の文化が育まれてきたという話で、日本、中国南部、東南アジアあたりがこのゾーンに入ります。

で、面白いのは、こういう森の文化と、ヨーロッパの「ワインの国」の文化を比べると、日本の特徴がよりくっきり見えてくるということにあります。
小難しい気もしますが、ワイン好きにとってもこれは気になるテーマになるはず。


1. 「森の文化」vs.「畑の文化」— 照葉樹林とワインの違い

ワインといえば、フランス、イタリア、スペイン…。
これらの地域は基本的に乾燥した地中海性気候で、広大な畑が広がっています。
ここで発展した文化は、いわば「畑の文化」。
乾いた土地でブドウを育て、ワインをつくる
オリーブや小麦が主役の食文化
石造りの建築(湿気が少ないから木より石が便利)

対して、日本は「森の文化」。
広がるのは水資源の豊富な照葉樹林で、そこに適した生活スタイルが築かれました。
湿った土地で米を育て、発酵食品をつくる
醤油や味噌、日本酒などの発酵文化が発達
湿気に強い木造建築が中心

つまり、ワインの国は「乾燥した土地で畑とともに生きる文化」、日本は「森の恵みを活かして暮らす文化」。それぞれの環境に合わせた「食」と「住」が発展してきました。


2. ワインと日本酒、どっちも「発酵文化」だけど…

じゃあ、ワインと日本酒を比べてみます。
どちらも発酵を利用したお酒ですが、作り方や味わいには環境の違いが反映されています。


ワイン(地中海圏)

• シンプルな発酵(ブドウを潰して自然に発酵させる)
• 熟成に適した乾燥した環境(カーヴ=ワイン貯蔵庫は湿度を抑えた地下空間)
• 単体で完成した味わい(フルーティー、タンニン、酸味が調和)


日本酒(照葉樹林圏)

• 麹を使う複雑な発酵(湿気が多い環境だからカビ=麹をコントロールする文化が発達)
• 熟成よりも新鮮な旨味を重視(しぼりたての生酒など)
• 料理とセットで楽しむことが多い(出汁や発酵食品との相性が抜群)

発酵のスタイル一つ取っても、ワインの国と日本では全然違います。
乾燥した土地では、果物の糖分だけで発酵させるワインが生まれ、湿潤な日本では、カビや菌を味方につける麹文化が発達しました。


3. 「ワインの国」に木造文化はないのか?

「照葉樹林文化=木造建築」という話をしましたが、ワインの国には木造文化がないのか?
いや、実はあります。でも使い方が異なります。

ワイン好きならすぐ思いつきますよね?そう、です。
フランスやイタリアでは、ワインの熟成にオーク樽を使う
樽の香りがワインに移り、バニラやスパイスのニュアンスが生まれる
でも、建築にはあまり木を使わない(湿気が少ないから石造りが主流)

一方、日本は、建物自体が木でできています。
湿気の多い環境だから、木の調湿効果を活かすことで快適な住空間を手に入れました。

この違いは、森との関わり方の違いでもあります。
ワインの国では「木はワインを育てる道具」、日本では「木は暮らしの一部」。
だから、日本の酒文化は建築にも木をふんだんに使うし、杉樽で貯蔵する日本酒もある。


4. じゃあ、日本でワイン文化は育つのか?

近年、日本でもワイン造りが盛んになってきましたが、果たして日本はワイン造りに向いているのか? 環境的に考えてみると…
湿気が多く、ブドウ栽培には厳しい(カビや病気が出やすい)
ただし、標高の高いエリア(長野・山梨)は比較的乾燥していて適している
日本独自のスタイル(甲州種ワインなど)が発展中

照葉樹林文化の土壌でワインを造るのはハードルが高いことは間違いないです。それでも日本らしいワインの形を模索しているのが面白いところ。例えば、日本のワインはフランスやイタリアのものよりも繊細で、和食との相性を意識したスタイルが多い。やっぱり「森とともに生きる文化」の影響が出ているのではないでしょうか?


5. まとめ:日本は「森の国」、ワインの国は「畑の国」

こうやって比べると、日本とワインの国では文化の成り立ちが全然違うことがわかります。
• ワインの国は「畑とともに生きる」文化
(乾燥地で育つブドウ、石の建築)
• 日本は「森とともに生きる」文化
(湿潤な土地で発展した発酵食品、木の建築)
• それぞれの環境に合った酒造り
(シンプル発酵のワイン vs. 麹を活かす日本酒)

でも、違いがあるからこそ、ワインと和食を組み合わせる楽しさがあり、日本のワインがどう進化していくのかも気になるところだと思います。

日々の生活の中に、僕らの中にある古代の遺伝子を感じてみてください。
そして、多くの皆さんにワインを楽しんでもらえると嬉しいです。
今日はここまでにします。

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