脳科学的に「自分軸がぶれた」方がいい理由
こんにちは、まろにぃです。
先日、池谷裕二著『単純な脳 複雑な「私」』を読ませていただきました。
池谷先生は、東京大学大学院薬学系研究科教授であり、文部科学大臣表彰を受けられれたことのある脳科学者です。
心理学を学んでいると、どうしても脳科学に行き当たることが多いので拝読させていただいていたのですが、この本の中で、脳にはゆらぎがあると紹介されていました。
今日は、脳のゆらぎについてと、ゆらぎがある理由について紹介したいと思います。
脳はゆらいでいる
よく心がゆらいでいると表現されるように、ゆらいでいるとは、ふわふわした状態。安定のない状態を言います。
実は、脳もこの状態にあり、もうすこし詳しくいうと、脳を構成する神経細胞であるニューロンが脳の内側だけで自発的にゆらいだ状態で活動しています。
以下は、理研がヒトES細胞から誘導された海馬ニューロンの活動を特殊な色素を塗ることでわかりやすくしたものです。
このようにニューロン同士が足並みを揃えたり、強まったり、弱まったりしています。
問題は、このニューロンのゆらぎが、脳の出力につながっているところにあります。
池谷先生の研究室では、ねずみの海馬ニューロン群に電気刺激を与えるという実験を行いました。
脳では、与えられた情報(例えば目から得た情報など)は電気信号に変換されるため、この実験では、脳に情報が入ってきた時のゆらぎの影響をみる実験だと解釈してもらえればいいかと思います。
結果からわかるように、一定の電気刺激に対して1回目〜6回目まで反応したニューロンが異なっていることがわかります。
つまり、いつ電気刺激=情報が入ってくるかによって、反応が全く異なるということです。
また、この脳のゆらぎによって、ゴルフのパッティングの結果も決められていると紹介されており、どれだけいつも通りに打ったとしても開始直前の脳の状態によって決まり、論文の著者によれば、パットが決まるかどうかだけでなく外した時にはどのくらいの距離外れるかまで決まっているとのことでした。
おそらくですが、同じことをやっても今日はできないと感じたり、乗り気じゃないと感じたりもこの脳のゆらぎから来ているのではないかなと思います。
脳のゆらぎの存在理由
「いつもパフォーマンスよくやりたい」そういう人にとって脳のゆらぎは敵のような存在に見えるかもしれません。
ただ、脳がゆらいでいるのには、もちろん理由があり、池谷先生は、以下の3つの理由のためだと紹介しています。
①効率よく正解に近づく(最適解への接近)
②弱いシグナルを増幅する(確率共振)
③創発のためのエネルギー源
このうち①効率よく正解に近づく(最適解への接近)というのが、タイトルにもある自分軸がぶれた方がいい理由に直結するため紹介させていただきます。
唐突ですが、アリがどうやって行列を作っていくかご存じでしょうか?
アリは、エサをもつとフェロモンを落とすという性質があります。
つまり、エサから巣穴に戻るルートにフェロモンが撒かれることになるため、そこに行列ができるという仕組みです。
しかし、アリの中にもゆらぎのような存在がいます。
集団行動に従わないアリたちです。
なぜ、このアリたちが進化の過程で生き残ったのか
それは、もっと短いルートを見つける可能性があるためです。
人間の行動の中にもこの傾向は残っていると思います。
例えば、同じ場所に行くとしても「今日は違う道を通ってみよう」とか思ったりすると思うのですが、これが脳のゆらぎのために起こっているということです。
さらにいうと、方法や手段だけでなく、このゆらぎは生き方のようなものにも当てはまると思います。
今日はこうなりたいと思ってなにか行動しても、明日には違うことをやりたいと思って違う行動をする。
そんなことはしょっちゅうだと思います。
しかし、そうやって違う方向にいきながら、だんだん最適解に近づいていると思えば、そこまで失敗を恐れなくてもよいのではないかと思います。
最近、よく自分軸がぶれない方がいいなんて聞きますが、ぶれた方がいいし、そもそも脳の仕組み的に無理だろうと思います。
ぶれた時は、ぶれた時なりに楽しんでいきましょう。
最後に
池谷先生は、脳のゆらぎを意思でコントロールできるのかについて、関与できるのではないかと述べられていました。
その鍵を握るのが「フィードバック」だそうです。
例えば、脳のアルファ波は、アルファ波測定器のモニターを見ながらであればコントロールできるようです。
つまり、トレーニングが必要だとのことですが、おそらく一番良かった時の状態を極力覚えて、それを再度やってみるということしかないのだろうと思います。
多分完璧に脳のゆらぎは制御できないですが、近い状態に持っていけるということなんだろうなと思っています。