
生きるとは?死ぬとは?人間の死生観を問うヒューマンドラマ寄りのSFアクション映画『SEOBOK/ソボク』
【個人的な評価】
2021年日本公開映画で面白かった順位:69/147
ストーリー:★★★☆☆
キャラクター:★★★★☆
映像:★★★★☆
音楽:★★★☆☆
映画館で観るべき:★★★☆☆
【以下の要素が気になれば観てもいいかも】
ヒューマンドラマ
SF
アクション
クローン
鉄腕アトム
AKIRA
X-MEN
ターミネーター2
【あらすじ】
余命宣告を受けた元情報局エージェント・ギホン(コン・ユ)。死を目前にし、明日の生を渇望する彼に、国家の極秘プロジェクトで誕生した人類初のクローン・ソボク(パク・ボゴム)を護衛する任務が舞い込む。
だが、任務早々に襲撃を受け、なんとか逃げ抜くが、ギホンとソボクは2人だけになってしまう。危機的な状況の中、2人は衝突を繰り返すも、徐々に心を通わせていく。
しかし、人類の救いにも、災いにもなり得るソボクを手に入れようと、闇の組織の追跡は更に激しくなっていく―。
【感想】
さすが韓国映画、やってくれますね~という感じの作品でした。とはいえ、予告を観るとアクションメインかと思いきや、意外にもそのシーンは限られており、どちらかと言えばヒューマンドラマ寄りの内容になっています。
<設定のスケールがデカい>
遺伝子改良されたクローン人間のソボクと、余命1年もないエージェント・ギホンの凸凹コンビ。もうこの時点で設定がかなりぶっ飛んでますよね。なかなか日本のドラマや映画ではないと思います(アニメならありそうですが)。
<死生観に関わる深いテーマ>
この映画、一番いいなと思ったのがテーマなんですよ。ソボクとギホンは凸凹コンビと言いましたけど、2人の対照的な部分って寿命なんですよね。ソボクは定期的なメンテナンスがあれば基本死ぬことはないんですが、ギホンは病気で長くは生きられません。そこで、ソボクの細胞を移植することで、ギホンの病気が治るかもしれないってのがあって、ギホンはソボクの護衛を務めるんですが。
ただ、ソボクには疑問がありました。なぜギホンは自分を助けてくれるのか。彼は生きたいからと言うけれど、人はいつか死ぬのに、どうしてギホンにだけその特権を与えるのか。そこまでして生きる価値のある人間なのか。
それに付随して、死ぬとはどういうことなのかについても問いかけます。死ぬことが眠ることだとするならば、人は寝るとき怖くないのか。
このように、死の概念が普通の人間と異なるソボクを中心に、人間の死生観について常に問い続けているのが本作の特徴です。
<ただ問いへの答えがない>
普通に考えても正解なんてないのはわかるんですけど、映画の中でここまで生とは?死とは?と問いかけている割には、明確な答えがないのがもやっとするんですよね(笑)まあ一応、「眠るとき怖くないのか?」に対しては、「翌朝起きると信じているから怖くないのでは」みたいなことをギホンが答えていますが、翌朝起きれる保証はないから、結局それが怖さを和らげる理由にはならない気もしましたけどね(笑)なんか、ちょっとうやむやにしている感じがしっくり来ないなとは思います。観客に考えて欲しいところなのかもしれませんけど、せっかくここまで描いているのであれば、ビシッと言ってしまってもよいのではと感じました。
<過去の名作へのオマージュ>
他に特徴的なところとしては、過去のSF映画やアニメの影響が強い点が挙げられます。ソボク誕生の経緯は、『鉄腕アトム』で天馬博士がアトムを作った理由を思わせます。彼の能力、すなわち銃弾の軌道を変えたり、大きな力で人やモノを吹っ飛ばすところは、『AKIRA』のタカシや鉄雄、『X-MEN』のマグニートーの姿がちらつきました。他にも『ターミネーター2』っぽいところもあったりと、映画好きな人なら、なんとなーく同じこと思いそうですね(笑)
<その他>
韓国映画にしては、個人的にはテンポもゆっくりに感じられて、ちょっと間延びしている印象もありましたが、死生観に触れたテーマ自体は、消化不良ながらもよかったとは思います。先月観た『Arc アーク』も同じようなテーマですけど、こっちの方がエンタメ性が高くて観やすいかと。あと、VFXを含めたアクションシーンは見ごたえあるので、映画館で観た方がより楽しめると思いますよ~。