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本日は、前回の続きになります。

航空会社とともに苦境に陥っているのが空港です。空港は、主に国が管理運営するものと、地方自治体が管理運営するものに分かれます。

 国が運営する空港であれば、国税と空港使用料を財源として整備および運営がなされています。もちろん、空港使用料は運営が始まってから入ってくる収入であり、それまでの間は、借金で賄われます。たとえば羽田空港はこれまで拡大を繰り返しているが、そのたびに、莫大な借り入れがなされています。

 国営空港は日本の各地にあるが、それらは、一括して空港整備勘定で区分経理されており、日本全体の国営空港の収入で、全体の支出を賄っています。

 1年間のランニングコストで見れば、羽田空港は、利用が多いことからもわかるように、収入が支出を上回る黒字空港である一方で、地方にある空港は、赤字空港も多いです。すなわち、空港整備勘定においてプールされ、空港が経営されています。

 また、地方自治体が運営する空港の場合は、赤字であれば、自治体自身が補填しているケースが多いです。

一方で、ターミナルビルは、自治体が地元企業と共に出資する第三セクター会社が運営するケースが多く、黒字の場合も多いです。

 近年、新しい経営手法として、ターミナルビルと空港運営を一括で民間が引き受ける「コンセッション」と呼ばれる手法を取り入れる空港が増加してきています。

 空港コンセッションとは、国土交通省航空局ホームページによれば、「滑走路等の基本施設と航空旅客ターミナルビルを一体的に経営することにより効率的な運営を行い、航空ネットワークの充実・強化や地域の活性化を図るもの」とされます。

 関西エアポート(株)が、関西の3空港(関西、伊丹、神戸)の経営を一括して引き受けているほか、国営空港では、仙台(2016年度より)・高松(2018年度より)・福岡(2019年度より)空港等でコンセッションが導入されています。さらに2019年には、北海道の7空港の経営が、北海道エアポート(株)に一括してコンセッションされることが決まり、本年度から随時、空港経営が委託されることになっています。


 コンセッション契約がなされた空港は、空港整備勘定から収支ともに抜け出ることになっています。経営が黒字である空港が抜け出る場合には、その将来的な収益価値がコンセッションフィーとなり、一括払い(または、分割払い)で空港整備勘定の収入となります。

 北海道7空港一括運営のコンセッション契約においては、将来のインバウンド需要拡大による収益増加を見越して、該当する国営空港の現在の収支合計よりも大幅に高い値段でコンセッション契約が締結され、空港整備勘定を大きく潤すことになりました。

コンセッションは、空港の所有権を国や自治体に残したまま、運営権のみを民間に売却し、経営と所有を分離するものであり、決められたコンセッション契約の下、経営を独立して行う仕組みです。経営の判断スピードが速まり、ニーズに応じた空港経営、戦略を立てることができます。近年のインバウンド拡大により、そのスピード経営は効率性を高め、利用者にも多くのメリットを生み出してきました。

 だが、ここにきて、新型コロナウイルス感染症の拡大は、空港運営そのものをストップさせ、経営の基礎を根本から揺るがすことになりました。

 このような状態に対し、公共性の高い空港サービスを持続可能にするために、「航空ネットワークの基盤を支える空港関連企業の経営基盤の維持・強化を支援するための施策」として、政府の支援パッケージが作られました。

 具体的には、コンセッション空港における契約上の履行義務の緩和、空港管理をする会社への資金繰り対応(空港施設の整備に対する無利子貸付、運営権対価分割金等の年度越え猶予)、空港関連企業への支援としては、国有財産使用料の支払い猶予、空港会社等に対するその他空港関連企業の支援の要請などが含まれています。

 まず、国や自治体管理空港は公共部門の一部でもあり、赤字拡大分は母体となる国や自治体からの支援で継続するしかなく、そのような支援が行われている。また、ターミナルビルを経営する第三セクター会社はもともと黒字のところも多く、支援内容は、地域によって異なると思われます。

 一方、コンセッション空港においては、委託元である国や自治体と、空港運営会社との資金関係は契約で事前に定められており、運営リスクは、ほぼコンセッション会社に委ねられています。それが努力インセンティブの源泉になるわけであるが、空港利用者が多ければ多くの利益が得られる一方で、少なければ利益は減る構造です。今回の新型コロナウイルスは、利用者を大きく下げることになり、運営会社は、大幅な赤字を余儀なくされています。

では、国はコンセッション会社にどのように支援をしていくべきでしょうか?

 国や自治体管理空港は、公的なインフラとして位置付けられ、安定性・持続性を担保することは求められるため、政府の直接的な資金援助が得られます。その一方、コンセッション会社は直接的な資金援助は得られません。とはいえ、そもそも、これは、コンセッション導入時のリスク配分に関する契約でそのように決められているわけであり、厳守するべきです。

 では、政府は空港が経営危機に陥っているのをそのまま放っておけるでしょうか。空港は、公共性の強い空港インフラであり、政府には、空港の安定性・持続性を担保することが求められます。政府に求められることは、コンセッション契約のフレームワークの下で、間接的なサポートを行うことでしょう。

 したがって、国はコロナが収束するまでの間、直接的な資金援助ではなく、契約期間の延長など、契約上の履行義務に対しての柔軟な対応をとり、支援を行うことが望ましいでしょう。実際、12月21日に改訂されたパッケージでは、契約期間の延長が認められました。

 このたびの危機は、コンセッションのメリットを下げるものではなく、コンセッションがさらに進化して意味のあるものになるための良い経験とみなすべきでしょう。

 今後のコンセッション契約では、この経験を生かした、より価値のある契約が締結されると思われます。実際、新型コロナウイルスが発症後にも、広島空港においてコンセッション契約の議論が進んでいます。空港は、この危機を踏まえても、収益的価値の高い投資対象であることには変わりはないのです。




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