人間失格と薬物②
太宰治の「人間失格」続きネタです。
今では
悪名高い睡眠薬、
バルビツール酸系睡眠薬。
でも
昭和初期の頃は、
普通にそこらの薬局で、
処方箋もなく
買うことができたようです。
薬の歴史や医療の歴史をみると、
いかにその時代時代で評価が
変わるということが、
よくわかります。
ベンゾゾアゼピン系薬物も、
バルビツール系薬物に変わり、
依存性もなく、
致死率が限りなく低い安全な薬として
登場して、
大人気を博したわけです。
さすがに、
ここ数年で化けの皮が剥がれて、
悪名高い薬になりつつありますね。
バルビツールは大量服薬により、
錯乱し見当障害、運動失調など
アルコール中毒類似の
狂躁状態など呈し、
次いで昏睡になり呼吸抑制作用が
起きる。
ハリウッド俳優や有名歌手など、
著名な人も大勢この睡眠薬で
命を落としました。
マリリンモンローもそう。
太宰治は、
当時19歳の女性と鎌倉の七里ヶ浜海岸で、
カルモチンでの情死を図ります。
女性は絶命しましたが、
カルモチンの大量服薬によるものでなく、
薬の副作用の嘔吐症状で、
直前に食べたものを喉に詰まらせての
窒息死でした。
太宰治は、
当然でしょうが、
彼女の死に負い目を感じ、
メンタルを病んでいきます。
太宰治は、
バルビツール系睡眠薬だけでなく、
さらには、
鎮痛剤のパビナールにも依存して、
薬物中毒患者状態になっていきます。
メンタルが弱く依存性の強い人が、
依存性のある薬物を飲むと、
かなりの確率で薬物依存状態に
なるそうです。
太宰治の薬物依存はかなり深刻で、
周りの身内や知人により、
東京の精神病院に強制入院させられます。
その際、
彼はこう叫んだそうです。
「ここは脳病院だ!
わたしは精神病じゃない!」と。
昔は
精神病院のことを脳病院と呼んでました。
脳病院。
なんだか怖い響きです。
ちなみに
パビナールは武田薬品のお薬。
武田薬品はデパスといい、
依存性の強いお薬を作るのが
お得意のようです。
パビナールは、
アヘン・モルヒネなどと同類のアルカロイド系麻薬でした。
よく
向精神薬は麻薬!と表現されますが、
本当にそうなんですよ。
作用機序が近いらしいです。
「人間失格」には、
全編にわたり
自分は騙されて精神病院に入れられたという、
被害者意識が色濃く反映されてます。
太宰治は、
自分が精神病院に入れられてしまうような人間だったという意識に、
生涯苦しんだそうです。
結局最後は、
また愛人と玉川上水に入水自殺。
38歳の若さで生涯を閉じました。
4回にわたる自殺未遂と薬物依存中毒で
荒みきった人生だったようです。
最後は薬物の影響で、
かなり被害者意識が強くなり、
彼の恩人でもある井伏鱒二のことも、
その遺書の中で
「井伏鱒二は悪人」と悪口を書いてたそうです。
ちなみに、
ベンゾゾアゼピン含む向精神薬も
被害者意識が強くなり攻撃的になります。
酷い場合は他害に発展します。
おそらく、
向精神薬をある程度の量と期間飲んでる人は、
人間関係がうまくいかない人も多いのではないのでしょうか。
愛人と心中した太宰治。
2人とも遺書を残してました。
愛人は太宰治への強い愛を書き残しましたが、
太宰治は、
1番愛してるのは妻と、
妻への愛を書き残しました。
愛する妻と子供達を道連れに死ぬことは
できなかったのでしょう。
そう考えると、
単に一緒に死んでくれる女なら誰でもよかった。
一緒に心中した愛人が、
1番の被害者かもしれません。
とにかく、
太宰治はかなり美化されてるようです。
現代に生きてたら、
本当に単なるろくでなし。
育児も手伝わず、
奥さんに稼ぎを渡さず苦労かけ
浮気しまくり。
薬物依存になるし、
狂言自殺を繰り返す。
生まれる時代により、
人物の評価はかなり変わるもんですね。