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「町工場の娘」を読んで

 今回は久しぶりに読書感想文を書こうと思います。たまたま本屋で見つけた「町工場の娘」日経BP社の本を読みました。数年前、ドラマ化して話題になったことは薄ら覚えていましたが、私は今回初めて読みました。読んだ理由は、普段関わる金属部品加工業の話であり、経営再建法、事業内容のどちらにも非常に興味を持ったためです。


本のあらすじ
 精密ゲージを加工している金属部品加工業者・ダイヤ精機の創業者が亡くなり、それまで経営経験のない娘(諏訪貴子さん)が2代目社長となり経営を立て直していくという町工場の奮闘記。
 引継ぎ当初は業績も赤字で、女性であり30代前半で経験が浅いため、社員からも取引先、銀行からも不安がられたが、なんとか目の前の問題を一つ一つ解決していき、黒字化、10年で全国から視察に来られるほどの優良企業へ立て直す。その経営再建等から日経ウーマンオブザイヤー2013にも選ばれ、大田区の優良企業にも認定された。
 再建手法を簡単に説明すると、1. 自社の強みである「超精密加工技術」を生かして受注をする。2. 整理整頓・挨拶等を見直し、自ら積極的にコミュニケーションを図ることで、ベテランと若手を繋ぎ、人間関係含めた社内環境を整える。3. 何事も「なぜそれが必要なのか」という合理性で判断する。4. 「ものづくり太田を代表する企業となる」といったビジョンを掲げてベクトルを合わせる。5. 人材育成に力を入れる。といったもの。
 基本的に、社長の爆発的な行動力で様々な問題を解決、そして素人だったからこそ新しい発想で物事にチャレンジ、何よりポジティブな人間性で周りの人を引きつけて経営を行っていく物語。


この本を読んだ感想を書いてみます。

1. 技術力の価値
 ゲージは職人による手作業の感覚で仕上げる超精密加工によって作られます。この物語にも、業績が悪くなった時に大手自動車メーカーからゲージの大量発注があり業績が回復できたという話がありました。その時も海外製や他社製ではなく、精度があり少量短納期に対応してくれるダイヤ精機だからこそ発注されていました。職人技術や、短納期で生産する生産管理ノウハウ等が製造業で大切なことは当たり前ですが、このような経営難を救った事例を知ることで、その会社の独自技術・ノウハウを継承する、磨くことの必要性を改めて感じました。

2. リーダーにはマネジメント
 社長は技術者でない分、マネジメントに特化していると思いました。技術のあるベテランをうまく使って若手の育成をすることで、会社全体として超精密加工技術を継承できていると思いました。さらに従業員それぞれと積極的にコミュニケーションをとり、課題を把握すると共に、若手を含めて全員に寄り添っているため信頼をえて社員に動いてもらえるのだと感じました。

3. 信頼する人材育成法
 人材育成も特徴的であると感じました。失敗を恐れさせない、誰にも負けないものを作らせるというのはよくある話ですが、社長自らが一人一人の話をきき、細かい変化を褒めて、向き合うという姿勢が大きいのではないかと思いました。
 通常であれば、「背中をみて学べ」だとか「自分で動かないやつはいらない」といった風潮が、製造業、特に技術力が必要な町工場には多いと思います。しかしその辺りの教育姿勢、及び大手企業に比べて実践経験の場が豊富なことで人材が育成できるのではないかと考えました。あえて一人にしかできないことを作ることで「自分がいなくなったら会社が困る」と思わせモチベーションをあげる手法には驚きました。わかる人がその人しかいないとリスクと思いがちですが、その辺りの思い切りのよさ、一人一人と向き合って信頼する姿勢が、人材を育てるのだと思いました。

4. ブレずに新しいことにチャレンジする必要性
 常に危機感をもち、新しいことにチャレンジしている姿も印象に残りました。今ほどIT化が騒がれていない時期(2005年)に生産管理システムを導入したこと、知名度をあげるために様々な表彰に応募したこと、学習塾などで地域貢献+マネジメント力を強化したこと、求人に技術ばかりをPRしている会社が多い中社風をPRしたこと等、常に積極的に新たなことにチャレンジしていました。そのような姿勢だからこそ時代が変わってもついていけて、元からある技術力を生かして発展できたのではないかと思いました。

5. 細かい行動力
 「とにかく行動すること」はよく言われることではありますが、この社長の行動力の特徴は、1.誰にでもできるがあまりやらないような細かいことでも行動に移こと、2.信念を持って動いていること、3.動きながら知恵を出していることだと思いました。挨拶をしたり、交換日記をしたり、飛び込み営業をしたり、誰にでもできるようなことですが、あまりみんながやらないようなことを実行しているから結果に繋がるのだと思いました。さらに、動いている中で失敗や批判があっても、根本に信念があるためブレないのだと思いました。そして動いた結果に対して知恵を絞って工夫してさらに動き続けるため、他の人ができないようなこともできるのだと思いました。
 シェイクスピアの「幸も不幸もない、考え方次第」という考え方の元、「大変」「苦労」と思わないポジティブ思考も書かれていましたが、急に社長に就任した時の経験があるからで、行動力と経験からそのように思わなくなったように思いました。実際に細かいことを知恵を絞りながら行動に移し続けたからこそ、そのような思考に至ったのではないかと思いました。


 技術力、現場力がものをいう製造業で、急に経験がない中社長になるということは本当に想像するだけでも大変だと思います。そんな中でもポジティブに駆け抜けていた諏訪社長の奮闘記を読んで、私もモチベーションが上がりました。

今日も最後まで読んで頂きありがとうございました。




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