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こんにちは。本日は、航空業界の実情についてみていきたいと思います。

国土交通省航空局は10月28日、「コロナ時代の航空・空港の経営基盤強化に向けた支援施策パッケージ」を公表(12月21日に改訂版を公表)しました。

 新型コロナウイルスの影響により極めて厳しい経営状況となっている航空・空港関連企業に対して、「国内外の交流や国民生活、経済活動を支える航空ネットワークを維持するとともに、航空・空港関連企業の経営基盤強化を図るため、企業におけるコスト削減等の収支改善の取組を前提としつつ、金融機関の取り組みも合わせて、国と関係者が連携して航空・空港関連企業を強力に支援する」として作られた施策パッケージです。

 航空サービス・空港サービスは、公共性が高く、人および貨物の移動には欠かせないサービスであり、安定したサービスの継続は極めて重要です。

具体的な施策としては、航空会社と空港会社などを対象に、幅広い支援として、規制緩和に加え、財政的にも、資金需要への対応、雇用維持のための補助、税支払い猶予・使用料の猶予・着陸料の軽減がなされることになりました。

 また、航空機燃料税に関しては、これまで、インバウンド促進策として、航空機燃料税の軽減措置(2011年以降、航空機燃料1キロリットルあたり2万6000円から1万8000円へ軽減)がとられてきています。措置期限がきた後にも、3度延長(2014年から3年間、2017年から3年間、2020年から2年間)されています。

 なお、3度目の延長については、「東京オリンピック・パラリンピックを契機に訪日外国人旅行者の地方誘客を拡大するため、航空会社は、ローカル路線の充実に加えて、訪日外国人旅行者の地方誘客のための新しい施策や利用者利便向上につながる投資等に積極的に取り組み、観光先進国・地方創生へと貢献する」ことを条件として、軽減措置が延長されてきているところです。

そして来年度(2021年度)の税制改正では、新型コロナウイルスで苦境に陥っている航空会社への救済対策として、さらに、9000円へと半減することとなりました。
 新型コロナウイルス対策のため人の移動は自粛が求められており、移動を支える交通機関および交通インフラは大きな影響を受けています。
貨物はある程度需要が戻っているものの、日本の大手航空会社であるJALおよびANAは、人流、特に国際線ビジネス客が収益源であり、その往来が極端に制限されている現在において、収益が大幅に悪化した状態が続いています。

 今回の新型コロナウイルスは突発的なものであり、通常のリスク管理において、このリスクへの備えが十分できていたわけではありません。これは、あらゆる業種に関しても同じですが、「特に大きな影響を受けている航空業界に対しては、国からのサポートが必要である」という認識は、世間的にも受け入れられると思われます。

 リスクやショックが生じ、国を代表する大手航空会社の経営が危機に陥ったときには、その社会的影響の大きさもあり、常に国は対応が求められます。しかしながら、その打撃の程度は、航空会社によって異なることも事実です。

 その程度の違いは、そのショックが生じる以前の航空会社の財務状態・リスク許容度などによって生じます。2008年のリーマンショック時により大きな影響を受けたのは、JALでした。JALは、結局、債務を調整した上、国からの公的資金を受けての再生の道を選ぶことになりました。その当時、JALは、それまでの拡大戦略の結果、ショックに対するリスク許容度が小さかったために、経営が大幅に悪化したといえます。

では今回の新型コロナウイルスの発生時をみてみると、JALよりも大きな影響を受けているのはANAです。


「JALが再生の道を選び身軽になったことにより、競争条件が合わない」との国の判断から、ANAには羽田の発着枠(国際線)が多く配分され、路線拡大の余地が与えられました。これを機にANAはリスクを取る形での成長戦略にかじを切り始めたところだったといえます。

 しかしながら、その一方で、超大型機(A380)の導入など、拡大戦略が影響を及ぼしていることも事実です。

 国は、その時の判断だけではなく、過去、現在、未来を見据えた長期的な視野で、航空行政を遂行する立場にあります。今回のような苦境時には、徹底的に支援し、補助(または減税、減免)によって、公共性の高い航空路線をしっかりと維持する一方、安定時には、航空会社に十分な税負担をしてもらい、長期的に見て持続可能な形で、空港整備勘定を通じて、航空行政を行っていくことが求められます。

 税減免は確実にサポートの一つとなりえるが、影響はそれだけにとどまりません。次回の空港経営に関わる議論でも述べるように、航空機燃料税は、空港整備に使われており、税の減免は、その財源に穴をあけます。

したがって、中長期的な視点で見れば、今回特別に措置された減免・減税による減収が、将来の国民の財政負担増につながらないように、コロナ収束後にしっかりとその減収分を取り戻すことを念頭にした制度設計が、財政規律の意味でも、今まさに求められているといえます。

コロナ前までは、好景気により、大手航空会社であるJALおよびANAは、最高益を出し続けていました。この状況は、今回のような危機時にしっかりと国が支援するためにも、税収を納めてもらうチャンスでした。

 しかしながら、先述の通り、訪日外国人旅行者の地方誘客を拡大するという名目でありながら、ターゲットを絞らない包括的な形で航空機燃料税の軽減措置は3回延長され、税の減免は続いてきました。今の状況を踏まえれば、今回さらなる軽減(9000円への軽減)は、妥当な措置だといって良いが、これまでの減免は、その必要性について事後的な検証が必要でしょう。

 経営支援・雇用支援が、砂漠に水をまくような形にならないために、コロナへの耐性、コロナからの早期回復、将来の収益達成、納税による国民への還元までを見通した形で、実行可能であり、達成効果の高い(すなわち、効率的効果的な)制度の設計が求められます。

 なお、雇用調整助成金の受給者にも、単に休業するのではなく、社会的価値がある仕事(ボランティア・企業出向など)をしてもらうことは、コロナ期を支えコロナ後の地方創生への種まきとして、評価できます。

 来年度予算案においては、空港整備勘定における減収に対して、真水を入れるのではなく、財政投融資という形で対応される見込みです。

 将来の返済、および今後の安定的な空港整備勘定の運営(老朽化対策を含めた空港運営および空港整備)に対し、財務省、国土交通省および航空会社が、責任感をもって対応すると確約することが、今回の減免による支援を有効なものにするでしょう。

(つづく)


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